マツバウンラン
Linaria canadensis Dum.
北アメリカ原産の帰化植物らしい。20年近く前には、この植物を茨城県では見たことがなかった。その後、転勤先の岡山で初めて、鉄道線路沿いに群れ咲いている花を見て、初めてマツバウンランを知った。今から7年前、再び茨城県に戻ったとき、わが家の庭にこれが咲いているので驚いた。私より一足先に、こちらに到着していたのである。その後、マツバウンランは守谷でも増えるばかりで、上の写真のようなところもある。一本一本はさほどではないが、群れて咲くと大変美しい。
ギンラン
Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume
4月26日。疎林の中でそろそろキンラン、ギンランが咲いているかと思い、見に行った。キンランの花は見当たらず、ギンランは丁度咲き始めたところであった。ギンランという名は少し大げさで、むしろ白い清楚な花である。とりわけ目立つ花ではないのだが、その時期に、その場所に行けば見ることができるのは嬉しいことであり、場所を荒らされることなく、ずっと現状のままであることを願っている。
コイヌガラシ
Rorippa cantoniensis (Lour.) Ohwi
数年前、田の畦に生えているのを見つけた。あまり目にとまらない地味な植物であったが、それまで見たことのなかったので、図鑑で調べてみたところ、コイヌガラシであった。この写真ではよく分からないが、黄色い花のアブラナ科植物で、葉は羽状に深裂し、基部は茎を抱き、果実は砲弾のような形で、葉腋から突き出している。かなりユニークな形態で、もしも、もっと植物体が大きかったら、目を引く植物になったかもしれない。その後、田の畦には、まったく見かけなくなったが、久しぶりに、河原で見つけることができた(写真)。準絶滅危惧種である。
キクムグラ
Galium Kikumugura Ohwi
「道草の時間」をもたないと、なかなか目に入らないない細々した長い茎をもつ植物。ヤエムグラ属の植物であるが、あのものすごく繁茂しているヤエムグラと比べると、何とも弱々しく見える。しかし、人と同じく、植物も外観で判断できない。案外しぶとく生きているのかもしれない。
アメリカフウロ
Geranium carolinianum L.
北米原産のフウロソウ科の植物で、昭和初期に渡来したと記述されているが、最近急速に路傍に目立つようになってきたように思える。一度に咲く花は少なく、目立たないが、葉は深く裂けて細い裂片になっていて、すぐこれと分かる。これからどれだけ増えてゆくであろうか。楽しみではないが。
ウワミズザクラ
Prunus grayana Maxim.
ウワミズザクラの木は、花の咲いていない時期には、しろうとの私にはそれと気付かない。しかし四月下旬のこの時期には、ウワミズザクラに出会ってはっとする。掌にあまるほどの大きさの総状花序が沢山、勝手な方向を向いて風に揺られている。ウワミズザクラはかなり大木であるから、枝一杯花をつけた木はいきいきと輝いてみえる。見ていて気持ちがいい。
サトザクラ
Prunus lannesiana Wils.
ヤエザクラの季節もそろそろ終わろうとしている。今期はあまり八重桜を見なかったと思い、近くの公園を散歩した。よい天気だが、少しの風にも、質感のある花がゆっさゆっさと揺れている。せわしなく人をさそう一重のサクラとは、こんなところが違う。おだやかに晴れた昼下がりに似つかわしい。
イヌザクラ
Prunus lannesiana Wils.
ウワミズザクラに少し遅れてイヌザクラも咲き始めた。イヌザクラの花はウワミズザクラに似るが、花序がもっと小さいためか目立たない。散歩道の疎林にもこの木をみかけるが、公園にもある。極めて地味な花だし、葉や小枝には強い臭気があり、公園にわざわざ植えるような植物ではないように思えるが、もとは自然に生えていたものが、公園をつくる際、残されたのかもしれない。
オニノゲシ
Sonchus asper L.
オニノゲシは同属のノゲシよりひとまわり大きく、オニのごとく逞しく、大きく成長する。葉のふちにはするどいとげがあって、うっかり触れない。ノゲシの方は、古くから中国や日本にあって、中国では食用にされたらしい。日本でもそうかもしれない。しかし、オニのほうは、とげが口にささりそうで、食べられそうもない。オニは明治時代に日本に入ってきたようだ。見ていて美しいとか楽しいとかいうような植物ではないが、葉の武装ぶりがおもしろくて、スケッチしてみた。
ヒレアザミ
Carduus crispus L.
これもまたとげだらけの植物で、茎にまでとげがある。アザミにとげがあるのは常識であるが、これはまたひどすぎる。もっともヒレアザミはアザミ属でなく、ヒレアザミ属。アザミ属以上に武装せねばならない理由があるのかもしれない。ユーラシア大陸に広く分布し、日本には古い時代からの帰化植物であるようだ。
ハルガヤ
Carduus crispus L.
外来の牧草が逃げ出して野草になっている植物がかなり多いが、ハルガヤもその一つである。比較的小さなイネ科雑草で、けっこう繁茂しているわりには、それほど目立たない。英語名はsweet vernalgrass あるいは vernalgrass。vernalは「春の」の意味だから、ハルガヤはその直訳であろう。sweetは含まれているクマリンの芳香によるのだろうか。
カズノコグサ
Beckmannia syzigachne Fern.
今の時期、湿地には全体的に緑色の淡いカズノコグサが目につく。花序の枝に扁平の小穂が2列になって密に並んでおり、他のイネ科植物には見られないかたちである。小穂の奇妙な形は花を囲んでいる左右の苞潁の袋のようにふくらんだ形によっている。カズノコグサという名は、カズノコに似ているためというのだが、それはともかく、憶えやすい名である。
カモガヤ
Dactylis glomerata L.
円錐花序の小枝には、細長い小穂が密集してつき、その姿は一見してカモガヤと分かる。日本には牧草として栽培されたものが逃げ出して、道端の雑草になった。牧草名は著名なオーチャードグラス。なぜか分からないが、懐かしさを感じる名である。もっともよく利用される優れた牧草であるが、開花時に飛散する花粉は極めて強力なアレルゲンで、5月頃から盛夏までクシャミの止まらない人は、この花粉にアレルギーをもっている可能性が高い。
ミミナグサ
Cerastium holosteoides Fries var. angustifolium Mizushima
同属の帰化植物オランダミミナグサはふと道端や庭の片隅をみれば、かならず目に入るような、猛烈な繁殖力をもつ雑草である。この植物が、在来のミミナグサを駆逐してしまったらしい。ミミナグサの方は、近頃は簡単には見つからない。それでも、私の散歩道にはミミナグサががんばっている場所がある。ここもまた、最近はオランダミミナグサの侵入が始まっているようだ。ミミナグサの悲鳴が聞こえる。
クサノオウ
Chelidonium majus L. subsp. asiaticum Hara
クサノオウは、この季節に濃厚な黄色い花を沢山つけているので、よく目立つ。ケリドニンなどのアルカロイドを多数含む毒草である。またヨーロッパでもアジアでも薬草として使われた。クサノオウというのは、薬草の王様という意味なのであろうか。王様というほどの草ではなさそうだが、憶えやすい名である。クサノオウやオトギリソウのように、名前の方がおもしろくて知るようになる植物もある。