297話 ラッシュアワーに動く指

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

Gメンが二人組の女スリを逮捕したと思ったが、
なんとこれが婦人警官。

口論のあげく殴り合い、だがその婦警は警察署長の娘。
女性の悪口をぶちあげる男性Gメンに憤慨した女性Gメンも
婦警グループと組んで、スリ逮捕を決意。

男性軍も負けじと頑張るが、女性軍に鼻をあかされる。

だが凶悪なスリの復讐は、ついに婦警を襲い、
意地の張り合いから、事件は殺人に発展。

次は、「ラッシュアワーに動く指」

     <監督:瀬川昌治、 脚本:高久 進>

1.作品について

45話目の吹雪編。 この作品も含めて残りは10話となる。
全355話の中でも個性的な作品で、他に例のないシーンが幾つも描かれる。

吹雪刑事の主役作品だが、田口・中屋・島谷の活躍もあり、そのチームワークは崩れかけながらも踏みとどまり、素晴らしいチームワークを生むことになる。
295話で登場した、城西署の土屋署長も登場する。

スリのグループを追う婦人警官を、田口刑事が誤って逮捕したところから始まる事件は、男性刑事と女性刑事とのいさかいを引き起こし、そこからスリのボスがからむ事件へと発展していく。
そして最後は、吹雪刑事がボスの前に立ち塞がる。

この作品には、142.吹雪刑事と酒・飲食 のページでも書いているが、吹雪・中屋ら4人による会食シーンがあるが、295話とは雰囲気がまるで違う描き方がされている。

吹雪杏子が意外にも、かなりの酒豪である事が判明する。
     (アンフェアの、雪平夏見刑事ほどの、酒豪ではないと思うが)

今回の見どころは会食シーンよりも、中屋警部補・島谷刑事の変装である。
変装シーンとしては、Gメン屈指の傑作である。

  注) 東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を、2008年6〜8月の3ヶ月間かけて行なったが、
       この作品は " 第25位 " に選ばれた。
       数多い作品中での "25位" はかなりの上位であり、この作品の人気の高さを現している。



2.城西署の女刑事

塚本アキ刑事

演じる飛鳥裕子さんは、289話で吉岡ひとみさんらとゲスト出演している。
通常は悪役が多かったと思うが今回は女刑事。但し田口刑事らとは火花を散らす。 吹雪刑事と意気投合して、共同で集団スリの捜査にあたる。

土屋さやか刑事

城西署の土屋署長の一人娘。
演じる谷川みゆきさんは、258話・ 271話にも出演されているが、その役とは全く違う印象で、非常に勝気で男勝りな役、犯人を相手にしても強気は変わらない。

さやかが 「父はああ見えても、おしゃれなのね」 と言うときの表情から、
父娘の仲はすごく良さそうである。

295話では、島谷刑事が外勤巡査とトラブルを起こしたが、今回は田口刑事がスリの女刑事たちとトラブルを起こしてしまう。

犯人を捕える彼女らの執念は本物だった。 偉そうに言うだけあって、土屋刑事も懸命に奮闘している。

<余談だが>
土屋署長の娘は 「さやか」 だが、 高久進さんは日本酒好きではないかと思う?
理由は、美味しい日本酒に "一人娘さやか" という銘柄がある。ここから娘の名前を思いつかれたのではないかと思った。
単純な発想で、偶然かもしれないが、飲むシーンが多い作品だからそんな気がしている。


3.集団スリ

ボスの片岡竜次は、(長谷川弘)5才からスリを始め、前科13犯の大悪党。

通常のスリは、傷害事件は起こさないと思うが、今回のグループは暴力スリと言っているので、それも辞さないのだろう。
「署長の娘から、一人ずつ3人に死んでもらう」 とは物騒な奴である。
        −−ということは、吹雪刑事も殺そうとしていた。

弟分の彦坂を演じる、頭師佳孝さんは80年度3度目の登板。(258話、266話)
とぼけたような小悪党がじつに良く似合う。 (右上の画像)

