「MMANA」 & 「NEC2 for MMANA」による給電点インピーダンスの計算値比較


自作した垂直型21MHzExtended Micro Vert Antennaを偏給電・短縮型半波長ダイポールとみなしてアンテナ定義し、アンテナ解析ソフト「MMANA」で給電点インピーダンスを完全導体グランド7mHの条件で計算してみましたが、実測値の給電点インピーダンス約50Ωに比較すると随分低い32.35Ωでしたので計算エンジンがNEC2である「NEC2 for MMANA」で再計算して計算エンジンがMININECである「MMANA」の計算結果と比較してみました。

(注)「NEC2 for MMANA」はロシアのUA3AVR/Dimitry Fedorov氏が作成したフリーソフトで「MMANA」のアンテナ定義ファイルを使用して計算エンジンNEC2でアンテナの諸特性を計算できます。また、「MMANA」では計算できないリアルグランドの場合の給電点インピーダンスを計算結果がリアルグランドの場合に近いと言われているSommerfeld-Nortonグランドモデルを使用して計算できるほか、誘電体外被を持つアンテナワイヤーの場合の計算にも対応している。

なお、「MMANA」及び「NEC2 for MMANA」におけるアンテナ定義はラジエーターをアルミパイプ1m長25mmΦ,カウンターポイズは同軸ケーブルRG58A/U 3.73m長3.6mmΦとしています。

「MMANA」での計算は自由空間と完全導体グランド(7mH)の計算条件で行い、ローディングコイルのインダクタンス値は周波数21.2MHzで各計算条件ごとに最適化、Q=200と仮定しています。

いっぽう「NEC2 for MMANA」では自由空間及び完全導体グランド(7mH)の計算条件以外にSommerfeld-Nortonグランドモデル(7mH)でも計算してみました。
なお、Sommerfeld-Nortonグランドモデル(7mH)の計算条件は「Very poor 」(比誘電率 Eps=5、導電率 Sigma=1ms/m)とし、同軸ケーブルのPVC外被を考慮した場合と考慮しない場合の2通りの計算を行いました。
ローディングコイルのインダクタンス値は「MMANA」の場合と同じく各計算条件ごとに周波数21.2MHzで最適化、コイルのQは200と仮定しています。

次の表は実測値、「MMANA」及び「NEC2 for MMANA」による計算結果です。
クラニシBR-210による実測値
測定条件   Z=R(Ω)+j X(Ω)     SWR 50     最適化 L(μH)  
  リアルグランド(7mH)   50.0 1.01 ? (9T 33mmΦ)
「MMANA」による計算値
測定条件   Z=R(Ω)+j X(Ω)     SWR 50     最適化 L(μH)  
自由空間 34.200+j 0.463 1.46 3.29
  完全導体グランド(7mH)   32.356+j 0.605 1.55 3.31
「NEC2 for MMANA」による計算値 ( 同軸ケーブルのPVC外被を考慮 )
測定条件   Z=R(Ω)+j X(Ω)     SWR 50     最適化 L(μH)  
自由空間 42.178+j 0.125 1.19 3.49
  完全導体グランド(7mH)   39.920+j 0.595 1.25 3.51
  Sommerfeld-Nortonグランド(7mH)   40.675-j 0.853 1.23 3.49
「NEC2 for MMANA」による計算値 ( 同軸ケーブルのPVC外被を考慮せず )
測定条件   Z=R(Ω)+j X(Ω)     SWR 50     最適化 L(μH)  
自由空間 42.171-j 0.376 1.19 3.53
  完全導体グランド(7mH)   39.919+j 0.294 1.25 3.55
  Sommerfeld-Nortonグランド(7mH)   40.664+j 0.471 1.23 3.54


「MMANA」による完全導体グランド(7mH)での計算例
「NEC2 for MMANA」によるSommerfeld-Nortonグランド(7mH)で同軸ケーブルPVC外被を考慮した計算例
「NEC2 for MMANA」によるSommerfeld-Nortonグランド(7mH)で同軸ケーブルPVC外被を考慮しない計算例

給電点インピーダンスの計算結果ですが、同じ完全導体グランド(7mH)の計算条件で比較して、「MMANA」の計算結果値は「NEC2 for MMANA」の場合と比較して約7.6Ω低いようです。
なお、同軸ケーブルのPVC外被が給電点インピーダンスに与える影響は、計算結果で見る限りほとんどないように思われますが、最適化したローディングコイルのインダクタンス値にはわずかな差が見られます。
また、計算値の中でいちばん高い値の「NEC2 for MMANA」Sommerfeld-Nortonグランドモデルの場合でも実測値に比較すると約9.3Ω低い値です。
次はアンテナ解析ソフトMMANAを使用する場合の注意点についてです。