261話 初夏の夜 女の部屋に忍ぶコソ泥

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルド Gメン75 次の活躍は。

女性Gメンが、自宅に侵入した泥棒に切りつけられ、面目まるつぶれ。
その夜の目撃者と思われる少女から、身分不相応な時計を渡された
女性Gメンの妹が刺された。

事件は凶悪犯罪に伸展。
少女の書いた似顔絵から犯人を追い詰めた女性Gメンは、危機一髪の
瀬戸際に立たされる。

次回は、「初夏の夜 女の部屋に忍ぶコソ泥」


    <監督:鷹森立一、脚本:高久 進>


1.作品について

前回は朝から始まったが、今回は深夜からドラマは始まる。

吹雪刑事は実戦に強いという、本来の設定に戻っている。
この作品で、吹雪刑事は何人も殺した"凶悪犯”と、死闘を展開することになる。

男はナイフを武器とし、体重は吹雪杏子の2倍の90Kg。 この大きなハンディにも
拘わらず、吹雪刑事は敢然と立ち向かい、合気道を駆使して懸命に闘う。


吹雪刑事の妹、”吹雪陽子婦警”と、 ”田園調布の吹雪邸”が初めて登場する。
そして、この作品で重要な役割を演じるのが、階段の前でたたずんでいた、
不可解な少女 "こずえ”である。

それにしても普通に見ていると、前回の「悪魔の結婚式」とは、吹雪刑事の"強さ”が違いすぎて、理解しにくいだろうと思う。


2.凶悪犯 城戸武彦

まさか、このコソ泥が数人の死傷者をだす凶悪犯になるとは、吹雪刑事には思いもよらなかった。

この男は胆力がある。殺人の中でも、ナイフで刺し殺すのは、他の武器・凶器と違い"手にその感触が残る”ため、何人も殺すのは難しいと言われる。 また後ろ暗いことがあると、警察には行きたくないものだと思うが、自ら「警察に行こう」とは!

凶悪犯に変貌した城戸は、追い詰めてきた吹雪刑事を殺すつもりで、死に物狂いで襲い掛かってくる。

「253話 白バイに乗った暗殺者たち」のテロリスト影山が、平泉征さんのGメン75
での代表作だと思うが、丹古母鬼馬二さんにとって、この作品の凶悪犯"城戸”は、
Gメン75での代表作の1つではないかと思う。


3.少女こずえ

少女"こずえ”(米倉幸さん)は不可解であるとともに、印象的な少女である。
Gメンの中でも特異な少女と言えるだろうか。

深夜に少女が、階段の前にたたずんでいること自体も不思議であるが、おじ夫婦から嫌われているから、家にいなくても誰も心配もしていない。

”こずえ”は無愛想で、聞いていないのかと思うと、きっちりと聞いている。
最初は憎らしい少女だったが、段々と変化してくる。少女は両親が亡くなってからは、人に優しくされたことがなかったのだろう。

杏子と廃工場に向かうシーンなどは、可愛く感じられてきた。
そして杏子のピンチを知り、少女は懸命に走った。
ラストのシーンは杏子も"こずえ”も良かった。


4.杏子の妹 吹雪陽子婦警

セミレギュラーとして重要な吹雪杏子の妹、吹雪陽子婦警が初めて登場する。
この陽子については、134.杏子の妹、吹雪陽子婦警のページで書いているので、参照して欲しいと思う。

竹田かほりさんは婦人警官が実に良く似合っており、杏子とは姉妹仲が良い。
妹の陽子が刺されたと聞いた瞬間、杏子は刑事というより1人の姉になった。



5.所轄の3係の刑事

演じているのは早崎文司さんで、Gメン75でも次の作品などでゲスト出演されている。
    234話「女たちの拳銃泥棒」−−−−3課スリ係の刑事
    240話「80年新春おせち料理毒殺事件」−−関西弁で味のある刑事
    311話〜 草鹿刑事が住んでいるラーメン屋の店主
つねにベテラン刑事の味で、Gメンにも指導する役をされていた。

しかしこの作品では、吹雪刑事の判断がまさっていた。

他のドラマでは、「必殺仕事人」で中村主水の上役としても印象的である。


6.田園調布の吹雪邸

吹雪邸が初めて登場するが、田園調布1丁目という一等地にあるが、これは刑事ドラマの自宅としては珍しい。
138.吹雪刑事の謎?の邸宅のページにて書いているので、参照して欲しい。

深夜、田園調布の家に帰った吹雪刑事。ゆっくりとした家の描写。
彼女が泥棒の侵入に気付いたときから、一気にテンポが速くなる。

7.Gメンたちの活躍

この作品では、吹雪刑事以外のGメンは活躍するシーンは少ない。
しかし、全員が登場するシーンは数回ある。

冒頭の場面や、吹雪刑事の家の戸締りの指摘、杏子への妹の事故の連絡、
病院のシーン、Gメン部屋、殺人現場等々、多くのシーンで、Gメンたちが
登場し活躍している。

8.吹雪刑事の活躍

前回に続いて吹雪刑事の主役で、捜査・追跡・格闘と活躍シーンが多い。
吹雪刑事は、妹も傷つけた凶悪犯を執念を持って追い詰めていく。

1) 吹雪刑事の泥棒追跡

家の中を荒らされた状態を見た時の、一瞬の判断力と行動力はさすが杏子。
普通の人間なら、泥棒がいると判ったら、恐ろしさのために自分の家から出てしまうだろう。

しかし、暗闇の中に逃げていく泥棒の男の姿を見つけると、彼女は恐れることなく、
1人で猛然と
追いかける。
吹雪杏子刑事は、急坂をかなりのスピードで駆け下りていった。

