エピソード266(振り込め詐欺)

エピソード267(舎弟の失敗)
よくテレビなんかで顔にモザイクがかかって音声も変えて出演しているのがあるが、その音声を変える音声変換機というのを俺は持っていた。
タバコ1箱くらいの大きさで9ボルト電池で作動し受話器に取り付けてしゃべると相手には声が高くなったり低くなったり自由自在に変な声に聞こえるという代物だった。
その音声変換機をある日、舎弟が「あの野郎!頭に来るから今から電話します!」と言って取り付けて電話し、「てめぇこの野郎△×◇○□・・・!」と延々と言いたい放題言って「あぁスッキリしましたよ!」と電話を切った。
俺はその間、他の事をしていたのだがふと音声変換機を見るとスイッチがOFFになっていた。
まさか!?と思い、俺は「おい!オマエ今電源切ったのか?」と舎弟に尋ねると「は?何も触ってないですよっ」とニコニコしながら答えやがったのだ・・・。
ガ〜ン!マジかよオイオイ!こいつ電源入れないまま電話しやがった!なんて思っていると、すぐに舎弟が電話した相手から電話がかかってきた。
「今よぉ、オマエんとこの舎弟に良く似た声の野郎から無茶苦茶ムカつく電話がかかってきて一方的に言うだけ言って電話切りやがったんだけど、どーゆー事だ?」
こりゃマズイ!俺は咄嗟に「アイツがオマエにそんな事を堂々と言えるわけ無いだろう!一応本人に確認はしてみるけど違うと思うぞ!お前も色んなところで恨み買いすぎなんじゃねぇのか?」と笑ってその場をごまかして事はそれ以上大きくはならなかった(笑)。
いや〜、あの時はマジで焦った(笑)てか、舎弟を怒る気すら失せて一言「二度と使うなよ」とだけ言っておいた。それ以来、間違いがあっては困るので音声変換機は押入れの奥に眠らせ知らないうちに消えて無くなっていた(笑)

エピソード268(虚しい一日)
本部当番といって週に一度だけ朝8:00〜深夜0:00まで電話番をする事があった。
朝7:50頃に本部に着き、前の日の灰皿にたまった煙草の吸殻を捨て、ゴミの日ならゴミを出しトイレ掃除なんかも自分でやり電話が置いてある机を水拭きして監視カメラのモニターのスイッチをONにする。
あとはひたすらソファに座って漫画や雑誌を読んでるかテレビをボケ〜ッと見てるだけ、そして昼になったら出前を頼むか近所のコンビニで弁当買って1人寂しく食べるだけ。
そして夕方が過ぎ、夜になったらまた出前を頼むかコンビニへ・・・。
一日中、本部に誰も顔を出さない日や電話が1度も
鳴らない日が良くあった(笑)。
まぁ組織が1本独鈷だったからだろうが、土曜日なんかの週末の当番に臨時で入ったりすると外が暗くなるにつれて、みんな酒でも飲んで騒いでるんだろうなぁ・・・とか思ったり、モニターに映し出されるカップルを見ながら「頭にくるなぁ!」とかブツブツ言って時計を見ながら「あぁあと何時間もある・・・」「おっ!あと5分で終わりだ!」な〜んて思いながら時計の針が0:00になるのを待っていた。
おかげで俺は約束の時間がくる事に対して辛抱強くなった。ってそんなわけはない!(笑)

