謎のハァハァ病
緑内障を克服した後は、しばらくは何事もなく、平穏無事に時は過ぎていきました。
そして1998年の夏・・・その変な症状ははじまりました。
元気も食欲もあり、特に何と言う事もないのに、口を開けてハァハァ呼吸をしている・・・
最初に気が付いたのは母でした。「暑いのかしら??でもランチは別に普通だし・・・でも何だか息苦しそうよ」
その一言でとりあえず病院で検査を受けました。
血液検査に胸部のレントゲン。しかしいずれも正常値、特に異常はありませんでした。
この時はそのまま様子を見るという事で、なんとなしに忘れ去られていきました。
しかしそのハァハァ病は、その後も忘れた頃に何度か現れては検査で異常なしと言われ続け、
ある日とても大変な事になってしまったのでした。
肝性脳症の始まり
ハァハァ病がなんだか解らないまま1年が過ぎた1999年の夏。この年は猛暑でした。
ハァハァするものの、元気食欲は相変わらずありましたが、何だかだんだん痩せてきはじめたような気がして、
違うかもしれないけれど、似たような症状が出るからホルモン異常の検査をしてみましょう・・・と言う事で、
血液検査をしてみたところ
「ありゃ〜」(こゆき)← 実際こんな感じに叫んだ。
「肝臓の値がえらく上がっている。ちょっと前に検査した時は正常値だったのに・・・。」(こゆき)
「猫には少ないけど、肝性脳症かもしれないから、アンモニア値計って見ましょう。」(先生)
「・・・せんせ〜上がってます・・・(>_<)」(こゆき)
思わぬところから思わぬ病気。おかげで高いホルモン検査はしなくて済んだものの、ショックは大きかった。
肝性脳症は肝臓が何らかの疾患に陥り(うちの場合腫瘍の可能性大)解毒機構が上手く働かなくなってしまい、
体内の毒性物質(アンモニアなど)が直接脳の中枢に作用し、これに肝臓自体の異常も加わって発症するらしく、
症状としては、沈うつ、運動障害、歩様異常、てんかん様発作、無意識な歩行、旋回、昏睡、昏迷、盲目などなど
・・・の症状が出るらしいのですが、うちの ちび丸はもともと運動障害と盲目ですからね(^_^;
食べても痩せてきて、変な呼吸してるので検査してみたら、肝臓の値は異常に上がってるは、血中アンモニア値も異常だわで・・・。
エコーとったら肝臓の表面がボコボコしていて、もうばっちりって感じ。
目がなくて表情がわかんないから、苦しいのかイマイチ判断がつかない。
肝性脳症は、とにかくなるべく体内でアンモニア物質を作らず、作っても早く排泄させて、なるべく肝臓に負担をかけないように
するのが大事。と言う事で、肝臓に負担をかけないような食事を与える事になるのですが、これがまたその後の大変な状態を
引き起こす事になるとは・・・。
この時の私は想像もしていませんでした。
おむつに挑戦
今まで ちび丸は便秘がちだった事もあって、FRWという繊維質の多い処方食を食べていました。けれども肝臓の機能が低下しているという事になったので、その時期ちょうど出始めた肝臓疾患用の処方食l/dに切り替えました。
l/dは缶タイプのものは いざという時に強制給餌が出来るよう、普通のものより柔らかめです。それがどうもいけなかったのか、目の見えない ちび丸には上手く食べられず、顔中、身体中 l/dだらけになってしまい、挙げ句の果てには食欲の塊のようだった ちび丸が全然受け付けなくなってしまいました。ただ食欲が無い訳ではなく、l/dが嫌・・・という事なのですが、今まで良く食べてくれていた子が食べなくなるほど困る事はない・・・という感じで、とりあえず食べやすいようにドライフードを混ぜたり、FRWを混ぜてみたり、手を変え品を変えしてみました。
そうしてしばらくの間はなんとか食べさせていましたが、段々体重も減って来て、これはまずい・・・という感じになった為、仕方なくご飯をk/dに変えてみました。k/dは主に心臓と肝臓に障害がある子用の処方食です。これは割と固めのもので、なんとか普通に食べてくれるようになりました。
