<パブロと僕>

今まで旅行して、出会った現地の人々の中で一番好感を持ったのはエクアドルでのガイド、パブロだった。
空港で初めて出会った時、こんな少年がガイドって大丈夫か。と正直思った。
でも、聞いてみると俺より年上らしい。
歳より若く見える外国人を初めて見た。

初日と2日目は、空港とホテル間の送迎だけだったので、そんなにたくさんは 話せなかったが、パブロはガイドとして色んな仕事ができるように英語の学校に 通った事、そして今はドイツ語の学校に通ってる事、俺が日本でやってる仕事の 事なんかを話した。

そしてガラパゴスを旅してキトの空港に戻ってきた時、空港に迎えに来てくれた のは再度パブロだったのでほっとした。
最初の観光はエクアドルなら赤道って事で、赤道記念碑。
赤道に立った俺の写真を撮ってくれると言う。
が、<旅の記録>に載せてる写真からもわかるように、パブロの撮ってくれた 写真は写真に指が入ってたり俺が中途半端に切れてたりと、まともな写真が 1枚もない始末。
ドイツ語の後は写真の撮り方を勉強しようね。
そこでも色々話していて、俺はパブロにエクアドルの紙幣が手に入らないか 聞いてみた。

銀行行け。

と言われるかもしれないが、エクアドルは自国通貨スークレを廃止して、国内で 流通してるのはアメリカドルという特殊な国である。
それがかなりショックだった。ドルなんて興味ねー。アメリカドルは世界でも有数のつまらん紙幣だと思う。
特に5,000スークレ札は、昔のガイドブックにはガラパゴス特有の動物達が 印刷されていると載っていて、それが記念に欲しいと思っていた。
ところが、土産物屋や郵便局とかで売ってるのはコインだけ。
それでパブロに聞いてみた。

パブロは「今はかなり手に入れるのが難しいんだ。」とちょっと困った顔になった が、財布の奥から1枚の札を取り出して、
「お金が変わる時に記念に取ってたんだ。」
と、5,000スークレ札を見せてくれた。
見せてもらった札はかなり使い込まれてはいたけど、動物達ははっきりと確認 できて、かなり感動ものだった。

見れた事でかなり満足した俺は、パブロにお札を返そうとしたが、「あげるよ。」
と言ってくれた。
パブロが大事にしまってたのもわかったし、見る事ができて満足してたので、 散々遠慮したのだが、
「日本から来てくれたんだから。俺は手に入る機会もまたあると思うから。」
何ていい奴なんだこいつ(彼の方が年上)。

俺は素直にパブロの好意に甘える事にした。
そしてそれは今も大事にアルバムに綴じている。

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