熊公の独り言 T




◆ 失敗鍛冶 ◆
 6月7日〜9日にかけて、2002年度初の鍛冶屋作業をしました。昨年までは鍛冶作業の実験のつもり、今回からはきちんとした製品を作るつもりで居ました。自分の使う『火床』(ほど)の大きさの関係から、包丁として作れるものは『鰺包丁』か『ペティナイフ』。ペティナイフは薄刃ですから、かなりの労力がいります。そこで今回は『鰺包丁』にチャレンジしました。頼まれている関係もあり、4本作るつもりでトライ。初日に2本、翌日に3本作りました。粗砥の段階では(なかなか良いじゃないか!!)と、ホクホクしていました。しかし、そう簡単には問屋はおろしてくれませんでした。
 最後の焼き入れの時、鍛接不足の箇所がはっきりと現れました。3本失敗です。かろうじて2本は使い物になりそうですが、人に譲ることは出来そうにありません。

 何となく原因が分かります。一番は最初の段階での加熱ミスですが、気持ちに今までと違った、急く気持ちがありました。これを仕上げてあの人にプレゼント! これは誰、これは誰・・・と、仕上がりを気にしすぎたのが一番の原因でした。駆け出し鍛冶屋がそう簡単にさっさと製品を作ることが出来るわけないのに、鍛接段階でチャッチャッチャー!! とやってしまったのが一番悪かったのです。
 大反省!! 良いお灸がすえられました。 次回は焦らずゆっくりと作業します。

 
粗砥を終えた段階、この時はワクワクものでした。      焼き入れをして、鍛接不足の部分の鋼がはがれたもの


ジグソーパズルのようにはがれた鋼

 上の写真右は、左の粗砥が終わったもの(上)の、最後の姿。整形した段階では鍛接不足は目では確認できなかったのに・・・・。
 右の写真のはがれた断面がはっきり白く見える部分、これが鋼ですが、これは焼き入れした後のマルテンサイトという組織だと思われます。焼き入れがきつすぎたのと、焼き鈍しが不十分だったため、焼き反りを戻す作業中に剥離しました。勿論、剥離しなかったとしても隙間が出来て製品にはならなかったと思います。
 ちなみに、写真左側の下の、粗研ぎをしていない状態のものは、ナカゴの部分に鍛接不足があるものの、一応形になりました。本体部分は折れたり、曲がったりはしないものと思います。研ぎ出し、実際に使ってみて、次の回に備えたいと思います。
 (2002.06.09.)






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