□ RETURN


03.寒い時期の僕の部屋

火の色、お日様色、空の色、お日様が居なくなっちゃう前の色。
透明な板の外、いろんなお花が見えなくなると、寒いの時期になっていく。
お日様ぽかぽか縁台や、ほんのりあったか台の上も。
なんだか少し寂しくて、僕はあちこち歩き回る。
ずっと年上のお姉ちゃんは、自分の部屋から出てこない。
暑いの時期は、涼しい場所でずっとずっと寝てるのに。
僕はあちこち歩き回る。
お日様の見えるところ、ベットの上のふかふかクッション。
階段の上のほんの隅、押入れの奥のお昼寝場。
どこへ行っても寂しくて、どこへ行っても冷たくて。
僕はずーっと歩き続ける。
お姉ちゃんは、自分の部屋から出てこない。

透明な板のお外のお姉ちゃんは、お日様の見えるところにずっといる。
ふらふらしているお兄ちゃんは、お日様の見えない時間は来なくなった。
透明な壁はずーっとあって、お外の風が入ってこない。
透明な壁が退くときは、痛い空気が入ってくる。

今日もやっぱりお姉ちゃんは出てこない。自分の部屋から出てこない。
お姉ちゃんは寂しくないのかな。お姉ちゃんは、冷たくないのかな。
お日様も見ずに、ふかふかもなくて。
痛い空気は入ってこない?
寂しいにはならないの?
お姉ちゃんは、すごいのかな。
お姉ちゃんは、強いのかな。
少しだけお部屋を覗いてもいい?
お姉ちゃんの様子、見ても良い?
僕が覗いたお部屋の中で、お姉ちゃんはお昼寝してた。
お日様が消えちゃう前の優しい色した明りの下で。
ぐっすりぐっすり眠っていた。

優しい色の明りの下は、なんだかとても、あったかくて。
お日様じっと見ているよりも、なんだかとても、あったかくて。
少しだけ、僕も入って良い?
お姉ちゃんの邪魔しないから。
ちょっとだけ僕も入れて。
ここは寂しくないんだもん。
ここは冷たくないんだもん。
そーっとそーっと入ったのに、お姉ちゃんは目をあける。
ポーっとしながら僕を見て、僕に出てけと怒ってる。

僕はどうしても入りたくて、お部屋の周りで待ってみる。
お姉ちゃんが出たら、その間だけ。
お姉ちゃんがいなかったら、その間だけ。
ずーっとずーっと待ってたら、僕は持ち上げられて、お部屋の中へ入れられる。
同じ色の明りのついた、お姉ちゃんのお部屋じゃない、部屋。・・・僕のお部屋。
僕は、お日様もふかふかもないけど、寂しくない。
僕のお部屋は寂しくない。

僕はお部屋にずっといる。
ご飯の時と、御用の時だけお外に出る。
僕はずっとお部屋にいる。
お姉ちゃんもお部屋にいる。
僕のお気に入りのお部屋だけど、お姉ちゃんのお部屋もいいな。
僕のところは寂しくないけど、お姉ちゃんのところも、きっと寂しくないんだろうな。
ご飯の時にお外に出て、僕はお姉ちゃんのお部屋を覗く。
お部屋を覗いて、怒られる。

お姉ちゃんのお部屋は、僕のお部屋よりあったかかな?



[<< Before / □ RETURN / AFTER >>]