□ RETURN


04.衣替え

お姉さんがもこもこになった。
いつもいつも見ているのに、いつの間にかもこもこだった。
お日様のあたる場所、気持ちよさそうに目を細めて、もこもこ体をまあるくしてる。
お姉さんのいる場所は、透明な板の外。僕は触れなかったけど、お姉さんはもこもこしてる。
僕はもこもこしてないし、おうちのお姉ちゃんもいつものまま。
もこもこのわけは分からないけど、僕はふうんと板から離れる。
透明な板の傍。とっても寒くて、僕は離れる。

お母さんが板をどかすと、冷たい風が入ってくる。
お母さんが板を直すと、冷たい風が入ってこない。
お母さんの脇から、僕はちょっぴりお外を覗く。
冷たい冷たいお外の空気。中にはない、冷たい空気。
僕はぶわりと毛を膨らませたけど、冷たい空気は変わらない。
お外のお姉さんのようになんて、僕にはきっとできやしない。

透明な板の外を見る。
お日様のいる間だけ、ほんの少しのあったかの時。
板の外のお花も消えて、草の色も変わってしまった。
寒いの季節がやってきて、お兄ちゃんもお姉さんももこもこだ。
僕はあったか板の上、背中を丸めて眺めてる。

お母さんが、熱いのをいじると、お部屋の中があったかになる。
明りのついた僕のお部屋は、お腹を出してもへっちゃらで。
ちいお母さんの横のふかふかで僕は寝る。

朝昼晩とご飯のたび、お姉さんはお母さんを見る。
ご飯のついでに、入れてとねだる。
お母さんは板を直す。
お姉さんはお外のまま。入れて欲しいとねだり続ける。
暑いの季節、あんなに元気に胸張っていて、寒いの季節、ねだってる。
お外の寒いを、僕は知らない。




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