<君はママレモン?>

コスタリカ3日目。トルトゥゲーロ保護区の中にあるホテルの食堂で夕食は なごやかに始まっていた。

メニューは牛ステーキと、ご飯。
コスタリカのご飯は豆ご飯(もち米でない赤飯が一番近いイメージ)で、牛は 大きすぎたが、味は素朴でよかった。 あまり食物のおいしい国に行った事のない俺にとって合格点を軽くクリアできる 味だった。

最初は日本に興味があるというガイド君と2人で食事していたのだが、段々輪が 広がっていった。
メンバーは、ガイド君・ツアーで一緒になった親父と中学生の娘と娘の友達、 そしてホテルの従業員の若者が3人。
みんな日本について、好印象を抱いてくれていて、色々聞いていいかと言われた ので、喜んでいた。

日本について誰かがスペイン語で聞くと、ガイド君が英語に訳してくれて、 それに俺がたどたどしい英語で答え、それをまたガイド君がスペイン語に訳して くれてみんなが理解するという、外タレのインタビューみたいな形式で会話が 成り立っていた。

コスタリカには日系の移民の人達が多いせいか、「おしん」が繰り返し放送されて 全員が「おしん」を見た事があると言う。
そこまではよかった。
しかし、彼らはあれを現在の日本の田舎だと思っていたらしく(特に女子中学生 2人)、まずは何故俺が欧米人と同じ服装をしているのか?日本に帰ったら着物 を着ているのか?から始まった。
根が正直で善良な俺は、ちゃんと説明をする。
今の日本人の服装は欧米と一緒で、元々の民族衣装である着物を着ている人 はかなり少ない事、コスタリカでも民族衣装を着てる人は今は少ないっしょ?と 答えた。
一同「ほー。」その後は、定番の質問のオンパレード。

ハラキリは今でもやるのか、ゲイシャガールはどんなとこにいる、 サムライスピリットとは何だ、など、よく聞かれる事柄。
その後は、コスタリカに来るのに何時間かかるのか?
20時間位と答えたら、ヤングチームはたまげていた。
ひょっとして日本がどこにあるのかは知らない?
そして、航空券はいくらした?
(この質問、今までの旅行で10回以上は聞かれた。)
ここで値段を言うとどびっくりの声が聞こえてきて、そこからしばらく日本の物価 の話。

彼らが一番驚いたのは、日本には地下を走る電車があるという事だった。
(日本だけにある訳ではないが。)
コスタリカには鉄道がない。
正確にはあるが、運行していない。
(今は運行してるかもしれないが。)

ひとしきり話した後(ここからが本題)、みんな何故かちょっと小腹がすいたね、 という話になり、ギャル達はデザートを、おやじ達は酒とつまみという食後の世界 に入り始めた。
おやじが、ビールをおごってくれた。
ホテルの従業員は、魚介類のカクテルをごちそうしてくれるという。
(一応解説するが、カクテルといってもマルガリータとかではなく、魚介のマリネ的 料理である。)
この国に来てから魚介類を食ってなかった俺は、牛で腹満タンにもかかわらず 喜んだ。 出てきたカクテルには、白身の魚と刻んだ野菜、そしてオレンジ色の コマ切れた貝が入っていた。
いただきまーす。

口に入れた瞬間、不覚にも「おえっ」となっていた。
最初は、グラスをきちんとすすいでないのだと思った。
(マルガリータなグラスに入っていた。これが名前の由来か?)
従業員が怒られたら可哀想なので、フォークをのどの奥まで入れすぎておえっと なったというジェスチャーでごまかした。
なので、グラス付近でなく中央にある貝を口に入れた。

おえっ。・・・犯人はお前か。

日本人なら絶対違和感がある味がした。
その貝は皿洗い系の洗剤の味がするのである。
飲み込めねえ・・・。
ビールで流し込んで、周りの人達に正直に言ってみる。
「これ、めちゃめちゃ好きじゃない。」

お茶の間大爆笑。ガイド君が気を遣って貝を全部よけてくれたが、ケミカルな 柑橘臭はすっかりしみていて、何を食べても爽やかに香る。
一瞬ひょっとして騙されているのかとも思ったが、ガイド君はよけた貝をもりもり うまそうに食っていた。

駄目っす、ごめんなさい。これ以上食べたら絶対に泣いちゃう。
または吐いちゃう。
丁重に謝って勘弁してもらったが、彼らはとても意外そうな顔をしていた。
俺の中で二度と食べたくない食物第1位。
(5位までは、このHPのどこかに必ず登場するはず。)
口の中の香りは、何を飲んでも食べても消えず、部屋に戻って歯を磨いている 時も続いていた。
洗剤で歯を磨いているような感じがして、いつもよりたくさんおえおえっとなった。

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アメリカ上陸