「忘憂草」おまけ東雲明日香 【5/5】
今回のなかよしさん:透&東雲&蕾「あ〜ぁ長かったなぁもう」「確かにちょっと長かったかね。予定枚数超過も甚だしいよ」 「俺が言ってんのは、追試だよ追試。」 「はぁそうですか……で、どうだったんだい、結果は?」 「おかげさんで、何とか再試なし! さんきゅ、東雲」 「どういたしまして。そりゃよかったね」 「でさぁ、例の和歌の解釈ってなんだっけ?」 「あの時話しただろう?……そっか、本編では出ませんでしたからね。あれは『土佐日記』二月五日に出てくるもので、任地で亡くした子を思っての歌だよ。『住江に船を寄せてください、憂いを忘れられるという忘れ草を効き目があるのなら摘んで行くから。』というくらいかな。万葉集などでは、効き目がないって歌が多いのだけどね」 「なーんだ、効き目ないのかぁ。」 「元は中国の『詩経』に出てくる忘憂草つまり萱草で、日本のものとはちょっと違うのだよ。それで効き目がないというのかも知れないね」 「実のところはどうなんだよ?」 「本人の心がけ次第だろう。頼りすぎてはいけないというのは何だって同じさ。分かってるよね、透」 「へぃへぃ。で、兄貴の歌ってのはどんなのだったっけ?」 「兄上の? 『天地の薬理をどんなに紐解いても、あの思いを忘れさせるものはない。あの忘れ草なら効き目はあるのだろうか。』というもの。結局、どちらも効き目を信じきっていないという感じかな」 「なーんだやっぱり効き目ないんじゃん。」 「ま、そうなのだがね……」 「ははぁ……さてはお前。」 「何だね急に。」 「天界に恋人がいてその子の事忘れられないでいるとかってハナシじゃないのか?」 「何故そういう話になるのだね? 事情は蕾から聞いたのだろう?」 「だってさーぁ。お役目とかそーゆー事情だけにしちゃストイックすぎるぜ? 義理立てしてなびかないってのなら話は分かるけどよぉ」 「ま、大事に思っている相手はいるけど、君の思っているような相手じゃないよ」 「ほぉー。ついに落ちたな東雲。さぁ、吐いてしまえッ楽になるぞ!」 「ららら乱暴は止し給え透っ。ぅわぁぁぁっ!」 「また何してるんだお前達?」 「え? 蕾?」 「蕾……! けほけほ。やっぱり君こそが真の友だよ、助かった、恩に着るっ!」 「何だ?彼奴は……」 「ちっ、逃がしたか。しかしまさか、お前じゃないよなぁ」 「何がだ?」 「東雲の恋人。」 「何でまたその話が出てくるんだ!? おいこら東雲、どーにかしろッ!」 おわる。 【5/5】 ◆前頁◆ ◆神葉樹譚 目次◆ |