ルービックをやる男は、本当に危険な香りがする男。
    (ルービックとは発明者の名前で、1980年(昭和55年)に発売されたとの事)

ボスが逃走し、吹雪刑事らが追跡する場面。新宿の地下商店街の逃走シーンは、
長い距離で、数多くの店や通行人の協力を得てやったのだろうが、撮影は
さぞや大変だったろうと思う。

4.屋台のシーン

屋台で中屋・島谷・田口と吹雪の4人が、日本酒を飲むシーンがある。
295話「午前6時の通り魔」とはまるで雰囲気が違い、決して和やかとは言えず、個人的には295話の鍋を囲むシーンの方が好きである。

295話では黒木警視正と立花警部が金を出したが、今回は中屋警部補だけが金を出すことになるが、資金的に苦しい。

他の3人は、行く場所を見たとたんに足が重くなる。
座ってからも、苦虫を噛み潰したような3人。
このあたりの、中屋警部補がケチと思われながらも、おごろうとする姿はほほえましく面白い。

酒が入ったおかげで、3人も段々と調子が出てくる。  ところが、
詳しくは書けないが、今回は飲みすぎの上に、城西署の女刑事との一件が強く残っているために、口調は荒く暴言となり事態はややこしくなっていく。
中屋・島谷・田口の3人による女性への非難に、吹雪刑事はガマンしきれずに、ついに本気で怒ってしまう。

メンバー同士がいがみ合うことはGメンでは珍しいが、その意味でも例外となる。

<その他>
1.杏子の酒の強さに驚く、中屋警部補
   島谷刑事が杏子は酒が強いと言っていたが、確かに強くグイグイ飲んで
   いて、島谷刑事や田口刑事が酔っ払っているのに、あまり酔っていない。

2.ビールは本物?
   中屋が開けて島谷・田口のコップに注いだビールは、本物だと思う。

3.吹雪刑事は良く食べている。
   295話もそうだったが、今回も撮影しながら良く食べられるものだと思う。

4.酒好き
   伊吹剛さん、宮内洋さん、千葉裕さんは全員が酒好きで、しかもかなり
   強いとの事。
   中島はるみも、ワイン1本くらいなら空けられるとの事なので、かなり強い。

5.飲むだけではなく、何度も食べる
   中屋警部補と島谷刑事は、「おでん」に始まり、「ハンバーガー」、「ラーメン」 と3回も食べている。
   吹雪刑事は 「おでん」 のあと 「ケーキ」 にありついている

5.土屋邸での酒

土屋署長の誕生日に、立花警部らGメンは土屋邸に集結する。

今回も、立花警部が土屋署長と酒を酌み交わすシーンは、和やかで楽しそうである。

295話とともに、他の作品では見られない貴重な場面である。

そして、ここでも中屋警部補・島谷刑事・田口刑事の、上司である立花警部への陰口が出てしまう。
   (若干オーバー気味ではあるが)

土屋署長は、娘を愛し心配する、心優しい父親として描かれている。
しかし、かつては鬼警部だったほどだから、あれほど勝気な娘が生まれたのだろうか?
後に土屋署長が「いい組み合わせですな」というのは、Gメンの誰かとに期待を寄せているかのようだ。


6.本音について

刑事ドラマでは、Gメン75は勿論、その以前にも以後も、これほどメンバーたち自身が本音をぶちまける作品は非常に少なかったと思う。
かなり個性的で、しかし面白い作品である。

中屋警部補たち以外にも、面倒を押し付けられる立花警部の叫びも本物。
黒木警視正はセリフだけでなく、立花警部の声を聞いてから戻ってきた時の味のある演技も見もの。

但し、中屋・島谷・田口の屋台での発言は、本音かと言うとそれだけではなく、
今回の一件で腹に据えかねていた為に、本音以上の暴言となったのだと思う。

7.Gメンの活躍

田口刑事のスリの女刑事とのやりとりは、面白いが事件の発端となる。
ここからの男性Gメンの鬱憤が、事件の展開にからんでくる。

1)対抗心

屋台での"もつれ"で対立した男性陣と女性陣は、幸い凶悪事件がなかったので、それぞれに吹雪刑事ら3人と中屋警部補ら3人に別れて、相手を出し抜いて集団スリを捕まえようと張り合うことになる。

