<友よ、安らかに眠れ。>

俺が旅に出ると必ず行こうと決めている場所がいくつかある。
景色が見渡せる高い場所(ばかだから)、本屋、マクドナルド(有無の確認も含む)、 そして、これは一番一般的だけど、スーパーマーケットである。
スーパーに行くと、その国の人達がどんなものをどんな値段で買ってるか簡単に わかるし、何故か観光客でなく、現地人になったような気分も味わえる。

初めてプラハのスーパーマーケットに行った時に見つけたチョコレート(チェリー ブランディと実入り、小さな箱にビー玉大のが3粒位入ってたと思う。)がすっかり 気に入った俺は、毎日夕方にスーパーに行くのが日課になっていた。
この日もチョコを買う為、スーパーに入った俺は、何とそのチョコレートのお徳用 大袋を発見。
ひょっとしたらこれが、チェコ一番の感動だったかもしれない。
さすがにそんな事はないか。

それを早々にカゴに入れた俺は、ホテルに帰ってそれを貪り食いたくなって、 夕食はここで買って帰ってホテルの部屋で食おうと思って、生鮮・惣菜系の 売場に向かった。
そして、豪勢に生ハム(塩辛かったー。)とサラダと、パン。

あともう1種類位何か欲しいなと思ってきょろきょろしてると、片隅に歌番組の セットのようにもうもうと冷気の煙が湧いている場所があった。
直感でアイスクリームと思った。
冷凍庫がよくお菓子屋の店先にあるような形だったし。
くそ寒いプラハでアイスクリーム、それもオツだね。
と思ってその冷気の元に吸い寄せられるように向かう。
そして、中を見ようと冷気を手であおいで除けて冷凍庫を覗き込むとそこには。

火サスだと誰か死んでたりするかもしれないけど、そこにいたのは何十種類か のお魚ちゃん達だった。
最初は、チェコは海がないから魚は全部冷凍なのかななどと、単純な考えでいたが、 チェコの人はどんな魚を食べるのかと、じっくり見ていると疑問が心の中から 湧き出してきた。

これ、本当に食うのか?

まず、魚は全部死亡時そのままの状態で、袋やパックなどに入る事なく、冷凍 されていた。
種類毎の仕切りもなく、ばらばらと入っている。
ここから好きな魚を取ろうと思ったら、凍ったお魚達を鷲掴みにしてよけて いかなきゃならない。
ところが、明らかに何匹かが氷で連結されている部分あり。
しかもそこにはよっぽどの大家族じゃなきゃ無理でしょう的な大物も。
最大は1m50cm程のやがらみたいな魚。
死んだ時の状態そのままの若干くねった形で入ってた。
そして、照明の加減もあるのだろうが、魚特有のツヤなど確認できない位、 みんな厚い霜と氷の層に包まれている。
輪郭自体が確認できない者もいる。

全体的な印象としては、水族館かどっかで死んだ魚を種類構わず毎日もらって きて、ぽいぽい入れ続けています。
という感じ。賞味期限なんかないよ。
おそらく下層の方の魚達は、年単位での滞在でしょう。

それまでのチェコでの食事時の記憶が走馬灯のように駆け巡る。

・・・チェコでは魚は食ってない。よかった。
俺は20分位その冷凍庫の前であれこれ考えていたと思う。
スーパーに客はいっぱいいたけど、その間誰もここに近付きもしなかった事から 考えて、チェコの家庭では魚を食べるのは一般的ではないのか、はたまた昔の 日本のように、新鮮な魚を俺の気づかない場所にある魚屋で買っているのか。
(街中で魚屋を見た覚えがない。)

ここであなたの旅に役立つ、ミニ情報。
チェコの魚はあまり新鮮ではないようです。
この国で暮らす事になったら、スーパーで魚は買えないと思って下さい。

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気絶した。