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■「チャレンジャー1 Mk.3」(塗装編)
まずはパッケにもなっている湾岸戦争バージョンとか。

経緯的な事を紐解いていきますが、1979年のイラン革命の混乱を突く形で
イラク(フセイン政権)は戦争をしかける(イラン・イラク戦争)訳ですが、
最終的に80年代後半になって漸く休戦協定?が結ばれる程の泥沼化戦争に発展し、
イラクは戦費負担にかなり苦しんでいたとか。

んで、イラク国内の不満反らしなのか、1990年に至って、
今度は南東部のペルシャ湾岸の小国、クゥェートに武力侵攻し、
割とアッサリ?イラクの占領下に入る事態となりました。

この事態を受けて欧州諸国とアメリカが多国籍軍を編成して、
クゥェートの解放作戦を展開する事になる訳ですね…。
(過去作のチーフテンMk.5製作時にも書きましたが、クゥェートには
輸出仕様とは言えチーフテンが配備されていて、50台以上のイラク戦車を撃破した、
…とされていますが弾薬切れなどの為、隣国サウジへ後退したとされています)

で、イギリスからは航空部隊に加え、(旧)西ドイツに駐留していた第1軍団(BAOR)から
第7機甲旅団、次いで第4機甲旅団がサウジアラビアに派遣され、
総計176台(!)ものチャレンジャー1が地上戦に投入されたとか。
(恐らくですが、イラクが保持する装甲戦力=戦車の数が900とも1000とも言われていた為、
万全を期す為に2個旅団規模の派遣となったと推察)

以前にも書きましたが、タンコグラードの画像には、
トランスポーターに載せられた状態のものがあり、
出発前に既に基本色をグリーンからサンドカラーに塗り替えられている事が分かります。

この時点での色合いは画像で見る限りサンディブラウンですけど、
サウジアラビアに展開した後も、改修やら訓練等で何ヶ月かは現地にいたので、
この位色合いが焼けていても良いかな、…とか(汗。

他、砲塔部TOGS脇に「X」印のマークが有りますが、
(記憶通りなら)『スコットランド竜騎兵連隊』のマークで、
まあこの辺はサッカー好きなら、イングランドやウェールズのマークが違う事をご存知でしょうし、
ユニオンジャックが、それらを合わせた連合王国のマークである事も分かるかと思いますので、
興味のある方は各自で調べられてはと(ぇ。

…そう言えばこの仕様、砲塔左側面の装備は車両や部隊によってまちまちで、
今回の車両はチーフテンの車体後部側面で使われていた雑具箱そのまんまで、
次回以降紹介する標準車両の様にバスケットが付いていたり、
何もなかったりと本当にマチマチですね…。
まあ、遠征中の状態と駐屯状態とでは荷物量が明らかに変わってしまうので、
もっとゴテゴテとしていても雰囲気が出るかと(ぉ。
間が空いてしまいましたが塗装編のスタートです。

塗装の最初は下地作りからですが、
1枚目でプラサフ、2枚目が黒(ジャーマングレイ+純色バイオレット)ですね、
毎度のパターンなので書く事が無いですな…。
80年代と言えばイギリスはサッチャー首相による、
数多の改革が有名な時代(同女史が鉄の女とか呼ばれた時代)ですが、
その一つに公益法人や公社系の民営化が有り、
チャレンジャーを生産していた王立兵器工廠(ROF = Royal Ordnance Factories)も
民営化(ないし業務の譲渡による解体)されており、
チャレンジャーの生産は途中から、
ヴィッカース・ディフェンス・システムズが担当しています。
(きちんとした資料は有りませんが80年代後半と推測)

でもってこのVickers Defence Systemsではチャレンジャーの改良型タイプを試作し、
これが後に「チャレンジャー2」として90年代から生産に入る訳ですな…。


ただまあ、チャレンジャーはその重さとかダs(ry が災いしてか、
NATO諸国は勿論、旧植民地系の国々でも採用されず、
チャレンジャー2は400台余りで生産を終了し、輸出もされないまま、
工場は閉鎖される事になっていますね…

