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まちを走るシリーズ その2

「玉川上水」を走る!     2003.02.16

 

 

 

今回はまちを走るというよりは、川を走ります。川を走ると言っても「秋川渓谷自然人レース(これは、東京都あきるの市の秋川で開かれるサバイバルレース。本当に川の中を走り泳ぐ)」ではありません。東京の郊外、多摩地域には、東西方向に「玉川上水」という人工の川が流れていて、地域に潤いと安らぎを与えています。それに沿って走ります。「玉川上水」の名は東京の方でなくても、小説などでご存知だと思います。周辺のランナーにとっては格好のジョギングコースです。また玉川上水はランナーのみならず、東京にあっては貴重な水と緑のネットワーク的な資源となっています。

玉川上水沿いには大きな樹木が繁り緑道も整備されており、自然が残る貴重な場所です。でも、これは江戸時代に多摩川から江戸へあくまでも人工的に作った大地への亀裂なのです。現在は開発に際しては自然保護が重要視されつつありますが、少し前までは人工的な構造物は機能さえ果たせば良いという、あくまでもコンクリートや鉄骨の躯体剥き出しの、冷たく乾いた景観を見せる場面が多かったように思います。それを思えば人工物と言えども、こんなに自然を残している玉川上水はむしろ柔らかく穏やかです。周辺の街よりは自然が保護されていると行っても過言ではありません。緑道は生活道路として利用されています。

これが作られた江戸時代には、多摩川からの取水口の羽村から江戸の四谷まで流れていましたが、現在の下流部分は、東京都杉並区久我山2丁目の中央高速にぶつかる所で地下に潜ってしまいます。ですから、川に沿って走ることができるのは残念ながらここ迄です。今回はこの総延長約31kmをご紹介します。

 

ガイドブックから少し歴史的な知識を!

「玉川上水」は、水不足に悩む江戸の住民の飲料水を引くために1653年に作られました。飲料水の他にも多摩地域の田畑の用水としても利用されていたようですね。この工事を取り仕切ったのが、羽村の玉川兄弟で、なんと羽村から四谷までの約42kmの掘割を7ヶ月ほどで完成させ、その7ヶ月後には通水しちゃったそうです。ん〜っ、これはエジプトのピラミッドに引けを取らない偉業ですね。ちなみに、兄弟が玉川の姓を与えられたのは完成後の事のようです。その前は加藤さんだったそうです。(これは知らなかった。)

スタートの最寄駅はJR青梅線・羽村駅(青梅線は立川から奥多摩までを結ぶ支線で、東京都の最も奥まで通じており休日には登山客が多いラインです。羽村駅は立川から12kmほどの位置にあります。)で、ゴールの最寄駅が京王井の頭線・富士見ヶ丘駅です(井の頭線は吉祥寺と渋谷を結ぶ私鉄で、富士見ヶ丘駅は吉祥寺から4kmほどの位置にあります。)。スタート、ゴールとも、両駅から徒歩5分ほどで行ける便利なコースです。

 

■ 活動日

 

 

2003.02.16(日) 天候:あいにくの雨

■ 主なコース

 

 

羽村堰・取水口(羽村市)〜奥多摩街道(福生市)〜JR&西武拝島駅(昭島市)〜西武玉川上水駅(立川市)〜小平市〜都立小金井公園(小金井市)〜JR三鷹駅(三鷹市)〜井の頭公園(武蔵野市)〜久我山2丁目(杉並区)

■ 距離

 

 

31km

■ 所要時間

 

 

4時間8

■ コース紹介

 

 

当日は、青梅マラソンの開催日だった。そのせいで電車には参加者が大勢乗っていた。と言うのは、私の目的地・羽村駅はマラソン会場の河辺駅より2つ手前なのだ。彼らと似たウインドブレーカースタイルの私が手前の駅で降りたので、きっと他の選手は私が降りる駅を間違えたと思ったに違いない。(私の勝手な予測)

当日の天気予報によれば、午前中は雨だが午後から上がるとの予報。それも雨量は少ないらしい9時過ぎに家を出る時から空はシブシブとしていたが、予報を信じて今回のランを決行した。