エピソード269(絶縁)
俺はもちろん一家には絶縁されているのだが、極道を辞める時だけ喜んで協力してくれた凄く仲の悪い兄ぃがいた。
物凄い覚醒剤中毒者で物凄いイケイケやくざを絵に描いたような人物だったが、俺とは凄くウマが合わなかった。どうやら彼が懲役に行っている間に俺という人物が現れ、上の者に可愛がられ他の者が苦しい生活をしている時に俺だけが羽振りが良かったのが気に入らなかったらしい。
そんな兄ぃが俺が極道を辞めると口走った時に「オマエは極道向いてねぇから今すぐ辞めた方が正解だ!」とか言って、嬉しそうに俺を一家から追放する事に前向きに協力してくれた(笑)
そして俺に最後の一言は・・・「もしオマエを他所の組織で見かけたら必ず殺りに行くからなっ!」だった。
あの日から年月が経ち、実話時代BULLで彼の特集なんかを2度ほど見かけ記事を読み、内心ムカッとする内容もあったが極道とは親分の為に身体を張って現役であり続けている者の勝ちだなとも思った。
そしてつい先日、その彼が一家を絶縁になったという情報を得た。正直、俺は心がそんなに広いわけではないからザマアミロ!なんて事も一瞬脳裏をよぎったが(笑)、いつも口癖のように「俺は親分の為ならいつでも懲役行ってやる」と言っていた人一倍親分思いの彼が絶縁になってしまったという事にはショックだった。

エピソード270(甘い罠)
組織で出世するには一般社会も同じで、どれだけ組織に貢献したかで評価され上にいくわけだが・・・貢献するというのは利益を上げる事、極道の社会ならそれはいわゆる上納金という事になる。
販売価格末端価格0.5グラム=1万円とも言われている覚醒剤を50グラム=たったの7万円で仕入れられたらどれだけ儲かるだろう?(笑)
50グラム=7万円は俺が実際に取引した中で訳ありのブツだったのでもっとも安い金額だったわけだが、覚醒剤にもある程度の相場仕入れ値価格というのがある。当然キロ単位で仕入れれば割安という事になる。
ある日なんらかのきっかけで知り合った男に、例えば「以前から一度アナタにお会いしたいと思ってたんですよ!立派な極道だと聞いておりますよ」などとさんざんおだてられて良い気分になったところで「実はこの辺の相場より確実に低価格で上物のシャブをアナタと私の仲という事で嫌なら別に構いませんがもし良ければ取引させてもらえないでしょうか?」な〜んて言われたら覚醒剤が組で御法度だという事を十分にわかっていても気持ちが揺らいでしまう者もいるでしょう。
取引が確実なものなら尚更相手を信用し取引回数やブツの量も増えるでしょう。そしてそのシャブで得た金は莫大な金額となり、そのうちの一部を上納金として納めていけば周りの者達にもイイ顔ができ、出世も早くなるでしょう。
でも、もしそれが罠だったらどうでしょう?(笑)
潰したい相手に美味しいエサを巻き、食いついてきたところで警察にチンコロ(密告)する。当然、覚醒剤取締法は覚醒剤の所持量に応じて罪も重くなり逮捕されれば長〜い懲役と破門もしくは絶縁が待っている。
極道の世界も目先の金と地位だけに執着しすぎてしまうととんだ落とし穴が待っている。暴力だけでは生き残れはしないのである。

この手の詐欺は最近話題にはなっているが結構前からあって出会い系サイトやエロサイトなんかで無料分しか利用していないのに「オマエが使ったんだから払え!」なんて強引に催促され払わなければ通知にて「貴男が使ったエロサイト利用料金を直ちに下記の振込先に入金して下さい。」などといった他人に見られたら恥ずかしい内容の文面が記されたハガキが届いたり挙げ句の果てには家や職場まで調べて取り立てるなんてのまである。
しかし、それを逆手にとってそんな業者のアジトを調べあげ渋谷区某マンションに兄ぃ達と行きマンションの住人全てに聞こえるような大きな声で
「オイ!出会い系だのエロサイトだのテレフォンSEXだの恥ずかしい事して金儲けてる503号室の○○企画!出てこい!」
てな感じで追込みをかけ、絶対安全な筈のオートロックを無事通過し(笑)、出てくるまで水道やガス栓を閉めて騒ぎ立て観念した詐欺集団から金を取り上げたりと、まぁ立派な恐喝だが弱い一般市民から金を巻き上げるよりはマシなシノギもあった(笑)
身に覚えがあっても無くても法外な利用料金の請求にはこんな手口で仕返しをする事もできますが一般の方は真似しないで下さい(笑)