(ヴィッカースはこの前後の時期にBAeシステムズに吸収合併されています、
英国機に詳しい方はご存知でしょうが、大戦期に沢山あった航空機製造会社も、
大戦後は統合を重ね、最終的にBAe=ブリティッシュ・エアロスペースになっています)

そんなこんなでチャレンジャー戦車は色々と波乱の歴史を刻んでおりますが、
…そう言う事も含めて英国面なのかなと(ぇ。
次はNATO/BAORのお馴染みカラーですね、
先にも出たタンコグラードの解説によると、
(冷戦期間の)BAORの兵員は8万人だそうで、
まあこれ、西ドイツ側で経費をある程度負担していたとしても、
人件費だけでえらい負担になりますね…。

このBAORに引っ張られる形でイギリス軍は戦車だけで約900台、
チャレンジャー1は最終的に400台ちょいの生産数ですけど、
(主武装は同じなので)チーフテンも使い続けていたんですよね…。

湾岸戦争終結直後のタイミングでソ連は崩壊し、
BAORはその存在意義を失った為、
1994年でドイツ駐留イギリス軍に縮小改編され、
戦車に関してもチャレンジャー2の400台前後を残してすべて退役、
チャレンジャー1はヨルダンが買い取りを申し出た為、
新たに『アル・フセイン』
(=Al Hussein、ヨルダン国王の名前、イラクの国家元首とは違うフセインです)
として現在も使われています。

但し、120mmライフル砲は(命数が尽きたのか)、
順次RUAG社(スイス)の120mm滑腔砲に換装され、
少し印象が変わっていますね…
細かい部分の変更や近代化改修もしているっぽいですがっ。
塗り分け作業のラストはクリア部分の塗装ですが、
機銃架の脇に有るサーチライトを赤外線ライトっぽく赤にしてみました(ぉ。
(タンコグラードの本では普通っぽい感じのシルバー~白系)

車体側のライトですが、両脇の行軍ライトをオレンジに変更して、
ウインカーランプ風にしていますね、実車は白っぽい感じです…(汗。
他、後部のランプは外側のがキャッツアイ(赤の反射板)、
真ん中がテールランプ(赤)、内側のは予備っぽい感じです(謎用途ですな…)。
細部塗装はOVM類の塗装になりますが、
木部はいつも通り、白木風にダークイエローをベースにタン、
クリアオレンジでシャドウと木目っぽく入れた後、
セールカラーでハイライトを入れて終了です。
漸く終わったか…何だかんだで多忙の身の上になってしまった為、足掛け3ヶ月近い製作期間でしたね…。

イギリスの戦後車両は知名度も人気も今一つな車両が多いのですが、
この作例を通じて、もう少し人気が出てくれれば良いな、と思っていたり。

尚、本来ならばこの後にチャレンジャー2をやってイギリスの戦後MBTシリーズを制覇すべきですが、
キット的にイラク戦争バージョンのみなのに加えて、タミヤ製品しか入手できない状況なので、
ノーマル版とカラーバリエーションも含めて完成させたい?身の上としては手が出せませんね…(苦笑。
(センチュリオンはバリエーションも多く、取り組むに当たっては、…またいずれ…)

で、この後は撮影編が有るんですが…思い切り溜め込み中なので…困ったものですな…(汗。
ここからはテスト画像編です。

さて、まずは三役揃い踏み状態のショットからですが、

ノーマル状態でも70t
とされている車両ですし、
どれが横綱なのか、って所ですな…(ぇ。

まあ、今回の完成品はキャタピラの関係も有って、
ダイキャストもかくやの重さですし、そういう意味では
戦車の重さを肌で感じられた作例、って事になるかも(苦笑。
ラストはエナメル塗料によるウォッシングになりますが、
湾岸戦争バージョンはデザートイエローのみ、
通常のBAOR及びBATUS版は足回りにバフ、車体関連がフラットアースです。