じつは男は逃げ去るつもりだったが、吹雪刑事の足は速い。彼女が迫ってきたため男は逃亡を諦めて隠れた。
しかし、吹雪刑事はその男が、まさか暗がりにひそんでいるとは、、、予想していなかった。


2) 泥棒の容疑者

少女"こずえ”の似顔絵を、そして証言を、吹雪刑事は不可解に感じながらも、
直感ではそれを信じて捜査していく。
吹雪刑事は、はじめて男と対面した時、 「この男だ」 と直感で確信したと思う。

それから立花警部は 「誤認逮捕」 と言ったが、吹雪刑事は逮捕はしていない。
それどころか、城戸の方から 「警察に行こう」 と言い出している。


3) 吹雪杏子の大工

活動的な杏子は、道具を使いこなして中々のもの。
父親は男の子がいないから、杏子に大工を教えていたのだろうか。
Gメン75でこのようなシーンは珍しい。



4) 凶悪犯との死闘

<A.格闘と時間>
Gメン75の歴史の中でも、格闘シーンとしては屈指の名場面。
格闘というよりも、"死闘"という方が相応しいと思う。

Gメン75での女刑事の格闘は一瞬で終わるものが多いが、この対決の時間は、"こずえ”のシーンが途中にあるが実に5分間。女刑事の1対1の対決で、これほど長い激闘シーンはない。
男性刑事でも、草野刑事とヤン・スーの格闘以外では殆どなかったと思う。


<B.緊迫感・スピード>
2人はぶつかり合っているような、スピード感に溢れたじつに迫力のある激闘になっている。
このシーンは、凶悪犯を演じた丹古母さんが全く手を抜かず、中島はるみも
懸命の演技を行なったことにより、物凄く緊迫感が盛り上がったものになっている。


<C.吹雪刑事の格闘能力>
吹雪刑事は強い女刑事であるが、リアリティあるアクションを目指した近藤照男プロデューサーの方針に沿って、吹雪杏子の格闘能力は、現実にありうる程度の強さに抑えられている。
     「112.吹雪刑事の格闘について」で書いているので参照して欲しい。


<D.吹雪刑事のハンディ>
  1)凶悪犯は90Kgで、吹雪刑事45Kgの2倍の体重差
  2)男は大きなナイフを武器を持ち、吹雪刑事は素手
  3)杏子は最初に、犯人からの不意打ちで腕を負傷している

     (注:2倍の体重差は大きい。体重70Kgの男が、140Kgの大男と闘うことを
        想像すれば実感できると思う)
           (そのうえに、同じ体重でも、パワーでは女性は劣る)


  この大きなハンディを負いながら、吹雪杏子は懸命に、そして互角に闘った。

5) 撮影シーン

何度もNGもあったろうと思ったが、実際には丹古母鬼馬二さんと中島はるみの
2人が、猛烈な気迫でぶつかりあう乱闘シーンとなった為、NGの数は思いのほか少なかったと言う。
鷹森立一監督は、2人の迫真の格闘演技に圧倒され、何度もやり直さない方が良いと、判断したのではないかと思う。

中島はるみは撮影が終わった後で 「今日は体重2倍の人と格闘したので、体中アザだらけになりました」 と言っている。

5.中島はるみの演技力

<セリフ覚え>
連続での主役に、中島はるみはセリフを覚えるのが大変だったろうと思う。
中島はるみ本人は覚えるのが苦手といっていたが、スタッフに言わせると「セリフ覚えが速い」とのことである。

デビューから9作目であるが、中島はるみはセリフや演技が一段と上達している。

<表情>
喜怒哀楽を上手く表現するのが演技力であるが、中島はるみはそれだけでなく、より難しいとされる、微妙な表情が実に上手い。
  例えば、城戸に「お引き取りください」というシーンや、
        陽子が入院中の病院でのシーン。その他



9.現地探訪

1)吹雪刑事が駆け降りた急坂

この撮影現場は、山田八兵衛さんが発見されて、HPに掲載されているので、私も東京へ行った際に現地を訪れた。
吹雪杏子が駆けおりた急坂は、吹雪邸のすぐ横にあった。  (右の画像)

1980年5月に、中島はるみが駆け抜けていった場所。
現場には、"その時、ここで撮影が行なわれた”という実感が未だに感じられた。


この急坂の傾斜は何と10度程度もあった。
中島はるみは、それをかなりのスピードで駆け下っている。

犯人の城戸がひそんでいた暗がりは駐車場だった。
その駐車場は、今もそのまま残っていた。       (右の画像)


2)少女こずえと階段

少女"こずえ”が佇んでいた階段も、すぐそばにあった。
その階段についても、山田八兵衛さんのHPにて詳しく紹介されている。
   (注:そのHPは現在休止中であすが、リューアルのうえ公開されると思う)


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