ランニング研究:その11 走る速度と心拍数の関係 |
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走ることに限らず運動を始めると筋肉は酸素を必要とし、それを供給するために心臓の鼓動は徐々に上がり脈拍が増えてきます。特にマラソンなどの長距離ランニングは有酸素運動と呼ばれ、酸素を用いて体内の脂肪を主なエネルギー源としています。また、短距離走などの無酸素運動でも直後には酸素を必要とし、筋肉に酸素を供給する必要があるのは同じなので心拍数はやはり上がります。 マラソンなどの長距離走のパフォーマンスを上げるためには、スピード力を身に付けることも最終的には必要かもしれませんが、我々市民ランナーのレベルではまず筋肉に持久力を付ける、すなわち有酸素代謝をしやすい身体にする必要があります。これは細胞レベルで有酸素代謝をし易い身体になるということです。有酸素代謝をし易いということは、言い換えると同じスピードでも最初は無酸素運動の領域だったものが、トレーニングなどによって有酸素運動の領域になるということです。 その筋肉の持久力を向上させる方法として、有酸素運動から無酸素運動に変わる境界手前の強度でトレーニングを行うことが良いとされています。その境界のことをAT(Anaerobic Threshold:無酸素性作業閾値)あるいは代謝によって産生される乳酸が増える境目ということで、LT(Lactate Threshold:乳酸性作業閾値)とか呼ばれています。これらは考えの視点は異なりますが、値としてはほぼ同じです。 最も効率的にトレーニングを行うには最大の有酸素運動を行えば良いのですが、それにはこのAT、LT値があらかじめ分かっており、運動強度がちょうどAT、LT値を下回っていることが確認できれば良いわけです。そのコントロール法として、AT、LT値に対応する心拍数を設定し、心拍数によって運動強度をコントロールするやり方があります。 AT、LT値は全力の70〜80%とも言われています。全力の心拍数、つまり最大心拍数の70〜80%と言うことです。そして最大心拍数を算定する式は(220−年齢)で求められると一般的に言われています。P.マフェトンも同じ意味合いで独自に最大エアロビクス心拍数(180−年齢±5)説を唱えています。ただし、この数値にはトレーニングの経験や個人差もあると言われています。10ほどの幅があるようです。 私のATあるいはLT値は、最大心拍数が(220−55)=165なので、最大心拍数×80%として=132です。(マフェトン理論でいけば強めで130です。) また、カルボーネン法では運動強度を(その運動時の心拍数−安静時心拍数)/(最高心拍数−安静時心拍数)で表しています。 ■今回の「走る速度と心拍数」測定方法 場所:国立競技場回廊コース(L=650m) 方法:約1時間走行して、最後の1.3km(回廊二周)の速度を測り、走行直後30秒間の心拍数を測定する。そして、ラスト1.3kmの速度と走行直後の心拍数の関係を探る。 期間:2008年1月7日〜4月10日(約3ヶ月間) 結果:運動強度は試しに上記カルボーネン法で計算したもの。(最大心拍数は計算では165だが、下記実績より180とした。)
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図-1 |
図-2 |
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図-1は速度と心拍数の関係を見るためにプロットしたものですが、よく見るとグラフの左半分(速度=3.5〜5.5分/kmのオレンジで囲った範囲)と右半分(速度=5.5〜8.5分/kmの緑の範囲)とでは、分布の様子や双方の関係が少し異なるように見えます。 それで図-2は、速度=3.5〜5.5分/kmの範囲と速度=5.5〜8.5分/kmの範囲に分けて、それぞれの分布勾配を回帰式で示したものですが、 @速度=3.5〜5.5分/kmの範囲: 相関係数=-0.92597 回帰式y=-41.331x+337.47 A速度=5.5〜8.5分/kmの範囲: 相関係数=-0.35341 回帰式y=-4.3334x+128.89 となりました。つまり、 @ 速度=3.5〜5.5分/kmの範囲では、相関係数は-0.92597と心拍数と速度との間にかなりの相関が見られますが、 A 速度=5.5〜8.5分/kmの範囲では双方の変数に相関はほとんどないと言って良く、速度を8分/km程度から5分半/km程度にまで上げても心拍数はあまり変わりません。むしろその時の体調などによって90〜110の幅が出るような気がします。 また、最も効率的に有酸素運動トレーニングを行う目安としてのAT、LT境界値あたりの心拍数は、私の場合計算では132ほどでしたが、この値を中心とした120〜140pulse/分が図-2の緑点線の範囲です。そして、その時の走る速度は4.8〜5.0分/kmあたりとなっています。現在のところ、私にとってのAT、LT境界値の速度は4.8〜5.0分/kmあたりと言って良いでしょう。(現在のところとしたのは、当然トレーニングによって向上するからですが。) 私は5kmの記録で20分を切ることを最大の目標としていた時期がありましたが、その時に出会った練習方法で非常に取り組みやすかったものがあります。それは、イーブンペースで走ることを前提として、目標ペースの80%で走るということです。目標が20分なら20分÷80%=25分。5kmを25分のイーブンで走ることを続けることで、エアロビックな身体ができて持久力が養われ、続けるとそのレベルが少しずつ上がっていくと言うものです。実際のところ持久力は付いていったと思います。その時の設定5分/kmと今回のAT、LT境界値の速度とがほぼ同じだったのが今回わかりました。漠然と設定していた5分/kmは私の身体に合っていたと言う事ですね。理解できました。 |
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