雑草の世界へ

スズメノカタビラ

スズメノカタビラ (Poa annua L.)

2008年3月3日。小さな地味なイネ科植物だが、厄介な畑雑草である。畑ばかりでなく、庭先でも道ばたでも、真夏と寒の頃を除き、ほとんど1年中生えていて、種子をつくり繁殖する。極地を除き、ほとんど全世界に広がる(長田武正 日本イネ科図譜 平凡社)というから、小さな体にもかかわらず、すごい適応能力をもつ雑草である。そういう観点から研究に値する植物材料ではないかと思う。和名は穂を帷子(裏をつけない衣服、あるいは、夏に着る単衣。「広辞苑」より)になぞらえたものと思われるが、現代人には想像しにくい。英語名は、annual meadow-grass と、平凡な名である。

ナズナ(Capsella bursa-pastris Medic.)

3月5日。ナズナはアブラナ科植物で、このあたりでは、すでに2月末から花をつけていた。花期は5月まで続く。ナズナは、子供の頃からぺんぺん草の名で知っていた。ぺんぺん草とは、その果実のかたちが三味線のばちに似ているからという。春の七草の一つとしてもなじみ深い。道ばたにごく普通の雑草で、手入れを怠れば、庭にも茂る。昔は古い家の草屋根にも生えていた。「ぺんぺんぐさが生える」は、家などの荒れはてるさまをいう(広辞苑)。また、強力な畑雑草として、防除の対象になっている。ナズナは北半球の温帯に広く分布する。英語名はShepherd's Purse (羊飼いの財布)。学名のbursa-pastrisも同様の意味らしい。

ナズナ
オオイヌノフグリ

オオイヌノフグリ(Veronica persica Poir.)

3月6日。以前、「道草の時間」では、クローズアップ写真を出したが、ここでは、もっと雑草らしい写真を載せる。その中で、「憎まれている帰化植物の中で、オオイヌノフグリの悪口は聞いたことがない。その和名を気の毒がる人も多いようだ。」と書いたが、これは少し訂正しなければならない。春の主な畑雑草の一つだからである。ただし、通常の除草剤で防除することができるようだ。オオイヌノフグリは、西南アジアが原産地らしいが、今は世界中に分布を広げている。わが国には明治中頃に入ってきたらしい。ずっとゴマノハグサ科に入っていたが、「思いつくままーオオバコ雑感」の中で書いたように、オオバコ科に入れる方が正しいと思う。

コハコベ(Stellaria media (L.) Villars)

3月11日。やはりこの時期に道ばたに普通に見られる雑草である。ミドリハコベと区別がつきにくいが、雄しべの数が、2〜4本位だったので、コハコベと思われる。ミドリハコベの花の雄しべの数は、5〜10本位ある。コハコベもミドリハコベも、畑雑草で、防除の対象であり、通常両種とも単にハコベとよばれている。ハコベは春の七草に入っているが、七草がゆに入れるのはどちらとも区別されていないように思う。多分味は同じだろう。少し泥臭い匂いがする。スーパーで買う七草がゆのセットは、ハコベが多すぎて、かゆをわざわざ不味くしている気がする。スズナ、スズシロを多くした方がいい。

コハコベ
タネツケバナ

タネツケバナ(Cardamine flexuosa With.)

3月17日。今の時期、湿った場所に生える越年生の雑草である。種籾を水に浸けるころにこの花が咲くので、タネツケバナというらしい。アブラナ科で、葉は羽状の小さな小葉に分かれる。この時期には、根生葉(ロゼット)は残っていない。この点は、他の近縁種と異なるように思う。タネツケバナの近縁種には、タチタネツケバナ、ミチタネツケバナ、オオバタネツケバナなどあって、紛らわしい。ただし、タチタネツケバナ、ミチタネツケバナは、乾いた道ばた、畑などに多く、オオバタネツケバナは、水辺に多いようである。

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