でもって乾燥後に艶消しコートをし、
クリアー部分に再度クリア塗料を重ね塗りして作業完了です。


…結局2.5ヶ月はかかってしまった感じですが、
土日しか時間が無いもので…(ぇ。
例によっていつも通りですが、
転輪部のゴム、キャタピラのゴムパッド、
前後フェンダーのフラップ、主砲基部の蛇腹カバー、
キューポラ上部のカメラカバー、発煙筒のキャップとか、
…にグレージングを施しています。

これで足回りの塗装が出来た感じですね…。
ノーマルのチャレンジャー1の方は、
更に迷彩を吹いていきます。

BAOR/NATO迷彩のブラック(残り物の黒紫)、
BATUS迷彩のミドルストーン+ヘンプ混色塗料ですね、
…ほぼ前回のチーフテンMk.11と同じなので、

…アレ、書く事あんまり有りませんね…(汗。
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基本色を作っていきますが、まずは増加装甲タイプからですね、
1色目が土草色、
2色目はヘンプとミドルストーンを混ぜたやつ
(BATUS迷彩用に作ってあるものですが余っていますので)、
3色目がヘンプそのままです。


過去作のチーフテンMk.5Pと同じな訳ですが、
好みでサンディブラウン系に振っても面白いかも(ぉ。
(以下、余話的なおさらいなので興味が有りましたら)

 1970年代、チーフテンMk.5Pを購入(700台前後!)した(帝政)イランでは、更にチーフテンの改良型をイギリスに発注し、
 足回りを強化したシール1と、エンジンを強化して砲塔部に増加装甲(複合装甲だったかどうかは不明)を施した
 シール2を開発しましたが、1979年のイラン革命で発注はキャンセルされ、
 シール1はカリドとしてヨルダンが採用、シール2は更に改修を加えてチャレンジャー1となっています。
 (型式呼称はFV4030/4だそうですが、/1~3はシール及びカリドの型式に振られたっぽいです)

 チャレンジャー1の砲塔右側に装備されているTOGSは射撃管制システムの一部として
 専用に開発された物らしいのですが、チーフテンの改修にも使用され、
 そのTOGSを装備したのが、チーフテンMk.11という訳ですな…。
 (余り判然としておりませんが、チーフテンの改修キットとしての配備が先かチャレンジャー1が先なのかは不明で、
 新戦車の慣熟訓練も加味すると、チーフテンの改修も優先されるかもですし)

 今更ながらに気付いたのが、TOGSの装備位置がチーフテン(左側)とチャレンジャー(右側)とで異なる事で、
 1987年の競技会でダントツのビリになった理由の一つがこれなんじゃないかなと。
 (要するにTOGSのレンズが見ている画像は砲手から見て右側にズレていて、
 発砲時の着弾位置は、単純に考えるとレンズで照準した位置から左にズレる事になり、
 チーフテンで慣らした砲手が乗車していた場合は、感覚が車幅分ズレてしまい、命中しなかったのではと)

 キットのパッケにも有るMk.3の型式表示の件ですが、
 Mk.1はいつもの?試作車両らしくTOGSは未装備で引き渡され、
 Mk.2でTOGSが標準装備された状態で引き渡され、
 Mk.3で弾薬庫の改修が施されたとあります。
 当然これらの個体差はその後の整備時等に現地ないし本国で順次アップデートされていくのですが、
 我々が良く知る(と言うより湾岸戦争での露出が多かったためこのスタイルの印象が強い)この
 増加装甲付きの仕様はMk.4の扱いではなく、政府側の意向(当時はサッチャー女史)を無視する形で、
 現地到着後に施された特別仕様だったらしく、それゆえ型式分類に入っていないんだとか。
 (当方はこのデザート仕様がMk.3だとずっと思っていました…)

 他、砲塔部の形状が一新されて容積が拡大されていると思いきや、
 元々が「シール2」であるが故に、チーフテンMk.5の砲塔に分厚い複合装甲を追加
 (製法上、平板にならざるを得ない)した構造を持つため、内部容積や配置はチーフテンとほぼ同じだそうで、
 あまりの使い勝手の悪さに、間を置かずして砲塔を換装した「2」に切り替わる訳ですな…。

