<ちょいと長すぎる旅路>
(後編)
前編からの続き。
こうして(どうして?)何とかバルバドスを旅立った俺。
ニューヨークに着いたら、後は空港のホテルに1泊して翌朝の飛行機に乗って
日本に帰るだけ。
だけだったのだが。
沸々とあの時の怒りが蘇る。
ニューヨークに着いたのは、夜だった。
入国審査場までやって来てまず第一に気になったのは、入国審査のカウンター
がいくつもオープンしてるのに、外国人用のカウンターは1つしか開いてねー。
日本でも日本人用のカウンターはいっぱいあるけど、外国人用は少ないしな。と
思い返そうとするが、明らかにアメリカ人用のカウンターの各列は外国人用の列
の1/5以下の長さ。
しかもアメリカ人の列が終わると、係官達はカウンターの電気を消して次々と
消えていく。
差別が根底にあるのかもしれんが、アメリカ人は頭悪いから融通利かないんだ
ねー。と心の広い俺は許す事とする。
ところが、50人近く並んでいる列があるというのに、外国人用カウンターの係官
も突然カウンターの電気を消してどっかに行っちまった。
交代の人員がいる訳でもなく、ただクローズ。
「はあ?」という顔をする、俺も含めた外国人の列。
空港係員が何故か少し慌てた様子で、俺らを係官の残っているアメリカ人用の
列に振り分け直す。
各カウンターの中に外国人がどんどん吸い込まれてって、それでめでたく終了。
じゃねー!
運悪く、俺はある列の最後になってしまったのだが、そのカウンターも何故か
俺の前の人が通過した後に、手で俺に止まれの命令をかけ、何故か出入国
カードの束を数え始めた。
てめー、何さらしとんねん、早よせー!
と思って待っているのだが、一向にその作業を止めやしねー。
他に係官の残っているカウンターは隣の1つだけで、そこでは何か書類の不備
があったようで、1組の夫婦らしき人達がつかえていた。
いつの間にか空港の係員もばっくれていやがって、この入国審査場には、俺、
束を数えてるばばあ、隣りの係官のおっさん、つかえている夫婦の5人だけ。
俺、一体どうなるんだろう?
と思っていたら、そのつかえている夫婦の元にもう1人係官がやって来て調整を
開始した。
ここまでは黙って待っていた。
日本人は基本的に感情を表に出さない奥ゆかしい国民性を持っている。
ここでは例外。
まずは足で床をばたばた踏み鳴らす。
そして、大声でため息。
アンド絶対全員に聞こえるような音で舌打ち。
手伝いに来ていた係員が俺に気付いて気まずそうな顔をしているが、書類数え
係官のばばあと隣りのもたつきおっさんは知らんふり。
てめえら殺すぞ。
そしてつかえていた夫婦は問題が片付いたようで無事に通過していった。
と、その隣りの係官のおっさんは電気を消して俺の方を見向きもせずに消えた。
くそばばあはまだ書類数え中。こいつは歳食ってボケが来ていたので、俺の事を
すっかり忘れいるらしい。恐るべし老人ボケ。つーかボケるような歳のばばあは
引退しろ。
ふとその手伝いに来ていた係官のお姉ちゃんと目があったので、俺の生涯で
こんなに悪意を持って人をにらんだ事はないと断言できる位の顔で一にらみ。
お姉ちゃんは慌ててカウンターの電気を付け直し、俺を手招きした。
とても丁寧な対応をしてくれたのだが、俺が手続きをしている最中にくそばばあ
が電気を消して帰りやがったので、怒り心頭。
俺にパスポートを返して、行っていいよと行ってくれたお姉ちゃんに対してもう
一にらみと舌打ちを土産に、乗換だけで全然用事のないアメリカに入国した。
ニューヨークにはもう2度と行かない。
淡々と書くとわからんと思うが、列に並んでから入国するまで丸々2時間以上
かかっていた。
お姉ちゃんに悪い事をしたと思うか?全く思わない。
おそらく、こいつらは自分達の終業時間が来ると列に誰が並んでいようが関係
なく仕事を終わる。という事なのだろう。
さすがアメリカ人。建国して今まで好き勝手やって来ただけの事はある。
かっちょいー。合理的。
ニューヨーカーは2001年の事件で町ごと絶滅すればよかったのに。
追記:
ぽつんと1つだけ残されていた俺のカバンを拾って外に出て、とりあえず空港
から一番近いホテルを取った。
そのホテルにチェックインした時にフロントのお姉さんがくれた1枚のクッキーが
いつもより嬉しかった。
それが温めてあったものだけによけい嬉しかった。
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