<どんどん長くなる旅路>

ナミビアから日本までの道のりが長い事はわかっていた。
わかっていたが、予想していなかった理由で長くなるのはまた別の話。
予定では、ヴィントフック−ヨハネスブルグ(泊)−香港(泊)−台北(経由)−名古屋 と3日間かけて帰るようになっていたので、道のりは長いが気持ちの上では楽だと思っていた。

初日:ヴィントフック−ヨハネスブルグ
ヴィントフックの空港でガイドのオルランドと別れてゲートにやって来た俺、出発まで時間があったので 友人達への土産選びをする。
それが思ったより時間がかかり、買い物を終えた頃には出発30分前。
もう搭乗始まってるよな。と店の外に出たが、ゲートには全然並んでいる気配がない。
・・・出発の電光掲示板に近寄ってみた。おや?出発時間が表示されていないぞ。

場内アナウンスに耳を済ませてみると、俺に英語力がなかったのかもしれんが、遅れる理由の説明はなく、
「着いたら連絡するし、早く乗ってな。みんな乗ったら飛び立つし。」
と、ざっくりした様子で説明がなされていた。
ま、いっか。今日はヨハネスブルグまで2時間ちょっと飛んだら、ホテルに行くだけやしな。
1時間程遅れて飛行機はやって来た。

飛行機に乗るが、日本の航空会社のようにお詫びや、理由の説明などは一切なく、英国航空は普通に 飛び立った。ひょっとしてこの路線は遅れる事が当たり前なのかもしれん。
スチュワーデスの女が白人以外の客には非常に丁寧さの欠ける対応をしていたが、短いフライトゆえ そんなに気にならなかった。

2日目:ヨハネスブルグ−香港
この日も飛行機が遅れていた。しかもこの日も飛行機が遅れる事がわかったのは、出発30分前位。
飛行機が遅れる事は、もっと早くわかるんちゃんうか?と多少いらつき気味ではあったが、30分程の 遅れという事で、我慢する。
ゲートに行って列に並ぼうとすると、列が2つある。ZONE1とZONE2。

あ、航空券に貼ってあるこの紙の番号のとこに並ぶんだなと、俺はZONE2の列におとなしく並んだ のだが、中国人達は、違う列に並ぶなんつーのは序の口で、平気で割り込みをする者多数、あげくの果て には、まだ搭乗が開始していないのにゲートの入口に行って、係員にまだ。と言われて逆ギレする者、 俺らの便の搭乗が開始した途端、突っ込んできて列を無視し、先にゲートの入口へ行って、係員に 順番守れと言われて逆ギレする者など、多彩なパフォーマンスを見せてくれる。
飛行機に乗る順番を守らない方法が何種類あるのかがわかった。

それはまだよかった。
俺は今回も窓側の席を取っていた。2人掛けの席なので今までそんなに隣りの人間にストレスを溜める 事はなかったのだが、今回は違った。
俺の隣りに来たのは、黒人の太った女。白人や黒人にはよく、俺達が見た事ない位のデブがいる。
その女は身長150cm代だと思うが、ケツは俺のケツ2つ分はあり、推定体重120kg程度。
席に尻が何とか入り、座ったのだが、ナチュラルに座った状態で肩が当たる。
しかもそこそこ俺の腕に圧力がかかる。
日本でそこそこ太っている人の隣りに座ってもこんな事はまずない。
おそらく黄色人種より、体重に対する体積が大きいのだろう。つまり肉及び脂肪がカスカスなので、 体重の割に体がでかい。風船女。
しかも荷物をたくさん足元に並べやがって、俺のスペースが非常に狭小な事になっていた。
俺は心が広いのでそこまでは許した。問題はそこじゃなかった。

俺が香港でブチ切れたのにはここまでに大きな3つのストレスがあった。

@ 飛行機が風の都合か何かで、バンコクに一度降りて給油すると言い出した。
あ、お前のせいだな、風船女。それはもしバンコクに降りた時、一度外に出してもらえたら、 何のストレスにもならなかったと思う。バンコクのできたばかりの新しい空港を見る事ができたら。
だが、保安上の理由とかで給油の間は機内待機。
これで予定の時間より2時間遅れ。

