8日目
オコンジマゲストファーム−ヴィントフック−ヨハネスブルグ
この日の朝は獣の鳴き声は聞こえなかった。
それでも希望を捨てきれず、早い時間に前日の展望台に向かったが、残念ながらライオンは いなかった。
オコンジマ最後のアクティビティはブッシュマンウォーキング。昔の先住民の人達の生活の 方法や知恵を勉強する。
んー、申し訳ないが、動物を見に行くアクティビティを選択すればよかった。

俺、場違い? ロッジからほんの少しだけ車に乗って、保護区に入る。入るとすぐに、素晴らしいものが 見えてきた。朝もやに霞んだサバンナの向こうにはオリックスの群れがいる。
うわー、かっちょいー。オリックスかっちょいーなー。

しばらくそこからみんなで群れの方を眺めていた。
・・・ん?
何十頭といるオリックスの中に一頭だけ、毛色の違う子がいるぞ。
何とかという名前でガイドが説明してくれたが、おそらくヌーだよな。 バッファロー?何かはわからんが、何故か何食わぬ顔でオリックスの群れに混じっていた。 しかもオリックス達も特に仲間はずれにする訳でもなく普通に接していた。・・・何で?
草食動物っちゅうもんはその辺、結構融通利く奴らなのか?
これが非常に不思議だった。が、それをガイドに聞く程の英語力は無く、しかもその間に 群れは遥か彼方の方に走って消えて行ってしまったので、それを知る由は無い。

俺達を食べちゃう? 今回のガイドは、黒髪黒目の白人のイケメン。
こいつの気に入らないところは、同行していた地元民のガイドに対する態度だった。

このアクティビティは、保護区内の所定の設備がある場所まで歩いて行き、そこでガイドが ブッシュマンの生活や道具の使い方を説明する。その後その地元民のガイドが実際に道具の 使い方や道具の作り方を実演するという形になっていた。
その際のブッシュマンに対する態度が何とも嫌な感じだった。こいつの英語もなまっていた 事からして、こいつもアフリカ生まれ白人か。
その空気は全体に漂っていて、最初から最後まで雰囲気がよくなかった。

俺に対しては見下すというより、得体のしれないものを見るような顔をしていた。俺は前日と 同じく無表情という対抗手段で望んだ。前日のバカと同じように。
こいつに対してもこれは効き目があったと思う。俺を見る目に少し怯えが見えた。
黄色人をなめんなよ。白人。それから地元民に対する態度も改めろ。

食われるーっ 学習の内容は面白かった。
動物を捕らえる為の罠の作り方では、実際に指を使って罠に引っ掛かってみたり、ブッシュマン 達が作る楽器の作り方や使い方、そして火の起こし方では思ったより早い時間で火が付いた。
一番印象に残ったのはロープの作り方。これは使える。俺が無人島か何かに不時着した時に。

テレビ番組で見た事はあるものの、実際に間近で作っている所や使い方を実演しているのを見ると 違うね。限られた材料からこんなによく考えられた道具達が作られる事に非常に感動した。

・・・すみません。
本当はそんなに興味が持てませんでした。だって動物まだまだ色々見たかったんやもーん。
でもロープの作り方が面白かったのと、罠に引っ掛かってみた時はあまりの見事な出来栄えに 非常に驚いたのも事実だよ。

アクティビティが終わって、ロッジに戻って来た。これでナミビアでする事は終わった。
後はここから空港に行って、南アフリカまで移動する。短いようで長いようで、でもあっという 間だったなー。もう少し動物を見たかったが、仕方ない。未練が残る位の方がいいだろう。 よし帰ろう。

という事でとっととロッジを後にした。・・・したのだが、走り出して5分。
あー!
突然オルランドが叫んだ。
昼飯セットをホテルの人に作ってもらったのに忘れた。
いや、別に昼飯なくてもいいんやけどー。
だが律儀なオルランドは戻ってランチを受け取る。中身はサンドイッチとジュースとお菓子と 果物と・・・、これは何人分の昼食ですか?
しかも2袋って。

青い草原 オルランドがまた音楽をかけながら、気を取り直して走り出した。彼の中でこの忘れ物事件は 非常に恥ずべき事だったらしい。何回も謝られたが、全く何とも思っていないので、どう反応 していいかわからん。
飛行機の時間に間に合わないというようなぎりぎりの時間で動いていたら、ちとキレたかも しれんが、結構余裕あるから問題なし。

少し車を走らせると、ここに来た時と同じように青い草原が広がっていた。
この花もゆっくり見たかったなー。と思って眺めていると、急に車が止まった。オルランドの方を 見ると、この辺が一番きれいだな。ゆっくり見て行こう。と言う。
あ。覚えていてくれたのか。
ちと嬉しかった。そしていい歳こいたおっさん2人で草原に座って、野に咲く小さな青い花を しゃがんで眺める。
ちょっと変。
俺も日本でなら、お花がきれー。なんっつー事はあまりないが、今回のヴィントフックの紫の ジャカランダとこの草原の青い花は、そういうとこも超越したところで美しかった。

オコンジマを後にした俺達は、真っ直ぐ空港には向かわずに、一度ヴィントフックの町に戻った。
何故かというと、オルランドが帰る前に旅行会社の事務所に寄って欲しいと言われたからで、 何で事務所だ?と思ったが、多分俺がご機嫌で日本に帰るという事をボスに見せたいのだろう。
その要望には答えた。つもりだよ。
ボスは予想通り白人だった。いい人ではあったが、根掘り歯掘り聞いてくるので、何が知りたかった んだろう?わからん。愛想100%で答えといた。

その後は空港でちとオルランドとしゃべって別れたのだが、その時の事も<旅の出来事>に。
ナミビアから日本に帰るまでに南アフリカで1泊、香港で1泊して帰ったので、非常に時間は かかったのだが、疲れはしなかった。怒りはしたが・・・。


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