ランニング研究:その13 マラソンのスタート位置とタイムロスについて |
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東京マラソンでは、フルマラソンに約2.6万人、10kmも含めると計3万人も出場しました。そのために、スタート地点ではランナーの列がスタートラインが引かれた都庁第一庁舎玄関前から南に延々と伸び、新宿中央公園南側の道路の端まで、幅30mの道路に約600m並んでスタートしました。おおよそ平均1uあたり2名ほどの混み具合でのスタートです。出場した感触では、前の方はもっと混んでいたとは思いますが。 そして、スタートの号砲が鳴っても後ろの方はすぐには動かず、最後尾ではスタートラインを通るまでに30分近くかかったとも言われます。 スタートの位置は事前に自己申告したタイムに沿って決められており、AブロックからJブロックまでに分かれて並びます。ですから、ゆっくりとしたペースを前提としたランナーは後ろの方に、速いランナーは前の方に並ぶことになります。必然的に、ゆっくりランナーほどスタートに要する時間が多いのですが、さらにスタートラインを通ってもその混雑は少し続き、最初の出遅れはその後も少し影響を及ぼすようにも感じます。では、実際にスタートトップと後ろで、どの程度の影響があったかを、フィニッシュタイム30分ごとのランナーの結果を採取して見てみましょう。 |
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左図がその結果です。これはある特定ランナー(グロスタイム30分ごとに男女1名ずつ抽出)のスタート時のタイムロスを拾ったものです。つまりグロスタイムとネットタイムの差です。レース管理者が計画したとおり、速いランナーほど前に並ぶのでスタートタイムロスは少なく、遅いランナーほど後ろに並ぶのでタイムロスは大きくなっており、管理者の予想どおりです。 平均5分/km以内の速いランナー(フィニッシュ3時間30分以内)では、男女共タイムロスは少なくほぼ1分以内に収まっており、これだけならば後で充分取り戻せる範囲内です。 |
そして、フィニッシュタイム4時間以上を越えるとロスタイムもだんだん大きくなっていきます。スタートの号砲が鳴ってもすぐに群集は動くことが出来ないからでしょう。また、サンプルが非常に少ないのでタマタマかもしれませんが、どちらかと言えば女子ランナーの方が、ロスタイム値が大きいようです。つまり、同じフィニッシュタイムでも女子の方がスピードは速いのかも? |
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スタートで出遅れると混雑が解消ぜず、スタートライン越えても思うように走れなくて、タイムを狙っている場合はいらいらする時もあります。 では、上と同じサンプルで、実際のところを見てみましょう。 左図は、各ランナーの最初の5km(Start〜5km:第一ラップ)と次の5km(5〜10km:第二ラップ)の各ラップタイムの差をプロットしたものです。もちろんスタートロスタイムは除いています。数値が+は第一ラップより第二ラップの方が速くなっていることを示し、−は遅くなっていることを表しています。 |
スタートで出遅れたことでスタートライン通過後も速く走れない場合は、ようやくバラけてきた第二ラップの方が上がる(つまり速くなる)と予測できますので、この数値が+になると想定できます。が、上図を見れば、あまりそういうことは言えないようですね。若干、4時間30分〜5時間30分のあたりで、第二ラップの方が上がった(4〜12分ほど)ランナーも数名いますが、このあたりが特に混雑していたのでしょうか? また、5時間あたりのランナーからは第二ラップの方が逆に遅くなっているランナーが増えています。このあたりでは、スタート時の遅れはその後の走りにほとんど影響を与えていないと言えるのではないでしょうか。 あくまで、これは2.6万人のうち、ほんの21名のランナーのデータを見ただけですし、最初よりは徐々にペースが上がる場合もよくありますので、統計的には全体的な現象とは言えないのですが。 |