JR羽村駅に着いても相変わらず霧雨が降っていた。雨対策にビニール袋に穴を開けてウインドブレーカーの上からかぶる。そうしても汗でウインドブレーカーは濡れてしまうが、雨に打たれるよりはマシだし体の冷え方も違う。そして頭にはゴアテックスのキャップをかぶる。このキャップは防水のうえ汗を発散するので快適だ。

 

羽村の堰〜奥多摩街道〜JR・西武拝島駅

スタート地点の羽村堰には小さな公園があり、屋根付きの休憩所があった。寒いのにおじさん数人がたむろしてどうやら酒を飲んでいる様子。こんな朝から運動もしないで、あまり健康的ではないな(余計なお世話か)。遠くを見れば多摩川の河川敷では釣人が点在している。彼らも私と同様に雨は関係ない様子。振り返ると、公園内には玉川兄弟の像がどこか遠くを指差す形で立っていた。他に玉川上水の歴史などを説明するパネルもある。これは玉川上水の緑道にはあちこちに立っている。これを緑道に沿って全部読んでいけば、玉川上水に関しては通になれるわけだ。

時計を見ると1030。説明書きもそこそこに見て出発する。すぐに都のポンプ場があり、脇が緑道となっている。ここは自然公園桜堤と名づけられているくらいだから、桜の季節はきっと見事なのだろう。今日は地図を持たずに行くので、とにかく流れから離れないように気をつける。と言うのは、堰から10分ほど迄は緑道が続いているが、それ以降、拝島駅迄の区間は途切れ途切れなのだ。緑道が行き止まりになったので平行する奥多摩街道に出た。しばらくすると奥多摩街道も徐々に玉川上水から離れていく。福生市のあたりは玉川上水が家と家の間(つまり裏側)を通っているので、流れに沿って走れる所は少ない。ウロウロと行きつ戻りつするうちに、拝島駅の手前で「水喰らい土公園」という場所に偶然出会った。ここは玉川上水の工事で掘削した後が、現在のルートとは別に遺構として残っている。水が下にすぐ染み込んでしまうので「水を喰らう土」という名がついたとか。雨のせいかちょっと薄暗い感じだ。ここは行き止まりなので元来た道を一度戻り、玉川上水の流れる方向を遠めに見ながら拝島駅方面を探して進む。快適さから言えば、羽村堰から拝島駅までの玉川上水沿いはジョギングや散策には向いていない。羽村堰から多摩川沿いに歩行者専用道路を下り、睦橋の地点で睦橋通りを東に拝島駅まで行くのが最も良いかもしれない。

 羽村堰(手前が玉川上水、向こう側が多摩川)

 

JR・西武拝島駅〜西武玉川上水駅

拝島駅はJRと西武線が並列しているが、玉川上水は西武線側を通る。ここからはゴールの杉並区までは、流れのどちらか片方には必ず緑道があり、とにかく川沿いに走ってゴール迄行ける。所々で道路と交差するので、信号でストップしなければならないのはやむを得ない。拝島近くの道幅は狭い。人がすれ違うことがやっと出来くらい。本日は雨で、人があまりいないので走るにはベターだ。少し進むと昭和の森ゴルフコースが南側に見えてくる。ゴルフコース側には道はない。ここの300mほどの区間では一端流れが地下に潜り、上は公園になっている。なぜだか不明だが、知らないと玉川上水はどこに行ったのかという感じだ。

上水沿いには大きな樹木が残されており、決して走り易い(歩き易い)わけではない。木の根っこが張り出しており、特に三鷹駅迄は緑道の真中にも大きな木が立っていることも多く、幅の狭い所はそれを避けながら走らなくてはいけない。もちろん緑道の大半は土のままで足にやさしい。山道を歩いている感覚だ。ごく一部、小金井公園周辺や三鷹駅以降の下流に近い部分のみが舗装されている。

ところで、西武玉川上水駅までは流量が豊富で、カルガモも泳いでいる。

 カルガモたち

 

