熊公の独り言 U




◆ 世界で1本だけの鉈 ◆
 昨年8月に秋田五城目に鍛冶修行に行きました。その時に特注してきた剣鉈(山刀)が6ヶ月近い時をおいて手元に届きました。
 SMAPの ♪ 世界に一つだけの花 ♪ ではありませんが、♪ 世界にただ1本だけの鉈 ♪ です。

 
現在熊公の作っているナイフの原点となる山刀の形です

    鞘に収めたときの全長:40.2cm
    鞘から抜きとったときの長さ:39cm
    刃渡り:−口金から切っ先まで−22.3cm(7寸)
    刃幅:3.5cm
    刃厚:4mm

 といった仕様です。鋼は ヤスキ鋼の『白紙 2号』を使ってもらいました。柄は籐巻きにしてもらい、鞘はオリジナルの穴あきの刀身の乾燥を図ったものです。

 最近は山に入ることもなくなったので、木を切ることもありません。そこで、熊公の剣鉈(山刀)の仕様は、軽く枝やブッシュを払う位で、後は魚を捌いたり、細工を作ったりする為の仕様にしてもらいました。早速試し切りをしてみましたが、牛革が圧力を感じないで切れます。木片を削ってみましたが、これまた自分がいつも使う小刀よりも良く切れます。ちょっと怖いくらいの切れ味です。おそらく魚を三枚におろすことも、刺身を切るといった繊細な作業にも充分実力を発揮してくれるものと思います。
 心を込めて納得いく製品を作ってくださったことを感じ、とても嬉しくなりました。
 ナイフの本などを読んでいると、「ナイフの大きさはその使用目的によって違いがある・・・」といったことが書かれていますが、和式ナイフは万能選手のような気がします。細かい作業も、大胆な刈り払いのような作業にも充分使用できるものと思います。
 作業現場を見てきていますから、鍛冶作業を教わった『火床』と『金床』からこの剣鉈(山刀)が生まれてきたと思うと、ものすごく愛着を感じます。

 制作者の布川君は熊公の勤める学校の卒業生、自動車開発の仕事をされていて、鍛冶屋に転身された方です。鍛冶作業を教わっているときにも仲間の方達がこられ、お話を聞くチャンスがありましたが、実際に仲間達とキャンプに出かけ、使用してその使い勝手を確認されていますし、工業試験場で作品の硬度テストや組織の様子を調べて作業をされている方です。納得いく物しか作らないという信念を持って刃物作りをされていますから、製品には信頼感があります。
 届いた剣鉈(山刀)は惜しみなく使っていこうと思います。布川君は「ガンガン使って、使い減らしてください。」と、言っています。その通りだと思います。利器は使って初めてその真価を発揮するわけですから・・・。

 
五城目  の刻印 カイサキの何と綺麗なことでしょうか・・・          鎚目の綺麗なこと・・・          

 布川刃物製作所のホームページのURLは http://www.nunokawa.net/ です。是非覗いてみてください。また、布川君のことを紹介している方のホームページ http://www.tuzie.jp/17mono/06nuno.htm もご覧になってください。きっと布川君の作業に対する姿勢が分かるものと思います。

 鍛冶屋の町五城目も、現在は鍛冶屋さんは2軒だけになったと聴きました。物を作るの事が大きなラインのある工場に飲み込まれ、大量生産、大量消費に流されている現代、こつこつと手作業で納得いく作品を作り続ける職人さん達を大切にしたいですね・・・。
 熊公の興味のある『鍛冶作業』は、人類の文化です。鋼板をプレスでドカンと打ち抜いて、刃を付けるだけの刃物は人類の文化を消し去ってしまうように思えます。日本中の鍛冶屋さんに元気を出してもらいたいし、打ち刃物の良さをみんなに知ってもらいたいです。
 世界に一本だけの刃物を作り出すことが出来るのも、手作業で作るから出来ること、言い換えれば、自分仕様の刃物を作り出してくれるわけですし、鋼が無くなるところまで使えるわけですから、大量消費が見直されつつあるこの時代に大切なことを知らせてくれるものだと思っています。
 日本中の鍛冶屋さんにエールを送ります!!
(2004.02.12.)






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