□ RETURN


02.透明な板の外

大きな大きな箱が通る。
がたんごとんと通っていく。
いくつもいくつも来てはいく。
僕の前を通ってく。

僕はいっつも手を伸ばす。
一生懸命手を伸ばす。
それが来るたび手を伸ばす。

ちっちゃなモノが空を飛ぶ。
向こうの柱に飛んでいく。
高いひもにいっぱいとまる。
ひもはとまってまたゆれる。

僕はいっつも手を伸ばす。
一生懸命手を伸ばす。
それをみるたび手を伸ばす。

よそのおじさんが歩いてく。
僕をよそ目に歩いてく。
僕はいっつも、そこにいるのに、
おじさん気づかず歩いてく。

僕はいっつも手を伸ばす。
一生懸命手を伸ばす。
おじさん過ぎても手を伸ばす。

小さなお花。
不思議ないきもの。
僕はいっつも手を伸ばす。
冷たい雨や、
白い綿菓子。
一生懸命手を伸ばす。

伸ばした僕の手のひらは、
透明な板にあたってしまう。
何もないのに、見えるのに。
そこから先へはいかれない。

僕はいっつも手を伸ばす。
一生懸命手を伸ばす。
透明な板の外。
僕はいっつも手を伸ばす。



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