<幻のワイン>

幻のワイン。
と言っても「至高のワイン」でも、「究極のワイン」でもない。

それは今はわからないが、当時はある理由があった為に、決して日本では飲む事の できないワインだったのである。

出会ったのはポルトガル、リスボン郊外の街カスカイス。
ヨーロッパ最西端のロカ岬に向かうバスの出る街である。
リスボンから電車で着いたこの街で腹が減ったので、昼食にしようと思い1軒の レストランを訪ねた。
ポルトガルは他の国々と比べて、1人で気楽にレストランに入れる国だったという 記憶がある。

そこで、具は忘れてしまったのだが、リゾットを頼んだ。
出来上るまでの間、店のおばあさんと話をしていたのだが、
「どこから来たの?」
「日本からです。」
「え!!そんな遠い国から来たの!!」
と、非常に驚かれたのが印象に残ってる。
当時は日本人観光客はとても少なかったのだと思う。

今は結構ツアーもあるみたいだが、日本から直行便はないし、大したガイドも 出てなかったし、6泊7日の日程中、全く日本人をというか黄色人種旅行者を 見かけなかった。

当時はレアな旅行先というイメージを俺自身も持っていた。
その時は、日本からイスタンブールで降りてマドリッドで降りて、という形で2回の 寄り道の後に来たのであまり距離的な遠さは感じなかったのだが、日本から 直接来ようとすると17、8時間位はかかるか。

でも多分店のおばあさんは、もっともっと遠いイメージを持っていたのだと思う。
せっかく日本から来たのだったら、ポルトガルならではのものという事で、あるワインを薦められた。

それがそのワインである。

それはポルトワインみたいに有名なものではなく、「ヴィーニョ・ヴェルデ」というワインだった。
その頃は(今もだが)ワインには全く詳しくなく、その名前が銘柄なのかぶどうの 種類なのか全くわからなかったが、おばさん曰く、とても微発泡な白ワインで 長距離の輸送に耐えられない為、外国にはほとんど輸出されていないという事 だった。
英語だったので内容は少し違うかもしれない。

そんな珍しいものならと頼んで持って来てもらったのは、緑の壜でネコか何か 小動物のマークが入ってたと思う。
とても軽くて飲みやすくて、頼んだリゾットと共にとてもおいしく頂いたと思う。
その証拠にロカ岬までのバスの道中でとても幸せに眠れた。
俺の旅行人生の中で数少ないヒット。

今は日本にも輸出されているかもしれない。

久しぶりに飲んでみたい気がする。
でも、今度ポルトガルに行った時の楽しみに取っておきたい気もする。

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