エピソード236(点数評価)
刑務所の中では雑居房(6〜7人部屋)独居房(1人部屋)共に布団のたたみ方、タオルのかけ方、バケツにかける雑巾の向きや位置、本棚の整理整頓など全てが看守の見回りによって点数で評価される。
そしてある得点をクリアできた部屋のみが決められた時間内なら自分達の好きなチャンネルのテレビが見られるなどといった特典がある。
この得点制だが、雑居房だと1人がミスすれば当然連帯責任となるわけで皆神経をピリピリさせてそれが元で喧嘩になったりするケースも珍しくは無かった。まぁ俺もそんな厳しいルールのおかげで刑務所に服役する前よりは綺麗好き?になったのかもしれない(笑)

エピソード237(偽者?)
刑務所も娑婆も良くいるのが偽者ヤクザ。
自分の組の縄内でやってる飲み屋で暴れてる他所のヤクザ者がいるから助けて欲しいと店から電話が入り駆けつけてみると「俺はK県の○○会のもんだっ!」と酔っ払った相手は吼えるのだが・・・ボコボコにして後でその組に電話で確認を取ってみれば「うちにはそのような名前の組員はおりません。」なんてオチがあったりする(笑)
刑務所の場合、刺青さえ入れてりゃとっくに足洗って堅気になってる者まで俺は○○組の△さんとこの若いもんだとバレないと思って豪語するから困ったもんだ。誰が本物で誰が偽者なのか見分ける事が難しいのだが・・・娑婆に出てから所属する組に連絡を取って初めて本物かどうかがわかる(笑)
あの人はデカイ事ばかり言ってて本当は偽者じゃねえかなんて陰口を叩かれている人も中にはいたが、そーゆー人に限って本物だったりもするから笑える。
まぁ俺なんて所属していた組の存在まで疑われたり・・・で、結局それは後日、実話時代BULLという雑誌で組が紹介されていたので「ホレッ!見てみろっ!」と得意げに雑誌を皆に見せた事もあった(笑)。
あなたの周りにいる自称ヤクザもひょっとしたら偽者かも!?な〜んて・・・(笑)
エピソード238(運動の時間)
初めて警察署の留置場に入った時、戸惑う事は多かった。前にもエピソードで書いた接見禁止もそうだったが起床時間も刑務所なんかよりも早く、布団をたたみ檻の外にある押入れのようなところに自分で運んで行き、顔を洗い飯を食う前に歯磨きまで済ませる。飯を食ったら「運動の時間」というのがある。
「おい、哀川っ!運動の時間だっ!運動場に行け!」
マジかよっ!朝から運動?ラジオ体操でもすんのかよ・・・なんて思いながら数メートル歩いて着いた所は・・・とてもじゃないが運動場と呼ぶにはあまりにも狭い畳8畳あるかないかのスペースしかない床はコンクリートで金網の狭い隙間からしか表が見えないような所だった。
そして、運動でもすんのかと思いきや真ん中には缶(灰皿代わり)が置いてあり薬箱のような物に収容者のタバコが2本ずつ入っており(その日に吸えるタバコの本数で各警察署によって異なる)、爪切りも置いてある。タバコ吸って爪切るのが運動の時間だった(笑)。取調べが無い日は1日タバコ2本のみだから吸えば吸ったで頭がクラクラし檻の中に戻るとタバコを吸った余韻を楽しみながら皆寝っ転がって、いつの間にか昼頃まで寝入ってしまうという素晴らしい運動の時間だった(笑)
この運動の時間というのは基本的にどこの警察署でも同じらしい。

エピソード239(法務局)
前にも書いたが闇金融を始める際に見習いとして踊る金融屋(某有名ダンサー)のもとで様々な書類の作成のしかたを含め、一から十まで色々と教わった。
その中で一番難しいのが根抵当権設定や短期賃借権の設定などの書類作成と、その出来上がった書類を法務局に提出して役人の許可を得る事だった。
初めて踊る師匠と法務局に行った時、彼から法務局という所は役人が凄く意地が悪くて態度が横柄だから何を言われても怒ったりしたら書類を受理して貰えないから気をつけるようにと教わった。実際に何度か彼と法務局に足を運んだがいつも胸クソ悪い思いをした。
ある日、そろそろ哀川君も慣れてきたんだから間違えても良いから自分で書類を作成して法務局に提出してきてくれと言われた。頭の悪い俺に書類など作れる筈もなく・・・まぁ役人に怒られながら嫌な思いをしながら早く仕事を覚えろって感じで言われたので仕方無く、いい加減な書類を持って俺は法務局に一人で行った。
書類が受理されるのに通常3〜7日間はかかる物だったのだが何故か数時間でできますと役人は言うのだった。良く理由がわからなかった俺は言われるがままに待ち、受理された証明書のような書類を貰い金融事務所に戻った。
すると事務所の皆は唖然として、なんで?その日のうちに?と俺に聞いてきたのだった。不思議がるのも無理はない。デタラメな俺の作った書類を見て笑いながら俺を送り出し、しかも絶対すぐには受理されないのだから・・・。
では何故?そう!それは俺が皆と違ってヤクザだったからだ(笑)クリスチャンディオールの濃紺にブルーのストライプが入ったスーツを着て真っ黒な金縁のサングラスをかけた男が一言・・・俺、書類書き方わかんねーんだけどヨロシクなっ!言われた役人も俺と後日また顔を合わせたくなかったのだろう(笑)
おかげでどこの法務局でも書類を丁寧に書き直してくれたので俺はずぅっと金融を辞めるまで仕事を覚えられなかった(笑)

エピソード240(明加)
闇金融とはいえ正規の金融免許を取得して、もちろん広告屋に作らせたダイレクトメールで客を獲得していたのだが・・・
その会社名が明加(アスカ)だった。無理矢理な漢字の読ませ方だが上の人間が決めた事だから仕方がない。電話で応対する時は「アスカでございます」だった。その事務所には行きつけの飲み屋のネエちゃんも電話をかけてくるのだからたまらない・・・とは言っても俺が自分で連絡先を事務所にしてたから仕方がないのだが(笑)。おかげで俺の名前は哀川ではなくアスカちゃんと呼ばれるようになりボトルキープしてもボトルにアスカと書かれる始末。金融の客でもあったその店のオーナーに用事があって電話する時も「アスカですが・・・」あーっ!今だから言うが年下の女の子達にアスカちゃん呼ばわりされるのは非常に恥ずかしかった(笑)だって顔がアスカちゃんって感じじゃないんすから俺・・・ギャハハッ!