じわじわと照りつける日差しで地面は白く乾いていた。埃防止で通路に撒いた水はすでに乾き始めていた。まだ九時だというのに、テントの中に避難してさえ、息詰るような熱気だった。 それでも、雨が降らないのはありがたいことだった。少なくとも遺跡を守ることは考えなくてもいい。あと二〜三日。このふざけた行事が終わるまでは。 「夏に発掘なんてするもんじゃねーなぁ。」 俺はつぶやいた。一服いきたかったが、『教育上の配慮』から禁煙だとぬかされた。手持ち無沙汰で、仕方がないから茶を飲んだ。 「仕方ないでしょう。夏休みの自由課題なんですから。」 古河は首に巻いたタオルで汗を拭いた。手元のペットボトルは、既に半分ほどになっていた。 集合は九時半。作業開始は十時。昼まで作業して、一時まで休憩。三時までテント下の作業で、五時に解散。そんなスケジュールを後二日続ける。 「あきらめてください。先輩、バイトの契約なんですから。」 「わかっとるわ。」 遠くに小柄な姿が見えた。俺は目を凝らす。すっかり見慣れた顔の一部が出勤してきたというわけだ。 参加者は高校生で十五人程だった。男女比は半々程。男子生徒は二〜三人ずつ来てはその単位で作業していた。しかし、女子生徒は。 「なぁ、古河。」 「なんですか?」 古河は、燃料節約のつもりか、携帯扇風機は稼働させず、扇子で懸命に扇いでいた。 二人組の女子生徒たちが近づいてくる。 「どうして女の子は群れるんだろうなぁ?」 「なんででしょうね。男子生徒は適当にバラけますけどね。」 薄く陽炎が立ち始める。生徒達の姿が増えてきた。 「古河せんせー、おはようございまーす。」 「関さん、おはようございますー。」 「おはよう。荷物はそこね。」 「おぅ。」 生徒達が到着し始める。少女達は荷物を置く場所を決めると、その場でおしゃべりを開始する。少年達は荷物を置くと、あるグループはその場に立ち止まり、あるグループは作業場へ移動した。 「こういうの、なんていうんだっけな。」 俺は二十余年前に仕入れた知識を掘り起こそうとしていた。単体でも行動できて、だけど群れる、そんなものがあった。 「ボルボックスですか? 理科の先生に聞いちゃいましたよ。」 古河は立ち上がった。たらたら歩いている生徒達に声をかける。 「後五分で遅刻だぞー。走れ走れ!」 到着した女子生徒たちが集まっていく。 −−ボルボックスまで、あと五分。 |