<彼らのお仕事>

マクドナルド。

ありふれた外国人の名前だが、恐ろしい魔力を持った名前である。
モスクワにロシア1号店ができた時、北京に中国1号店ができた時、 人々が行列を作っている様子がテレビで映し出されたのを見た事がある。
中国では店の外で列を作って並んでても、店に入ると無法地帯と化していたが。

現地の物価でいうと、少し高級めなレストランと同じ値段にもかかわらず人波が 押し寄せていた。
日本で1号店ができた時もこんな感じだったんだろうなと思いながら見ていた。
資本主義の象徴、マクドナルド。

当時のルーマニアにもその資本主義の波は押し寄せていた。
たまたまブカレストで泊まったホテルのビルの1Fには、ルーマニア1号店か 2号店位のマクドナルドがあった。
行列はないが、1日中、客足の絶えない様子。
元々外国に行くと必ずマクドナルドに行く癖のある俺が、足を運ばないはずは ない。

まず、店内に入って気づいたのが、店員が異様に多い。
材料調達が十分ではないのか、ハンバーガーは3種類だけ。
ハンバーガーとチーズバーガーと、フィレオフィッシュ。
ビッグマックなんて応用編はない。5段積みはまだ無理か。
シェイクも1種類。気になるお値段は、ハンバーガーが日本円で100円位。
シェイクは80円位。
バス代が12円のルーマニアでは結構なお値段といえる。

とりあえずハンバーガー・フィレオフィッシュ、ポテトとコーラを買って着席。
早速食べてみよう。
・・・何か微妙に味が違う。
まずポテト。おそらく、揚げ時間がまだ一定じゃない。
マクドナルドのくせにフライドポテトは白くて柔らかかった。マクドのポテトは さくさくじゃないと駄目だー。
ま、だが日本でも下手な奴がやるとそういう事もあるしな。

このフィレオフィッシュの違和感は何だろう?
タルタルソースの味が違う。ヨーロッパだもんな。
全体的に感じるのは、包装紙が匂うことだった。
その匂いがハンバーガーに移ってる。
ポテトにも。ちょっと香水みたいな独特の匂い。

これは何とかしなきゃいけないだろう。とか1人でにわか評論家になりつつ食っていたのだが、あ。 ポテトを落とした。
・・・と思って床を見たのだが、落ちたはずのポテトがない・・・。
あれ?どこに行った?おかしい。懸命の捜索活動にも関わらずポテトは消えた。

あ。
あーあ、また落としたよ。と思って下を見た瞬間、何かが床下を通り過ぎるのが 見えた。
その物体が通り過ぎた方向に目をやると、やたら存在する店員の1人が。
そして手にはモップ。

大げさでなく、3テーブルに1人はいる位の数の店員。

彼らはおそらく仕事があんまりないのだろう。
やみくもに掃除だけをしているので、店内が異常にクリーン。
店の真ん中でお盆でもひっくり返そうもんなら、おそらく4、5人の掃除店員に 囲まれてしまうだろう。

帰りがけにトイレに行ったが、トイレ専門の店員もいて、用をたす人が1人いた 毎に掃除するので、トイレも、おそらくマクドナルド史上最高レベルのきれいさ。
ルーマニアの人達がこの勤勉さを失わなければ、この国は繁栄を極めるはず。 など思いもせず、ただ単に「変な国」と思いながらマクドナルドを後にした。

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