<ルームスービス>

メリダの街でハイアット・リージェンシーに泊まった俺は(強調しすぎ)、初日こそ 落ち着かなかったが、宿泊料を前払いした2日目からの2日間、すっかり金持ち 気分に浸って、プールで優雅に泳いだり、部屋の中のミニバーで酒盛りしたり、 カン違いに過ごしていた。

そして最終日の夜、とうとう憧れ?のルームサービスを取るという暴挙に出た。
(こうやって書いてるみると、全然リッチじゃないな。)
とりあえず備え付けのメニューを見て、何度も何度も今まで繰り返した事のない 回数の検算をして、深呼吸した上で、電話をかける。

電話に出たのは、明らかに英語圏じゃない英語を話す怪しげな男。
注文したいのは、スパゲッティ・ハンバーガー・紅茶。
街中のレストランとかで注文するならものの5秒。
メニューを指差せばいい。しかし、上流階級のお食事は甘くない。

というよりメキシコは甘くない。
トマトソース。この単語が通じない。
失敗@「トゥメゥエイトソウス」
「タコス?」
失敗A「トメイトソウス」
「ステーキ?」
成功「トマトソースやっちゅうとんねん。」
「Si,Si.」
何故か日本語でしゃべったら、わかったわかった言うてる。
この間、行数は短いが所要時間は約20分。こんな事なら、素直に外に食いに 出てればよかった。

と思う暇もなく、5分弱後「ピンポーン。」
は?ドアを開けるとボーイが無言で入って来て、布がかかった大きな盆を置いて 去っていった。
(希望としては執事風のおじさんがやって来て、ルームスービスと鼻にかけた 発音で言って欲しかった。)

緊張の一瞬。布を取ると、フタをしてる皿が3皿・・・。
嫌な感じと共に1つずつフタを取っていくと、サラダ・ステーキ・ケーキ(登場順)。 「TEA」すら通じないこの国か、俺の発音を呪った。
そして渋々再度電話。

また出たさっきの怪しい男に向かって、精一杯、頼んだものと違うもの が来てるから、ルームナンバーを間違えたんじゃないかと、伝えてみた。
「Si,Si.」
・・・今度は、向こうから電話を切りやがった。

待つ事30分。悲しみに打ちひしがれながら、ステーキの付け合わせのポテトを 食べ始め、3本位食べた頃「ピンポーン。」小窓からのぞくと、別のお盆を持った 一言もしゃべらないボーイが立っていた。
無意識に彼を部屋に入れる前にステーキ達の皿にフタを被せ、布をかけた。
彼は中身を確かめもせず、俺のオーダー通りのものを置いて去っていった・・・。

付け合わせのポテトが1本しかない、冷たいステーキのセットを誰が召し上がったかは 知る由もないが、ハンバーガーに付いていたポテトが熱々でおいしかった事は 言うまでもない。
ちなみにこの3品、お値段は合計で日本円で750円。
ごちそうさまでした。

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出ちゃいました。