出雲地方のわらべ唄
採取者:森山[湖陵]
〔訳 文〕
亥の子さんの 晩に 餅 ついて 祝わぬ 者は
蛇を 産め 子を産め 角の 生えた 子を産め
〔情 景〕
旧暦の亥の子さんの日には夕方になると子供たちが藁を束ねて
作った縄で地面を叩きつけながらこの唄を歌い町内を練り歩き
ました。
子供たちは「えもん=お菓子」が配られるのが楽しみでした。
採取者:金本[東出雲]
(記録者:金沢)
山の ひゃっこり どげして やせた
もの くゎせんで やせた
くいもんなけらな た つくれ た つくりゃ ちべて
ちべたけりゃ ふ ね あたれ ふ ね あたりゃ あち
あちけりゃ あとしざー せ あとしざーさ のん が かん
のん が かみゃ ちぶせ ちぶしゃ ごらしい
ごらしけりゃ だいて ねれ だいて ねりゃ よけ かん
(参考)
ひゃっこり=春蘭 : ごらしい=可哀相
〔共通語訳〕
山の ひゃっこり どうして 痩せた
食べ物 食べなくて 痩せた
食い物なければ 田をつくれ 田をつくりゃ 冷たい
冷たけりゃ 日にあたれ 日にあたりゃ 暑い
暑けりゃ あとずさり しろ あとずさり すれば 蚤が噛む
蚤が噛みゃ 潰せ 潰せば 可哀相
可哀相なら 抱いて 寝ろ 抱いて 寝りゃ 余計に 噛む
金本[東出雲]
こーいし こい こな おんじょ こい
あぶら や みたお に
負けて 逃げる おんじょ
はじだ ないかや
〔共通語訳〕
来い 来い あの やんま 来い
雌に 負けて 逃げる やんま よ
恥じゃ ないかい
<情景>
夏がきて、夕暮れ時になると、田んぼの空はやんまの一群に覆われました。
おんじょ釣りは、めとう(雌)を五十センチくらいの糸で縛り、1メートルくらいの竹竿に結び付けて、ぐるぐる回しながら、交尾の本能を利用して地上まで誘いこみ、手で捕まえるという捕獲方法のことです。
この時には上記の唄を歌わないと成功しないと信じられていました。声を出して歌うのは少し照れくさかったので口笛がが主だったように思います。
金沢[松江]