 そしてイギリス軍としても久々の大規模な実戦参加となる湾岸戦争に参加し、
 戦闘での損害ゼロという華々しい戦果にも拘らず、そのすぐ後に起きたソ連崩壊を受け、
 BAORは(ソ連への備えという)存在意義を失くした為順次削減、イギリスはチャレンジャー2以外のMBTを
 全て退役させる方針を打ち出し、余剰となったチャレンジャー1(約400台)は再びヨルダンが「アル・フセイン」として
 購入し、現在に至る訳ですな…。

 …しかしまあ、こうして書いてみるとぢつに波乱万丈の戦車ですが、
 外見的には非常に格好良い車両なので、「2」より好きなんですけどねぇ…。

[EOF]
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ラストはBATUSスキームの車両ですね、
前回のチーフテンMk.11の時と同様、
黄色部分の描き方が少し違っているタイプにしてみましたが、
当方の資料ではチーフテンも含め、この描き方の車両は見当たらず、
ただでさえ資料が少なめなBATUS車両に対し、
更に謎が深まった感が有ります(汗。

当方の手持ち資料では、BATUS車両もNATO/BAOR車両と同じく、
太めの帯を3~4本斜めに入れているパターンばかりでしたので、
一般的、という方向性を求めるなら、色違いでパターンはは同じ、
…という風に仕上げた方が良いのかも、とか。
湾岸戦争バージョンのジェリ缶類を塗ってい行きますが、
過去作ではM109とかでやった水缶と燃料缶の色を分けています。

これ、ノーマルタイプの方で水缶が砲塔後部に最初からセットされているので、
燃料缶はカーキでの色分けになりますね、
因みに持ち手の部分が3本あるのが燃料缶、1本だけなのが水缶です。

余剰パーツを適当に詰め込んだだけでしたが、
ドラム缶がある分、燃料缶の数が少ないかなと(ぇ。
順番が変わってしまいましたが、
今度は砲身基部のカバーです。

今回「も」いつも通りのカーキ系で纏めた感じですがっ。

この部分、実車の画像を見ると、影になって殆ど見えませんが(!、
蛇腹部と同じ黒にするにはディティールが違うので…困ったものだなと(苦笑。
砲塔部の塗装に入っておりますが、
まずは砲身部のサーマルジャケットですね、
ダークイエローをベースにして黄土色、セールカラーでのドライブラシです。

いつもと順番が少し違いますが、気温が低い(真冬時の為?)せいか、
塗料の乾燥が遅く、木部の基本塗装をやっている間とかに
ついでにダークイエローを塗っていたから、というだけです(汗。
消火器の完了状態です。

こちらもいつも通りのRLM23とシャアピンクですね、
実車通りを目指すなら光沢グリーン
ですけれどっ(汗。
エアブラシによる基本塗装が出来た所で筆塗りによる
塗り分けとかが入っていきますが、
デカールを貼ったりしながらの部分も有るので、割と大変かも(汗。

(BATUSの砲塔部ゼッケンはプラペーパーに貼ってからの取付、
湾岸バージョンはそのままシェブロンのマークが付きます)

画像は1枚目が基本色となるジャーマングレイ終了時、
2枚目が足回り及び全体へのストレーキング状態ですね、
エッジ部が強調される効果も有るので、意外と馬鹿に出来ないですね…。
(色を重ねる事で深みが出てきますが、素材感が出たりしますし、
ディティールも強調されて雰囲気がガラッと変わるのが分かるかも)
今度ははグリーンの基本色を作っていますが、
英国面シリーズの定番と化した?
RLM70(1枚目)、
ブリティッシュグリーン(2枚目)、
聖グロカーキ(3枚目)です。

今更ですが、キャラもの的方法論で毎回こういう塗り方にしておりますが、
模型の立体感を強調したり、色合いの深みが出てくるので、
単色の厚吹きにせずに、
複数色の重ね合わせで結果、厚吹きにしていますね…。