西武玉川上水駅〜都立小金井公園

西武玉川上水駅は、立川からの多摩都市モノレールと立体交差をし都市的な景観を形作っている。緑道の自然の中からいきなり都市にポッと出た感じだ。私はここで始めて知ったのだが、多摩川から取水した水はここのポンプ場で全て吸い上げてしまうらしい。ではここから流れる水は何かと言うと、再生水を流していると言うことのようだ。つまりここから下流は修景の水であって、本当の上水ではないのだ。どおりでここから流量が極端に少なくなっているわけだ。しかしどのような水であろうと、都民に憩いの空間を与え、こうして走れる場所があるわけなので、私としては一向に構わない。同じようにここから北の方向にも再生水の野火止用水(伊豆殿堀)が整備されているようだ。これは埼玉県の新座市あたりまで続いている。水と緑がネットワークで繋がっている。西武玉川上水駅からは、水と同様に川の幅員と護岸の状況も一変する。つまり、ここまでは川幅が広く水位も高く遊歩道から水面がよく見え、側壁もRCや石積みでしっかり作られていたが、ここからは、水量が少なくなるのと同時に川幅も狭くなり、水面もかなり低くなる。周囲の地盤から-4mほどはあるのではないか。側壁も土が剥き出しで荒々しく、ある意味では自然に近い鬱蒼とした風景を作っている。どちらが良いとも言えないが、この地点で随分と玉川上水の顔が変化する。

駅を過ぎると、これまで狭かった緑道が脇道と一体化して少し広くなり走り易くなる。両脇に大木が聳え、森の中のような空間が続く。もぐらの穴もあった。立川市を過ぎ小平市に入ると、この区間には学校が多く目立つ。都立小平西高校、朝鮮大学、武蔵野美術大学、創価高校、津田塾大学、一橋大学小平分校など。建設大学校、警察学校などもほど近い。雨にも負けずどこかのラグビー部員が緑道を歩いていた。このあたりは樹木が多いせいか薄暗く感じる。府中街道を越えて津田塾大学の横に入ると、地面には木のチップが敷き詰められており柔らかく足に心地よい。全区間の中でも印象に残っている場所だが、短い。そして、このあたりから、地域幹線道の一つ(その割には幅員が小さいが)、五日市街道が玉川上水沿いに平行して走るようになるので、脇の車の量が増える。この五日市街道と併走する区間は約6km。

  

 

都立小金井公園〜JR三鷹駅

小金井市に入ると、緑道は上水桜通りと呼ばれており、桜の並木が遊歩道上に植えられている。幅3mほどのさほど広くない緑道だが、桜の根は大丈夫だろうか。私のトレーニングコースの国立市大学通りでは名物の桜の周りが長年にわたり人に踏み固められた結果樹木が弱り、最近は木の周辺に立ち入らないようにしているが、ここの桜はまだ若くて元気なのだろうか。桜の満開時にも見てみたい。羽村堰から約22kmあたりに都立小金井公園が面している。ここには昔の建物を集めた江戸東京建物園も併設されている。聞くところによるとジブリの「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルの銭湯があるそうだ。ところで、スタジオ・ジブリの作品には、多摩地域の風景がモデルの作品が多い気がする。ジブリのアニメを見ていると多摩をイメージしてしまうのは、私だけだろうか。スタジオが多摩にあるせいか。小金井公園は結構広く、レースも開かれる。5kmくらいのコースはとれるようだ。ここを根城にした走友会もあると聞く。今日は雨のせいか公園内には人の姿は見えなかった。なお、小金井公園も都内有数の桜の名所だ。桜の時期は、玉川上水ではいたる所が散策には最高の季節かも。小金井市を過ぎて武蔵野市に入り、都の浄水場が目に入った。ここはJR武蔵境駅のすぐ北。ここを過ぎるとあと1.5kmほどでJR三鷹駅に着く。

 小金井公園入口

 

