<素晴らしきかな、人生>

人生、生きててよかった。な話。

2回目の韓国は1人旅で、結構時間に余裕があった。
という事で、最近は全く買ってない服でも買おうと百貨店にやって来た。

店員も色んな人がいるものである。
最初から日本語で話しかけてくる鋭い人、最初は韓国語でも俺が日本人と わかると覚えている日本語を総動員してくれる人、構わず韓国語で接客し 続ける人、俺が日本人とわかると逃げてしまう人。
最初に入った店の店員は、構わず韓国語で接客し続けるタイプの人だった。
俺が彼女の言ってる事がわからなかったり、答える韓国語がたどたどしくても 笑顔をたやさない人だった。
この店でシャツを1枚買った。
それでちょっと安心した俺は他の店もまわってみる事にした。

トミーヒルフィガー。
名前は知ってたが、近付いた事のない店である。
「韓国初上陸」
と案内が出ている。
笑顔の爽やかな女性の店員が韓国語で話しかけてきた。
とりあえず、シャツを探してると言ってみる。
彼女が持ってきたのは、青地に赤のストライブのシャツ。
着てみて下さい。と言われ、とりあえず着てみて鏡を見ると、鉄板でこんな店員 どっかのビデオ屋にいる。
(類義語:俺が野球帽を被ると、ガソリンスタンドの従業員になる。)

ちょっと迷ってる風の俺を見て、彼女は色んなシャツを持ってくるので、その都度 着てみるのだが、何だか俺には派手すぎるように見えて、落ち着かない。
そうこうしてると、同じく笑顔の爽やかな男の店員が無地のシャツを持ってきて 「これはどう?」
それを着てみる。
いつもと変わり映えしないのだが、違和感はない。

とりあえず最初のシャツと無地のシャツを持って、2人に
「どっちが似合う?」
と聞いてみる。
彼女はストライプ、彼は無地がいいと言う。
2枚買わせる作戦か?
と最初は思ったけど、どうやらシンプルに2人の意見が違った様子。

1枚2、3000円なら2枚買う手もあるが、ここはトミー、1枚8000円也、2枚買う 財力はない。
最初のストライプのシャツをもう一度羽織ってみる。
「それもお似合いですよ。」と彼が言う。
鏡を見ながらどうしようかなと思ってた時、彼女が一言彼に言ったのだが、 「ペウ」という単語が聞こえたような気がしながら、ふと何の気なしに彼女の方を 見ると、彼女があせって下を向いた。

そのリアクションから俺の聞き間違いではないだろう。
彼女は彼に「俳優みたいにかっこいい。」
と言ったのである。

そんな言葉、生まれてこの方言われたことない。
そして韓国語を勉強してて、これ程よかったと思った事もない。
5分後、笑顔の彼と彼女に見送られながら、俺は今までの人生で最大級の幸せ とそのシャツと共に店を後にした。
韓国に移住するかもしれない。

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