<ちょいと長すぎる旅路>
(前編)


バルバドス唯一の国際空港は改装中。
だからってそれはねーだろ。

バルバドスでの滞在が終わり、ニューヨークへ戻る日。
国際線の飛行機に乗る人は、空港に出発2時間前到着がルールだが、今回は余裕を持って 出発の3時間前に空港に着いた。
そうしといてよかった。

バルバドスの空港は改装中の為?いや、完成してもそうかもしれんが、航空 会社のチェックインカウンターは屋根は付いてるが、屋外にあった。
タクシーが到着した場所はチェックインの為並んでいる観光客の列の中、 出発便が集中している時間帯なのか白人観光客がぎっしりと列に並んでいた。

という訳で、俺が向かったアメリカン航空のカウンターも大行列。

カウンターの上にテレビモニターが付いていたので確認をすると、俺の乗る ニューヨーク便の1便前の飛行機の受付をやっている様子だった。
その飛行機の出発時間まで1時間を切っていたので、この列の人達は俺と一緒 で次のニューヨーク便の乗客達だろうと、列に並んで待ってみる。

10分、20分、30分、時間は過ぎて行くが、俺の少ない経験上の計算からして、 時間の進み具合と列の進み具合のバランスがおかしい。
こんな感覚は、マダガスカルでばかフレンチの群れがいた時以来の感覚。
ひょっとして、こいつらアメリカ人のフリしてみんなフランス人?
疑惑が湧き上がる。

でも明らかに列の人達は英語でしゃべってんだよな。
(英語という事はわかる。話の内容はわからん。)
一体、カウンターの近くでは何が行われているのだ?
別の疑惑が湧き上がる。
でも遠くて見えない。
そして40分近く経った時、列がつづら折りになっていた為、偶然視界が開け、 最前線の様子が見えた。

・・・はい?

航空会社のカウンターの前に何故か会議室でよく見るような机が置いてあって、 そこに何故かガードマンが何人かいる。
そして、1列で並んでいる人達がそこで2手に分かれている。
何やってんだ?継続して様子を見ていると、その机の上には観光客のカバンが 口を開いて置かれていた。
なるほど。アメリカの昨今の情勢から、怪しい乗客はその時点で荷物を開けさせ られているのか。と思った。

バルバドスはそんなに甘くなかった。というか、根本的に主旨が違っていた。
その後も引き続き様子を見ていると、怪しい人も怪しくない人も例外なく、机の上 でカバンを開封されていく。

えっ?全員の荷物を開けてるのか?

何と厳しいセキュリティー。アメリカに行く奴は全員テロリストか。ふざけんな。
と、アメリカの尊大さに憤慨していた俺だが、この認識も誤っていた。
誰からも何にも説明はなかったが、見ている内に段々真相が掴めてきた。

ヒント@:対象は全員に見えたが、検査のない人もいた。
ヒントA:対象は全荷物に見えたが、ある程度の大きさ以上のものだけだった。
ヒントB:警備員は乗客に対して何かを確認してから開ける荷物を決めていた。
ヒントC:開けたカバンはカウンターの後ろのベルトコンベアーに吸い込まれ、
開けなかったカバンは持ち主と共に空港の中に消えて行った。
ヒントD:普通ならカウンター前にあるはずのX線検査機が見当たらなかった。

さあ、謎を解け。

真相:空港が改修中で、X線検査機を設置できる状況でないが為に、人力検査 になっていた。

・・・あーあ。

ため息も束の間、嫌な予感がして前に並んでいる人、後ろにいる人の航空券を ちら見すると、彼らはニューヨーク行きではなく、あと10分程で飛び立つ予定の 飛行機の乗客達だった。
あーあ。それでタクシーの運転手は早めに俺を空港に行かせたがったのか。
この人達飛行機にちゃんと乗れるのか?と心配になったが、所詮他人事なので 順番は譲らない。

そうこうする事もう30分、前の便は飛び立っているはずの時間だが、その便の 乗客を優先する動きもないまま、俺の番がやって来た。
と思ったら、前の人の荷物の中に入っていた壜を警備員が落として割った。
何の匂いだ、これ?酢?バルバドスは酢が有名なのか?バルバド酢? すみません。
その落下物を片付けている間は、作業が中断。

10分後、本当に俺の番。
うわー、時間をかけてる割に雑な奴らだよー。
俺が汚れ物を入れていた袋は開けもせず外から触っただけで無視。
とりあえず何でもかんでも握って握って確かめてる。
目は使わないのか、君達は。

えーと、アメリカに麻薬を持ち込みたい人、アメリカで事件を起こす為に拳銃とか 持ち込みたい人、その他アメリカに持ち込んじゃいけないものを持ち込みたい人 は、バルバドスで調達すると成功率飛躍的アップ間違いなし。
但し期間は限られるので、いますぐバルバドスへ。

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世界の若者から0.5
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