雑草の世界へ

ミチタネツケバナ

ミチタネツケバナ (Cardamine hirsuta L.)

2008年3月24日。タネツケバナによく似た植物であるが、タネツケバナが湿地に生えるのに対し、ミチタネツケバナは道ばたや畑など乾いた場所に多い。本種は、ヨーロッパに原産し、今はほとんど全世界に広がっている繁殖力旺盛な雑草である。日本に入ってきたのは比較的最近のようであり、本種の帰化は工藤洋氏らにより、1992年にはじめて報告されている(植物地理・分類研究40:85−89)。「神奈川県植物誌2001」には、同誌1988年版をつくるための調査段階では、本種を認識できず、1点だけ採集されていたものをタネツケバナと認識して扱ったと記されている。今は、ごく普通に見られる植物で、その繁殖力にはあらためて驚かされる。花の時期にも、根生葉が多く、小葉に切り込みがほとんどないことなどから、タネツケバナと区別できる。

ノボロギク (Senecio vulgaris L.)

3月24日。昨年も「道草の時間」でノボロギクについていろいろ述べたが、やはり雑草中の雑草なので再登場させる。ヨーロッパに原産し、ほとんど世界中に広がっている1年または越年性の植物である。日本には明治の初期に渡来し、その後猛烈に広がり、現在は畑や道ばたに季節を通じて多く見られる植物である。花はほとんど一年中咲いている。キク科だから、花序は頭状花序であるが、舌状花はなく、すべて筒状花である。種子は冠毛が着いていて、風によって運ばれる。英語名はgroundsel。

ノボロギク
ノミノフスマ

ノミノフスマ (Stellaria alsine Grimm. var. undulata (Thunb.) Ohwi)

3月30日。越年性の雑草。水田にも畑地にも繁殖する適応性の強い植物である。花はハコベに似て、3〜6月に咲く。現在は茎の長さ約10センチ位だが、今後30センチ位にまで伸びる。S. alsine var. undulata は日本全土と朝鮮、中国に分布するが、原種のS. alsineの方は、北アフリカおよびヨーロッパに分布する。日本語のノミノフスマは、蚤の衾の意で、衾は、「布などで作り、寝るとき身体をおおう夜具」とある(広辞苑)。小さな葉を蚤の夜具に当てたらしい。英語名は、bog stitchwort、湿地のハコベの意味である。

カラスノエンドウ (Vicia angustifolia L. var. segetalis (Thuill.) Koch)

4月1日。このところ、カラスノエンドウが急に伸び出して、花をつけ始めた。ちょうど、サクラ(ソメイヨシノ)の咲く時期である。これからは、およそ2ヶ月咲き続けるであろう。カラスノエンドウは別名ヤハズエンドウ。この方が公式の和名かもしれない。学名は、シノニムとして、Vicia sativa L. subsp. nigra (L.) Ehrh. が使われることもある。Vicia sativa L. は飼料作物、コモンベッチ (common vetch) で、カラスノエンドウはその近縁に当る。アジア、アフリカ、ヨーロッパに広く野生している種である。

カラスノエンドウ
ミドリハコベ

ミドリハコベ (Stellaria neglecta Weihe

4月10日。コハコベとよく似ているが、葯の数がコハコベでは5以下なのに対し、ミドリハコベでは5〜10位あり、全体がコハコベより大きく、茎も大体緑色である。コハコベの項でも書いたが、単にハコベといえば、ミドリハコベとコハコベをいう。アジア、ヨーロッパに広く分布する。英語名は、コハコベが chickweed、ミドリハコベが greater chikweed。学名の neglectaは、目立たない、見逃しやすい、重要でない、顕著でない、という意味(植物学ラテン語辞典 至文堂)。 しかし日本では、有名な春の七草の一つだから、この学名はちょっと違和感がある。

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