<彼女のお仕事>
上の写真はイメージであり、実在の彼女の職場とは
一切関係ありません。
ポルトガル北部、ポルトワインで有名なポルト。
せっかく来たのに1泊2日の間、ずーっと雨だったポルト。
忘れられない場所が駅の構内にあった。
ポルトをあとにして首都リスボンに戻ろうと駅にやってきた俺は、トイレに行きたく
なり、駅員にトイレの場所を聞いた。
駅員が指差したのは、駅の外れにあるトイレにしては大きすぎるような円筒形の建物だった。
(上の写真から、天辺を削って、2階の窓を埋めた感じをイメージして下さい。)
とりあえずそこに近づくと、微かに音楽が聞こえていた。
とりあえず入ってみた。
・・・何か違和感が。普通に壁沿いに洗面台・小用スペース・個室があるのだが、
入口のすぐ右手に2階に上がる階段があって、その階段の下に何故かデパート
等でよく見るような形のガラスのショーケースが置いてある。
そこには何があるのかなと近づいてみると、ショーケースの後ろ、階段のかげに
推定20歳代のおねいさんが座ってこっちを見てた。
さっきの音楽は彼女の傍らにある、ラジカセから流れているものだった。
ちょっと驚きながら後ずさりして、好奇心から2階へと上がってみた。
そこには壁沿いに辺り一面見渡す限り個室の広がる世界。
その時は小用だったけど、でも1階にまた下りてって用を足すのもちょっと変かと
思って、個室に入って、鍵をかけた。
(今思うと、2階は婦女子用だったのかもしれない。)
その途端、心なしか音楽がよく聞こえるようになった気がした。
誰かが階段を上がってくるような音がして、2階の別の個室に入って鍵のかかる音がした。
すると、音楽がさらによく聞こえるようになって・・・、!!!
あの音楽は彼女の純粋な趣味ではなく、彼女の「耳栓」でもあったらしい。
そして俺が手を洗っている間に列車が1台着いたようで、俺と入れ替わりに
大勢の人がトイレに入っていくと、一瞬の間が空いて、トイレはディスコへと
変貌を遂げていた。
(おそらくラジカセの音量は最大)
それから約5分後、ポルト駅はいつもの静寂を取り戻した。
俺の乗った列車が出発するかしないかの時に、もう1台の列車が到着。
俺はまた大音量で響き渡り始めた素晴らしい音楽を背にポルトの街から去った。
この時、俺の心の中は彼女に対して「頑張れよ。」という気持ちでいっぱいだった事は言うまでもない。
(ちなみに彼女が何を売っていたかは、まじまじと見る事ができなかったので、もう知る由もない。)
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