ランニング研究:その15 北京オリンピック女子マラソンレースの考察 |
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北京オリンピックの女子マラソンでは、19km過ぎからルーマニアのコンスタンティナ・トメスク選手が飛び出し、そのままリードを保って優勝しました。 |
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恐らく、フィニッシュ地点の競技場まで競って行けば、大観衆の応援に背中を押された周春秀選手ら中国の選手たちが、驚異的なラストスパートを掛けてくるであろうとの読みでしょうか、ロングスパートをしたトメスク選手の作戦は当りましたね。中盤で1分以上の差を付け、あとはそのままの差を保ちました。終盤はケニアのヌデレバ選手の追い上げもありましたが、300m以上も離されてしまっては追いつけませんでした。ヌデレバ選手としては、アテネオリンピックで野口みずき選手に追いつけなかったレースの再現となってしまいましたが、ラスト100mでの周選手とのスプリントの競い合いは見応えがありました。ヌデレバ選手は中盤まで第二集団のさらに後ろにいましたので、トメスク選手のロングスパートに即応できなかったこともあったのでしょう。 このレースの先頭ランナーと第二集団のラップの変化を見てこのレースを振り返ってみましょう。参考に世界記録(2003.04.13London/ポーラ・ラドクリフ選手)やオリンピック記録(2000.09.24
Sidney/高橋尚子選手)・日本記録(2005.09.25 Berlin/野口みずき選手)も並べてみました。 |
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北京オリンピックの女子マラソン記録と世界記録など参考記録との比較(5km上欄スプリット&下欄ラップ) |
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■気象条件:天候=曇 気温=22.4度 湿度=77%(9:30現在) ■北京オリンピックの女子マラソン記録
※第二集団の先頭は頻繁に入れ替わったが、集団内での先頭とラストはせいぜい2秒差程度。また、第二位のヌデレバ選手は第二集団のさらに後ろにいたが追い上げて、30kmあたりから第二集団を引っ張ったので、彼女の実際の中盤のラップはもっと速い。 ■世界記録など比較参考記録
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優勝者と第二集団のラップ変化 |
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優勝したC・トメスク選手は、19km地点からスパートしていますが、そのスピード差は7.5秒/kmほどで、5kmラップでは37秒ほどアップしたことになります。第二集団も追随していますが、4.5秒/kmほどに終わり、ここで一気に差がつきました。その後35kmまでは・トメスク選手のほうがスピードを上げ続け、差が広がりました。 最後の35km〜40kmとラスト2.195kmのラップは、第二集団がケニアと中国の四選手で競い合ったこともあり、トメスク選手を上回り、差を最大1分10秒ほどから21秒まで縮めましたが、彼女を脅かすまでには至りませんでしたね。 また、下に世界記録などを載せましたが、これはレースごとに気象条件などが異なるのでラップ数値自体はあまり比較対象にはならないでしょう。しかし、ペース変化の違いはよく分かると思います。優勝者のペースはレースによって随分と異なるものですね。今回の北京第二集団のラスト2.195kmのラップは、P・ラドクリフ選手が世界記録を達成した時のペースに並んでいます。かなりのハイペースで近づいたことが分かります。 ところで、5kmラップのペースの変動ですが、
世界記録と日本記録は上のように4、5秒/kmと非常に小さな幅となっています。これは、記録を狙っていたこととペースメーカーがいたことなどが影響しているのでしょうか。きっとそうでしょう。これに対し、オリンピックレースはタイムよりも勝負に徹しているせいか、20〜30秒/kmまで変動幅は拡がっています。今回もトップアスリートとしてはかなり遅く入り、中盤から後半上がっています。 |