謎のノイズ3

 
機内でタカハシは笑子とベティに「彼女が日本での政府間の交渉や、いろんな事務手続きなんかをするスージー・クレメントだ」といって背の高い若い女性を紹介した。
 「うわデッケー!」
 スージーはベティの言葉に気分を害したのか不愉快な表情で「今年新卒で入局したばかりですが事務処理に関しては自信があります」と流暢な日本語で言った。
 「なんだって?それスワヒリ語か?」
 「ジャパニーズよ、フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ。ドゥ ユー ノー?」
 スージはバカにしたように言った。
 「なんだ、やる気か?確かに学歴じゃ負けるが腕づくじゃ負けねえぞ!」
 ベティは目を吊り上げて言った。
 険悪な雰囲気に恐々としながら二人を交互に見た。
 「まあまあ二人とも、これから日本でミス・カワムラを助けていかなければならないんだから仲良くしなければ」
 タカハシが仲裁に割って入った。
 「なんだって?オレも行くのか?聞いてないぜ!」
 ベティは驚いて言った。
 「レイナード署長とは話がついているから心配要らない」
 タカハシがサラリと言った。
 「冗談じゃねえ、来週はエリアの予選が有るんだ。うまくいけば来年からは全米選手権へとステップアップできるかも知れねえというところなんだ」
 ベティはタカハシに訴えた。
 「ミス・カワムラの研究している盗聴システムには我が合衆国だけではなく全世界の平和が掛かっていると言ってもいい。それくらい重要なものだ。だから少々の事は我慢して欲しい」
 タカハシが懇願するように訴えた。
 「オレは警官だ。だから町の平和を守る義務は有る。でもよ国家の治安を守るのは、お前らCIAや軍隊じゃないのか?」
 「それを言われると返す言葉もないが、我々CIAでも本当に信頼できる人物が居ないのが現状なんだ。現に我々の仲間のリッチーはガイアの連中に”地獄耳”の情報を売り渡そうとしたし」
 ここで話題に上るガイアに関して補足しておくと、正式には”ガイアの真実”という数年前に興った新興宗教の事である。
 ラブロック博士の提唱するガイア理論からパクッたのもだが教義らしい教義は無く教祖のヒスパニック系アメリカ人のホセ・ロドリゴの行う透視や予言といった怪しげなパフォーマンスで広く若者を勧誘したり麻薬やフリーセックスを奨励することから常識派からの批判も多かった。そんな矢先デンバーやソルトレークなどで誘拐した少女たちをシアトルやロスの繁華街の街角に立たせ売春をさせていた事実が判明して組織は地下に潜伏し今ではコンビニ強盗、身代金目当ての誘拐を各地で引き起こしている。
 「そうそう、私はカラテのブラックベルトでマスター(師範?)よ。いくらあんたが粋がったって私には敵わないわ」
 スージーが再びバカにしたように言った。


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