エピソード26(カチコミ)
某組織と揉めた時の事、身内がご時世的に抗争しても金にはならないから喧嘩したがらない雰囲気だったのだが、単細胞な俺は、なめられちゃいけねぇ一心で道具も持たずに相手のアジトへと向かった。あるマンションの1室に案内されソファに腰掛けると相手の組織のナンバー2がそこの若い衆に向かって「おいっ!この事は、まだ会長の耳には入れてねぇだろうなぁ…会長は短気で気違いのような人だから、こんな事知ったらこのお客人は生きてここから帰れねえぜ。」などとハッタリをかましてきた(本当かもしれないが笑)。俺はどうせ殺られるなら絶対1人は道連れにしてやると腹をくくった。しばらく話し合いをしたが、あまり進展もせず相手も道具も持ってきていない俺にビビるはずも無かった。しばらくすると相手の携帯電話が鳴り、何やら電話の相手と話しているうちに顔色が変わっていき電話が終わると、急に「これからは、お互い近所の組なんだから仲良くしていきましょうよ。」なんて気持ちの悪い事を言い出し、「とりあえずここから出てお宅の組の若頭の○○さんが指定してきた場所で改めてお話ししましょう。」と言われ俺は相手の車に乗り、兄貴分達の指定場所へと向かった。話は丸く収まり事は解決した。後日知った事なのだが、俺が無鉄砲にも相手の事務所に一人でカチコミかけたと知った行動隊長が相手の本部事務所の周りに道具をちらつかせた若衆を何十人も配備してくれたから俺は助かったのだということを…それがなかったら今頃あの世でした笑。
エピソード27(スナック)
ある日、小川の兄弟とスナックで飲んでいた時、俺がトイレに席を立ってしばらくして戻ってくると、後ろ隣りの他の客と兄弟がもめていた。俺が「どうしたんだ?」と聞くと、どうやら自分達の席についた女の子に、その客がちょっかいをかけてきたらしかった。気の短い兄弟はその場で喧嘩しようとしたが、俺がそれではつまらないと思い、「兄弟!奴等が店を出てからだぞっ。お楽しみは後にとっとけや」と説得し兄弟はしぶしぶ承知した。夜中の3時を回り閉店した後にパーティーは始まった。身長190センチはある相手に、まず兄弟が攻撃を仕掛け、俺はそいつの連れを言いくるめて手を出させないようにした。あまりにも相手が調子に乗った物言いをしてきたので、俺がたまりかねて「お前どこのもんじゃっ!」と怒鳴ると、なんと相手は俺たちよりどう見ても年上なのに、「俺は○○中学校だっ!お前どこ中だ?」と聞いてきたのだった笑。呆れ果てた俺は「いい年こいて中学校の名前出すアホと喧嘩してもしょうがねえなぁ」と言って笑うと、相手は、なおさら怒って今度は「お前何処の組のもんじゃっ!」と言ってきたので「中学校の名前で相手を脅そうとするようなアホにいちいち組の名前出して喧嘩する奴は、おらんわっ!ボケ!」と言ってやった。途端に相手はかなりひるんでしまって何も言い返せなくなった笑。そう、普段は優しそうな目で話をする俺は、あんまりにも腹が立つと極道の目に変わってしまうのだった笑。結局その喧嘩、そこのスナックのオーナーが様子をずっと見ていて「そうそう、こちらのお兄さんの言ってる事はもっともだ。あんたみたいなもんにいちいち名乗る人はおらんよ笑!あんたの負けや。さっさと帰って寝なさい」の一言で終わった。ギャラリーだった女の子達から「哀川さんカッコ良かったわ〜」と言われ毎日ファンレターが送られてきて当時は困ったなんて書き込むと小川の兄弟に、「そのファンレター実は俺が書いてたんだ」って書き込みされそうだからやめておこう笑!
