雑草の世界へ

スズメノヤリ

スズメノヤリ (Luzula capitata Miq.)

2008年4月25日。野原の日当たりのよいところに生える多年草で、きわめて普通のイグサ科の小さな植物である。今は花をつけているから、見つけやすい。花といっても、小花が集まった小さなブラシみたいな頭花で、褐色だからきれいなものではない。ただ、スズメノヤリという名の通り、ちょっとユーモラスな花である。ヤリというのは、大名行列で奴さんのもつ毛槍になぞらえたものらしい。日本、朝鮮半島、中国、樺太、カムチャッカに分布している。

スズメノテッポウ (Alopecurus aequalis Sobol. var. amurensis (Komar.) Ohwi)

4月27日。春のイネ科雑草の代表格。春耕前の水田に群生するが、道ばたにも多い。穂は円筒形で花の咲いている部分は、黄色から黄褐色にみえる。これは葯の色によっている。スズメノテッポウというのは面白い名だが、ずいぶんへなちょこな鉄砲である。穂を抜いて、残った葉鞘を笛のよう吹くと、ピーと小さい音がでる。こどもの頃、よくそうしたものである。そういうわけで、スズメノテッポウも季節感のあるなじみの雑草である。変種var. amurensisは北海道、本州、四国、九州、中国に分布。A. aequalis自体は北半球に広く分布する。

スズメノテッポウ
ウシハコベ

ウシハコベ (Stellaria aquatica (L.) Scop.

4月27日。ナデシコ科の普通種。ミドリハコベに似ているが、かなり大柄でたくましそうに見え、一目で違いがわかる。明瞭な違いは、雌しべの花柱の数。ミドリハコベは花柱が3つ、ウシハコベは5つある。北半球に広く分布する。英語名は、giant chickweed、または、water chickweed。

ツメクサ (Sagina japonica (Sw.) Ohwi

4月28日。普通、ツメクサというと、マメ科牧草のシロツメクサやアカツメクサを思い浮かべるが、そちらは詰草。こちらは爪草で、庭や道ばたに生える小さなナデシコ科の雑草である。写真は、歩道の石の継ぎ目に生えたもの。わが家の庭にも無数に生えてくる。芝生の中にもびっしり生えていて、とても抜ききれない。しかし、この小さくて元気な植物はS. japonicaの名が示すように、歴然とした在来種である。花はルーペで見るときれいだし、少し親しみがわいてくる。北海道、本州、四国、九州と極東アジア、インド、ネパールに分布する。

ツメクサ
シロツメクサ

シロツメクサ (Trifolium repens L.)

4月30日。もっとも有名なクローバーで、シロクローバーともよぶ。クローバーといえば、まずこの植物を思い浮かべる。市街地でも田園でも、どこにでも見られる雑草であるが、牧草というイメージがあり、また、愛の印の四葉のクローバーを見つける楽しみなどあり、人に好かれる植物である。その純白の花は、よく見ると大変美しい。日本には16世紀後半、オランダからガラス器を送ってきたとき、なかにシロツメクサの乾草を詰めてあったので詰草(つめくさ)の名がついたとある(大泉久一 朝日百科「世界の植物」)。アジア、ヨーロッパ、アフリカの温帯が原産であるが、牧草から世界中に帰化している。

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