雑草の世界へ

ヒメジョオン

ヒメジョオン (Erigeron annuus (L.) Pers.)

2007年11月16日。初冬の野に、まだ咲いている花を探索しながら歩いた。さすがのセイタカアワダチソウもそろそろ色あせかけていたが、ヒメジョオンは写真のとおり、肌寒い風の中で、いまだおとろえを見せない。夏から秋にかけて、いろいろな花の咲く季節は、ヒメジョオンはあまりにも多過ぎて、かえって目に入らないが、野の花のすくなくなったこの季節になると、案外きれいな花と気付く。ヒメジョオンは北米原産で、1765年にヨーロッパに入り、日本には明治の初年に入ったという(朝日百科「世界の植物」)。今は世界に広く帰化しているらしい。よほど環境適応性にかなった遺伝子群をもつ植物なのだろう。そんな観点から研究に取り上げて欲しい植物である。今は日本各地に分布を広げ、畑雑草として駆除の対象にもなっている。ヒメジョオンは越年草で、秋には種子が発芽し、春にはぐんぐん成長して、初夏から花を着ける。まことにたくましい雑草である。

ハキダメギク (Galinsoga ciliata (Raf.) Blake)

11月16日。ヒメジョオンと共に、この季節にも道端や畑のヘリに、まだまだで元気に花をつけているのを見た。中央および南アメリカ原産の1年草で、ヨーロッパにも帰化しているらしい。日本では、大正時代に世田谷のはきだめで見つかり、牧野博士が命名したとある(「日本の野草」学研)。冗談みたいな名前だが、いかにも雑草的なところがおもしろい。英語名は Shaggy Soldier(毛むくじゃらの兵隊?)という。確かに毛の多い葉をもつが、私には理解しにくい名前である。西洋人との感覚の違いであろうか。この植物の花期はヒメジョオンより長く、4月にはもう咲いている。1年に何世代位繰返すのだろうか。興味あるところである。

ハキダメギク
アズマネザサ

アズマネザサ (Pleioblastus chino Makino)

2008年2月29日。アズマネザサはメダケ属のササであるから雑草という言葉には当てはまらないかも知れないけれど、雑草的なたくましさをもって、林のへり、道ばた、疎林などに、びっしりと繁茂している。このあたりでは、メダケも多く、やはり密生した藪をつくるが、アズマネザサの藪の方が目立って多いようである。そのような藪の中では、他の植物はほとんど育たない。アズマネザサの繁殖を放置すれば、疎林などに生える様々な植物を激減させるのではなかろうかと懸念される。なお、アズマネザサは、本州中部以北および北海道に分布し、変種のネザサ (P. chino Makino var. viridis S. Suzuki)は本州西部以西に分布するようである。

ホトケノザ (Lamium amplexicaule L.)

2月29日。「道草の時間」にも書いたが、ホトケノザは極めて多い一年または越年草のシソ科植物で、わが庭にも沢山生えてくる。また、畑にも侵入してくるので、畑雑草として防除の対象になっている。一部は9月頃にはすでに発芽し、秋の間にも主として閉鎖花の中で種子をつくる。今は閉鎖花とともに通常の花を咲かせており、開花した花は、近づいてよく見ると、なかなかきれいである。ホトケノザの名は、花の下の1対の葉が仏の座を連想させることから付けられたらしい。アジア、ヨーロッパ、北アフリカに広く分布し、北アメリカにも帰化している。英語名はhenbit deadnettle という。

ホトケノザ
ヒメオドリコソウ

ヒメオドリコソウ (Lamium purpureum L.)

3月2日。これも再登場であるが、いかにも雑草という名にふさわしい植物なので、ここにあげる。はやくも、道ばたの日当たりのよい場所に咲いていた。同属で、よく似たホトケノザと同様、きわめ付きの普通種であるが、ホトケノザと異なり、こちらはヨーロッパ由来の帰化植物で、日本では、明治26年にはじめて東京の駒場で見つかった(村田源 朝日百科「世界の植物」)というから、その繁殖能力にはおどろく。まあ、そうした例は多いけれども。北米にも帰化しているそうだ。オドリコソウに似て小さいからヒメオドリコソウ。イヌオドリコソウでなくてよかったね。英語名は、red deadnettle。

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