エピソード221(刺青を消した元極道ボクサー)
エピソード220の彼と初めて会ったのは俺が中学校3年生だった時だった。
年下の彼に喧嘩を売りに行った俺の同級生達はビール瓶で殴りかかるなど卑怯な手で攻撃したらしいがあっさりかわされ逆にビール瓶で殴られたとか・・・(笑)そんな噂を聞いていた俺は、こりゃあ後輩のくせに生意気なっ!ちょっと面を見ておくかと思い彼のいそうな所に後輩を連れて散歩に出かけた。
しばらく歩いていると反対側からBE−BOPの山田敏光じゃないか?と思うほどの漫画の世界から飛び出てきたかのような柄の悪い不良が一人で歩いてきたのだった。噂で聞いてる人相、背格好、髪型、全て一致!間違いない!ちなみに彼はその当時すでに都内2位のボクサーだったという噂で・・・こりゃまずい!関わるのやめとこっと彼の横を素通りした(笑)
それから数ヵ月後、近所の後輩が仲良くなった友達がいるので俺に是非紹介しておきたいと言い、その友達とやらの自宅に行く事になった。
名前もろくに聞かずについて行った俺は会ってビックリ(笑)そう、数ヶ月前に横を素通りした彼だったのだ。あきらかに喧嘩でもすりゃ俺が負けるだろうに彼は礼儀正しく自己紹介をしてくれたのだが・・・。
その時は、お互い10代。もちろん学年の違う彼とは以後あまり一緒に遊んだりする事はなかったので、その後どうしてるかなど知る由も無く数年後にたまたま入った組にはすでに彼はいて再会したのだった(笑)
エピソード222(方言)
刑務所というのは希望した所や地元の刑務所に務められるというわけでは無く、一応希望する場所は聞かれるが実際はとんでもないところに飛ばされてしまったりする。
俺はもともと東京生まれの東京育ちなので標準語を話すのだが、青森刑務所に服役した時は本当に困った。津軽弁と青森弁の人がお互い話をしても通じないとまで言われてるのに東京の俺が分かるわけも無く、それでも相手は早口で話しかけてきたりして困った。
よく話しかけてきて下さる地元では有名な右翼の方がおられたのだが、ニコニコして話しかけてきて下さるにもかかわらず俺にはサッパリ何を言っておられるのかすらわからず、「なんて言ってるんですか?」と聞き直すのも気が引けて全然意味が分からないのにこちらもニコニコして適当に相槌をうっていた(笑)。
さすがに刑務官と受刑者が言葉が通じないんじゃ困るので方言帳というのが手渡され、その方言帳に翻訳してあったりした。
舎房に戻れば共に飯を食い寝る仲間がいるが群馬県、栃木県、鹿児島県、青森県と皆しゃべる言葉は違うのだ(笑)
全然違うが多国籍軍てのはこんな感じだろうか?と思ったりもした(笑)
エピソード223(イタ飯)
当HPのBBSに俺の兄弟分から書き込みがあったのを見て思い出したのだが、本当に良く週末になると兄弟といつも決まったクラブに飲みに行った。
ある日の事、俺が「兄弟!たまには飲みに行く前にイタ飯でもどうだ?」と言うと、兄弟はイタ飯?ずいぶん洒落たもの食べるじゃねえかと思った感じで俺についてきた。
そして俺が車を停めてまっすぐ向かった先にはコンビニエンスストアが1軒。スパゲティナポリタンが挟んであるパンを1個買ってコンビニを出た。
もう皆様はお気づきでしょう(笑)コンビニを出た俺は兄弟に一言・・・「これイタ飯。スパゲティってイタリアだろ?飲む前に少し腹になんか入れとかねぇとなっ!。」
兄弟の目が点になったのは言うまでも無い(笑)
その後、店に着き女の子達に今俺達イタ飯食ってきたんだと自慢していた兄弟。事のいきさつを女の子達に説明したら馬鹿うけだったのだが・・・極道が飲む前にスパゲティパンじゃ情けないのでそれ以来はそんな事してません(笑)
エピソード224(忘年会)
極道の世界にも忘年会はある。洒落たクラブを貸切り演歌歌手なんかを招いて他団体の方なんかも招待し、最後の最後まで失礼があってはいけないと神経ピリピリさせて1年が無事に終わる。
これは組織としての忘年会なのだが、これとは別に自分の兄貴分なんかとの忘年会もあり、ガンガン酒を飲まされ・・・それでも酒は飲んでも飲まれるな、フッと気が緩めば酔っ払って羽目を外しそうになるのを堪え酒を殺して飲み続け、最後には兄貴分を車を運転して無事に御自宅まで送り届けて任務完了なのだ。
車で無事送り届けた後、あ〜これで俺の1年間の極道生活が無事終わった。とホッとして我が家に帰る途中に酒が一気に回り、我が家への道程の半分も行かない所でダウンして車の中で眠りこけて新年を迎えた事もあった(笑)。
なんにしても間違えがあったらゴメンナサイじゃ済まされない極道の世界、1年間最後の最後まで神経ピリピリさせてならなければならないのである。
エピソード225(懲役の垢)
出所後、まず大抵の者は懲役の垢(あか)を流すといって風呂に入ってゆっくりするでしょう。
この垢を流すというのが本当に垢が大量に出るから笑える。なんせ刑務所の風呂の時間といったらもたもたしていると懲役の慣れない者だと頭だけ洗ってハイ終了!なんて光景を何度となく俺自身目撃し笑ってしまった事があるくらい短いのだ。
そして短い時間だけならまだしも、身体を洗うタオルは垢すりのような物ではなく普通の手を拭くタオルだからゴシゴシこすったところで殆ど効果無し。
石鹸を泡立てる暇など絶対に無いので、各自舎房にいる間に普段は手拭きに使ってる柔らかいタオルに必死に石鹸を塗りこんでおいたりと大変なのである。
まぁこんなんだから出所後の最初の風呂はしっかり身体を洗って懲役の垢を入念に洗い流したくなる気分に当然なるんです(笑)