<世界のお嬢さんから>
たらったたーらたーららーたーらー。
(世界の車窓から風)
待望のお嬢さん編、開始。
もう声を掛けられるのはおっさんじゃねー。
但し、今回は純粋なナンパではない。
俺はある夜、上海のメインストリートの1つ「南京東路」を歩いていた。
すると急に前から来たお嬢さんとぶつかった。
「何とかかんとか」。
えっ?中国語で言われてもわからん。思いっきり「理解不能」っつー顔をしてると、
お嬢さんは即時に、
「あ、すみません。中国の方かと思って。」
と日本語で言ってきた。
ここまでは普通の会話だと思うのだが、
「あ、日本人です。」
と俺が言うと、
「そうですか。私日本語勉強してるんです。」
「日本語上手ですねー。」
最近の中国人は「ニポンゴペンキョウシテルアルヨ。」とは言わないんだな。
前から言わねーか。
そして俺が立ち去ろうとすると、このお嬢さんが
「日本語教えて欲しいので、お茶飲みに行きませんかー。」
えっ?逆ナーン?
などと思う事も無く、根拠はないが何か胡散臭いものを感じていた。
なのでお断りさせて頂いた。
この時はわからなかった。これがビジネス的な勧誘である事は。
このお嬢さんは服装も地味、顔も地味で、どうしても水を扱う商売の人には見えなかった。
ところが、このお嬢さんと別れて1分後、
「お兄さーん、私達とお茶飲みに行きませんかー。」
と2人組のいかにもなお嬢さん達が声を掛けてきた。
それで気付いたのである。おそらくさっきのお嬢さんもこのお嬢さんと同業者だった事に。
その後も何人も何人もうら若いお嬢さん達が「お茶飲みに行きませんかー。」と
声を掛けてくる。
このお嬢さん達について行けば、おいしい中国茶が飲めるというのなら、ほいほいついて
行ったと思うのだが、おそらくついて行って飲むものはお茶じゃねーんだろ。
ひょっとしたら俺が飲ませるのかもしれん。
うっとおしい。
あまりの勧誘の加熱ぶりに段々キレてきた俺は、ある対応策に出る事にした。
それは「韓国人のフリ」である。
おそらく日本人である事がこの勧誘合戦を招いているのではないかと、推測したのである。
そして実行した。
「お茶飲みに行きませんかー。」
「ムォラグ?」
「えっ?日本人じゃないんですかー?」
「アガッシ、ウェイレ?」
「えっ?お兄さん、お茶飲みにいきませんか?」
「チャルモルゲンヌンデ」
「日本人なんでしょ?」
「エイシ、シーバル」
と言い捨てて、その場を後にした。
これは使える。
その後、通り沿いのお嬢さん達からの勧誘はぴたーっと止まった。
そこで気が緩んだのが敗因だった。
元々この通り沿いにある中国茶の店に行きたかったのだが、通りを端から端まで
歩いても場所がわからんかったので通りに立ち止まって、ついカバンからガイドを
取り出して見しまったのである。
しかも「どこやねん。」と独り言付き。
そして再び歩き出した俺に、
「お兄さん、お茶飲みに行きましょー。」
とまた勧誘攻撃が始まった。
この日、俺がこの通りを歩いたのは1時弱だったが、俺に声を掛けてきたお嬢さんは
優に20人を超えていた。疲れた。
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