A 機内で眠る事ができなかった。
普通に俺の体調の具合か何かで眠れなかったら、ストレスを感じたりはしなかったのだと思うが、 俺が眠れなかったのは、隣りの風船女のせい。
酒を飲んで眠くなってきたので、うとうとは何度もするのだが、その度にこの女が大きな身動きを するので、押し付けられている肩が回転し、俺の身体が揺さぶられる。
冗談ではなく、俺の身体が90度回転する程の衝撃で、そんなのをくらって眠っていられる奴など いるはずがない。
風船女の肩の影響をできるだけ避けようと窓側に身体をぴったりつけてよけてみたが、よければ よけるほど、風船女は自分のスペースを確保してくる。
結果、いつまでも俺はうとうとする度に、こいつに肩を揺さぶられ目が覚める。
ムカついたので、風船女がうとうとした時にわざとトイレに行くのに席を立ったり、こっちから 肩を揺らしてやった(子供)。
その度に風船女も目を覚ましていたので、この勝負はおあいことする。

B 荷物が飛行機に載っていなかった。
といっても、まだ程度は軽い方だった。
かなり寝不足でイラついた状態で香港に到着した。早いこと今日のホテルを決めて、落ち着こうと 思ったのだが、ターンテーブルから俺の荷物がいくら待っても出て来ない。
空港の荷物クレームカウンターに行くと、詫びの一言もなくあっさりと、
「この便のいくつかの荷物は間違って、後から来る南アフリカ航空の飛行機に載っちゃってる んだよねー。」
と答えられた。
キレた。

おい、こら。お前らには仕事に対するプライドっつーもんがないのか。ないからそんなへらへら してられんのか?それとも南アフリカの空港で起きたミスはてめえらには関係ないと思ってんのか?
荷物自体に金目のものはないが、友人達への土産が入っていて、それだけは失くなって欲しくなかった。
という事で、俺の精一杯の鋭い口調で、そして一番低い声で、発音にも注意して、
「So what?」
(自分では、だから何だよ?てめえらの都合なんざ俺に押し付けるんな。早く荷物を出すか、詫びやがれ、 バカ野郎。の意味がこもっている。)
と静かに係員に言う。
そもそも使い方合ってるか?

だが、俺が怒っているのはわかったらしく、別の係員が出て来て、すみません。と謝った後、あなたの荷物が 南アフリカ航空に載っているとは100%確実に言えないのですが、ここで待ちますか?と聞いてきたので、 待つ。と答えた。失くなっていたら、お前ら全員殺す。
キャセイパシフィックの社員が全て礼儀知らずな訳ではなかったようで、ほっとした。
結局、荷物は無事に南アフリカ航空の飛行機から出て来たのでよかったのだが、待ち時間は3時間強。
朝8時頃に空港を出ている予定が、結局空港を出られた時には、午後2時をまわっていた。

もう街を歩き回ってホテルを探す気力がなく、空港に隣接する超高級ホテルに泊まった。
香港の街に出ても歩き回る気力はあまりなく、時間もあまりなく、何年ぶりかなので地理もよく 覚えていなかったので、服を買って、香港俳優達の手形ロードを見て、ホテルに戻った。

3日目:香港−台北−名古屋
帰りは直行便じゃなないのはわかっていた。
だが、台北も台北からの客を乗せるだけで、俺達は飛行機から出られないだろうと踏んでいたので、 香港の空港で、中国茶を購入した。
ところが、台北の空港で降ろしてくれ、しかも台北の空港内で買い物までできる事になっていた。
台湾に来て凍頂烏龍茶を買わないはずがない。
前回台湾に来た際に購入した茶はもうなかった。
中国茶はダブって結構な量になったが、それだけが嬉しい誤算だった。

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