JR三鷹駅〜井の頭公園

三鷹駅に近づくに従い、これまでとは違った街の雰囲気が出てくる。しかし一方で野鳥の森公園のような大木を残しただけの自然味溢れる子供の遊び場も残されており、ここは23区とは違いやはり多摩だ。玉川上水は三鷹駅にぶつかる手前でその下を通っていく。地図で見るとまさに駅の部分でJR中央線と交差している。駅を横切るしかないので、三鷹駅コンコースを通り北口から南に抜ける。駅を出てもすぐに流れは見えないが、駅前広場を東へ向かうと、東南方向に続いているのが発見できる。三鷹駅から井の頭公園までの1kmほどは「風の散歩道」と名づけられ、緑道は舗装され歩き易い。この区間に面する建物は一様に集合住宅が多く、都会的な景色を形作ってある種の統一感がある。井の頭公園の手前に古い洋館を保存した山本有三記念館がある。今回は入る時間がなかったが一度入ってみたい気にさせる建物だ。この区間は短いが散歩には快適な空間だ。井の頭公園にはジブリ美術館があり三鷹駅前から専用バスが出ていた。雨にも関わらず、停留所にはかなりの人が列を成していた。ジブリ美術館へはバスに乗らず、風の散歩道と井の頭公園を散歩しながらでも苦にならないのではないだろうか。

 山本有三記念館

 

井の頭公園〜杉並区久我山2丁目(京王井の頭線・富士見が丘駅)

雨のせいで井の頭公園にもさすがに人は見かけない。途中「カラスに注意」の表示が見える。ここのカラスは自然に恵まれて大きいのかなと思いつつ走っていくと、「ヘビに注意」の看板も見える。ここはヘビまでも過ごしやすいのか。井の頭公園の中では、玉川上水の部分が特に整備されているわけではないので、走り易さから言うと、公園内の他の場所の方が良いかもしれない。ここでは玉川上水を境に北が武蔵野市、南が三鷹市となっている。玉川上水は全般的に市の境界と重なる部分が多い。

井の頭公園は1kmほどで、あっと言う間に通り過ぎてしまい、その後は住宅が迫る幅員の小さな裏道のような緑道が続く。整備の点からは、井の頭公園までの方がよかった気がする。住宅が緑道に面しているが、この環境を生かしておらず、逆に上水に背を向けているものが多い。これは、玉川上水自体が野放しの風景を作っているせいもあるだろう。途中、キリスト教関連の施設の工事現場があった。どんな建物ができるのか分からないが、看板を見ると今保存運動が活発なヴォーリズの一粒社ヴォーリズ建築事務所の設計だ。出来上がりに興味があるので、今度近くに寄ったときはここをまた来てみよう。ここらは、とにかく住宅、畑、住宅と細かい風景が次々に目に飛び込んでくる。井の頭公園からは、ほとんど上水の南側に緑道が続いていたが、ゴール近くで北側のみの緑道となる。

ゴール間近に市民農園があった。冬なので収穫は終わっている。一坪くらいの土地を各自がそれぞれの想いで耕作した後が残っている。耕作自体は自然に親しむことで、決して悪いことではなく、私も好きな方であるが、その市民農園の景色があまり美しくないのが気にかかる。まちの片隅であっても、人の目に触れる場所ならば、景観としてもっと美しく有るべきではないだろうか。ではなぜ美しくないのだろう。一つには収穫後の片付けが徹底していないことがあげられるだろう。しかし、それだけではない。恐らく栽培真っ盛りの時期でも美しくないのではないかと思った。それは、きっと農業の基本を知らずに耕作しているからではないだろうか。私も農業を知らない人間だが、プロの手による畑はきっと小さくても美しいのではないか。つまり手際のよさである。市民農園には、まず美しい作業を行う基本をプロに学び、それから実行するという手順を踏むことが必要ではないか。作る側もそれを望んでいるに違いないと思う。公園のような美しい景観づくりと市民農園の今後の展開のためにもそうして欲しい。なんて考えながら走っているうちに中央高速の高架道路が見えてきた。と言うことは、もはや終点か。見ると、玉川上水はゴミ除去用の柵の間から、地下へ吸い込まれるように入っていた。

 

所要時間                                    

 

 

場所

距離

所要時間

区間時間

/km

コメント

 

 

拝島駅

6km

51:27

51:27

934

あちこち道に迷う

 

 

玉川上水駅

13km

14425

5257

733

 

 

 

小金井公園

22km

25056

10630

723

 

 

 

井の頭公園

27km

33940

4840

943

昼食をとる

 

 

久我山2丁目

31km

40736

2755

658

 

 

 

■ 要した飲料水・軽食

 

 

給水はスポーツドリンク500 ml、軽食アンパン一個。

 

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