エピソード28(イクラ御膳)
ある日の事、本家の姐さんに昼御飯を誘われて和食レストランに行った。何を食べようかメニューを見ていると、姐さんが「哀川君、ここのイクラ御膳美味しいわよ。」とおっしゃられ、仕方なくイクラ御膳を注文した。なぜ?仕方なくなのか…そう、恥ずかしい話、俺は箸を上手に使えないのだ笑!イクラは大好きだったから良かったんだけど…
そうこうしているうちに難題のイクラ御膳がやってきた。姐さんはビジネスの話や車の話、組の若い衆達の話などをしながら「美味しいわぁこれっ。あれ?哀川君お腹空いてないの?早く食べた方がいいわよ。」とおっしゃる。俺は一生懸命、箸でイクラを取ろうとするがみんな落ちていって食べられないのだ笑。まさか、どんぶりを口まで持っていってかきこむわけにもいかず、ひたすら姐さんの視線が俺から外れるのを待った笑。結局視線が外れた合計10秒くらいの間にイクラ御膳はダッシュで俺の腹の中に押し込まれた。おいしいイクラ御膳の味?たった10秒じゃわかりませんでした笑!

エピソード29(ゴルフ)
ゴルフといっても車のフォルクスワーゲンゴルフの事である。今まで数多くの車に乗り換えてきたがどちらかというとやはり外国の車は故障が多い。
ある日の夜、ゴルフに乗って本部事務所に用事があって寄ってみたら親分と鉢合わせ、親分が「おい哀川、後で風呂屋に行くからお前も付き合えや。」…風呂かぁ…俺さっき入ってきたばかりだし用事があるんだけどなぁ…バックレる事を決意した俺は風呂屋とは逆方向に車を走らせた。が、交差点を曲がって20メートルも行かないうちにエンジンストップ。どうにもならないポンコツゴルフを置き去りにして別の車を友人に借りて用事を済ませた。そして翌日、バツの悪い事にまた親分にバッタリ出くわした。親分は、俺の顔を見るなり笑いながら「おい哀川、お前の車が昨日風呂屋と逆方向向いて道の真ん中に捨ててあるみたいに停まってたけど車大丈夫か?何で逆方向に向かって…。」俺が返答するに言葉に詰まっていると親分は「週末だもんなぁ女と行きたい所もあるわなぁ…まぁいい今度はちゃんと付き合えよ。」とおっしゃった。さすがは親分、バックレた事を見抜いていたらしい笑。あ〜指飛ばなくて良かったホッ

エピソード30(眼鏡不使用)
哀川力の体験記の方にも書いてあるのだが、俺は視力が0.01しかないので免許は当然眼鏡使用です。
ある日、本部事務所で暇をつぶして事務局長の坂本さんと話をしていると、そこへ親分がやって来た。親分は事務所に入って来られるなり、「こらぁっ!坂本!お前昨日頼んであった書類自宅に届けろって言ったのに今、何時だと思ってやがんだバカヤローッ!10分以内に持ってこいコノヤローッ!。」とおっしゃって事務所を出て行かれてしまった。坂本さんはポツリ一言、「俺ん家、上野だぞ…しかも今日タクシーで来てるのにどうやって家に書類取りに行って10分で戻れっていうんだ…。」そう、本部事務所から物凄く渋滞する国道を通って東京都心方面に向かって戻って来るには普通にスピードを出しても10分では戻って来れないのだった。そこで不可能を可能にする男、哀川力の出番になったわけである(笑)当時の俺は、映画、漫画でお馴染みの(湾岸ミッドナイト)の映画実写版に出てくる悪魔のZを手がけていたスピードショップシノハラさんの所にも訪問して調べてもらい原因不明のそれこそ本物の悪魔のZに乗っていて、深夜の湾岸高速や幕張ゼロヨン、筑波山パープルラインなどにも出没していた。マシンは400ccのバイクよりスタートも加速も良く、腕さえあれば15分ならなんとか往復できるかと思われた。がしかし、肝心の眼鏡を俺は家に忘れてきてしまっていたのだ。車に乗り込むなり俺は「局長、シートベルトをしめてしっかり踏ん張っててください。」というなりアクセル全開フロントタイヤは宙を浮き走りだした。国道を勘で車と車の間をすり抜けながらとにかく走った。結局、書類は無事親分の手に渡り事なきを得た。どんなジェットコースターよりもスリルあふれる15分だった(笑)。事務局長は事務所に戻るなり、「いやぁ〜感心したよ、哀川君は運転がすごく上手なんだねぇ、おかげで助かったよ。」とニコニコしていたが、まさか視力0.01で眼鏡しないで運転していましたとはさすがに本人には言えませんでした笑!