このあたりの対抗心の見せ合いは、いわゆるハードボイルドのそれではないがかなり面白い。 長い年数の中には、このような作品もいい。

吹雪刑事たちがサウナで温まりながら、骨休めをしているとき、中屋警部補たち3人が寒空に震えながらハンバーガーを食べて、対照的に描かれているのも楽しい。

2)チームワーク

しかし、集団スリのボスを捕まえようとする時には、もはや男女が張り合うことはない。 全員が一糸乱れぬ、見事なチームワークとなって包囲網を築く。

中屋警部補・島谷刑事による、田舎からの男に変装した演技、話しっぷり面白く特筆ものであり、変装シーンとしては、Gメンの中で傑作である。
     (ドラマだけでなく、現実にもこの程度の変装はあるらしい。)
  注)変装については、162.吹雪刑事ほかGメンの変装 のページを参照して下さい。

8.吹雪刑事の活躍

吹雪杏子はある出来事をキッカケに、集団スリを追いかけることになる。

これまでGメンの女刑事は、他の女刑事とは接触することすらなかったが、今回の吹雪刑事は城西署の女刑事2人とともに活躍する。

最初は、中屋警部補らと張り合って捜査を競ったりもしたが、最後は全員で力を合わせて集団スリ撲滅作戦を展開する。

1)飲食

上記で既に書いているが、中屋警部補らの暴言に吹雪刑事は怒る。
屋台で酒を飲みながらの会話で杏子は本気で怒ってしまう。

その直後、吹雪刑事と城西署の女刑事2人と知り合って意気投合する。
女同士でワインを飲んだりサウナに入ったりする、通常のGメンでは見られないシーンが描かれる。

2)スリの捜査

中屋警部補らと、捜査で張り合う吹雪刑事たち。
吹雪杏子が、「あなな方は、集団スリを追っていらっしゃるんですか?」 という
問いかけが絶妙で滑稽である。

吹雪刑事たちは、スリ捜査に慣れた土屋刑事らのアドバイスによりサウナで
英気を養う。

中屋警部補たち3人がスリを捕えられなかったのを見て、城西署の女刑事は喜んでいるが、吹雪杏子は競っているにも拘らず、残念がっている。
              −−このあたりは、さすが吹雪刑事である。

そして、吹雪・塚本・土屋らはスリ1人の逮捕に成功し、男性陣の鼻を明かす。


3)署長の誕生日

土屋署長の誕生日に、集合しようとしていたが、集団スリの報復を受ける。
吹雪刑事が、異様な"さやか"の動きに不審を感じて周囲を見回し、逃げる
男を見つけたのはさすが。−−292話でもそうだったが、杏子は周囲に対する直観力が鋭い。

4)スリ捜査 最終ラウンド

集団スリの撲滅の為に、Gメンらしく全員が抜群のチームワークでスリに罠をかけていく。
吹雪杏子や、田口刑事らは、スリたちの行動を辛抱強く見守る。

静から動への一瞬の転換は見事。 田口刑事が、 吹雪刑事が襲い掛かる。
ルービックの男が、親分の危機に駆けつけて入り乱れる。

254話の舞台にもなった新宿で、吹雪刑事そして塚本刑事がボスの片岡を追跡する。 ボスは懸命に逃げるが吹雪刑事の足は速い。 自慢の走りでついに逃げるボスの前に回り込み、立ち塞がる杏子。

ボスの片岡竜次が、ナイフを取り出したときは、さすがに吹雪刑事の顔にも
緊張が走った。
しかし吹雪杏子はキックと、得意の合気道を駆使して闘う。







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