・・・しかし悲劇はここから始まったといっても過言ではありません。(なんて言うと大袈裟かもしれませんが) 今まで繊維質の多い食事を食べていた ちび丸君・・・新しい食事に代え、毎日抗生物質を飲み、肝性脳症の症状は治まったものの、おなかの調子が悪くなり、下痢気味になってしまったのです。これが普通の猫ならば、さほどの悲劇ではないのですが、ちび丸は自分で立ってトイレに行くという事が出来ない猫。そのため下痢になった場合、家の者が留守をする間はケージに入れておかなければなりません。もちろんケージの中でオシッコもウンチもしてしまう訳ですから、家に帰ってきた時にはウンチまみれの猫が出来上がっているのでした。
私も毎日病院で入院や預かり動物の排泄物の処理はしていますが、毎日毎日、家に帰った時までこれが続くとなると、さすがにめげます。汚れる度に体を洗わなくてはいけない為、ちび丸はますます不機嫌になるし、部屋は臭いし・・・ちょっとウンザリ。自宅介護の大変さを実感する感じでした。
あんまり毎日汚れるので、何か良い方法はないかと考え、たまたま病院に診察で来ていた老猫が、おむつをしているのを見て、「これだ!!」と思いました。とにかく多少お尻周りが汚れても、体全体が汚れるよりは良いだろうと思い、近くのペットショップに走り、動物用おむつを買い求めました。
一番小さいサイズのおむつでも 痩せてしまった ちび丸の体には大きく感じましたが、とにかく装着してみました。
おむつをつけてみて、猫の体が柔らかいんだなぁ・・・と実感した私。まぁ何とか付いたものの、ちょっとした動きで簡単に外れる外れる。めげそうになりましたが、何とかテープで固定し、外れないようにして1日置いてみました。その結果は・・・
見事、おむつは外れていました。でも、おむつにウンチが残っていて、体はあまり汚れてなかったので、多少の効果はあったのかも??
・・・しかし、やはりそんなに上手くいく事は二度と無く、結局おむつ作戦は却下されたのでした。
ハァハァ病 再び?
肝性脳症という事が判明した後、ちび丸は何とか処方食と抗生物質で状態を保っていました。定期的に血液検査を繰り返し、肝臓の値もまずまず、ハァハァするのもすっかり影を潜めていたので、私もこのまま薬を続けていけば何とかなるかな・・・と、ちょっと安心していました。
しかし、11月に入ってから食欲の塊のようだった ちび丸が、だんだんと食べなくなり、ハァハァするわけではないけれど、何となくお腹で呼吸をしているような感じ。体重も3kgから2.7kgまで減少し、「なんか苦しそうじゃない?」という母の一言で、また検査をしに病院へ連れて行きました。
病院に連れて行って、聴診してもらうと呼吸雑音(++)、舌チアノーゼもあり、心拍も上昇・・・これはただ事ではないかも・・・??
血液検査ではそれほどの変化は見られませんでしたが、現像が上がったレントゲン・フィルムを見て・・・・「胸水溜まってる。あ、腹水もだ。こりゃ呼吸苦しいよ。」 ・・・・・・が〜ん・・・(>_<)
もともと ちび丸の病気は原因が不明でしたが、胸水や腹水が溜まるとしたら、もしかしたら「猫白血病(FeLV)」や「伝染性猫腹膜炎(FIP)」の疑いがあるかも・・・と言うことで、ウィルスの検査もしておきました。
ウィルス検査はずいぶん前に「猫エイズ(FIV)」とFeLVの2つはしてマイナスだったので安心してはいましたが、FIPはしていなかったので、ちょっとドキッとしてしまいました。
FIPはたとえ抗体が(+)でも発症しなければ問題はありませんが、発症すると予後は余り良くない病気です。そう考えると緑内障になった事とか、あれもこれもFIPで説明がつくような気がしてしまいます。そうでなくとも胸水や腹水が溜まるなんて良い状態のはずはないのに・・・。
FIPの抗体検査は外部の検査機関に出す為、結果が出るのに何日かかかります。それまではとりあえず対症療法と言う事で、苦しい原因の胸水と腹水を何とかする事にしました。何とかすると言っても出来る事は2つ。麻酔をかけて直接胸に針を差して水を抜く方法と利尿剤などの薬を使って尿として胸の水を体外に出す方法です。麻酔をかけて抜く方が手っ取り早く楽にはなるのですが、ちび丸の年齢と肝性脳症などの状態を考えるとどうしても麻酔をかける気になれず、とりあえずは薬を始める事にしました。
結局 この仕事に就いていても飼い猫の事になると気が弱くなります。しかたないですね (^_^;