熊公の独り言 V




◆ 楽しい歴史散歩 2 ◆
 武蔵国府・国分寺跡を回る歴史散歩

  2月15日から26日までの12日間連続勤務になりました。これは致し方ないことで、納得済みの勤務です。管理職はそのことをものすごく気にして下さり、感謝です。
 21日(日)は府中での合同相談会でした。急にその日動けなくなった同僚の交代で連勤となりました。この同僚は荷物運搬の役割でした。それを引き受けることになったのです。
 管理職は連勤を配慮してくれて、「荷物の運搬と会場の設営、撤収だけで、日中はフリーで良し。」と言うことにしてくれました。本来なら苦手なスーツを着て資料の配付や案内をするのですが、今回は運送屋さんみたいな格好でOKとなりました。
 荷物を運び込み、設営して相談会開場直前の9時45分にフリーとなりました。

 
  荷物満載の熊幸                   歴史散歩スタート・ゴール地点

 府中という地名は日本全国にあります。これは当然、律令時代の国府・国衙があった地を指すわけです。東京の府中はもちろん武蔵国府があったわけです。フリーの時間を思いもかけずもらいましたから、テクテク歴史散歩を計画しました。

 相談会会場→武蔵国府跡→大国魂神社→ふるさと府中歴史館→(電車利用)→熊野神社古墳→(電車使用)→府中街道≒鎌倉街道→武蔵国分尼寺跡→東山道跡→現国分寺→武蔵国分寺資料館→武蔵国分寺跡→七重塔跡→説明会会場のおよそ13.5kmのコースを考えました。



 以前、夏期学校で本栖湖に行っていました。府中街道を使い中央道に乗っていました。そのためバスの中から東山道や国分寺関連施設の発掘現場を眺めていました。もう、25年以上前のことでしょうか・・・。学生時代発掘作業をしていましたから、調査の様子を見るとワクワクするものがあります。今回は調査が済んだ結果を見て歩くわけです。
 
 まずは国分寺街道を大国魂神社まで歩きます。途中カトリック府中教会の前を通りました。お説教が終わった感じのところでした。ミサにでようかとも考えましたが、「神様ごめんなさい!!」と、心の中で祈り先に進みました。
 まず最初は武蔵国府の跡です。現在は掘っ立て柱の位置が柱やマークで示されています。大国魂神社のすぐ東側です。神社の建っている場所は何らかの遺跡の上や側が多いです。大国魂神社の社名は武蔵の国魂の神と仰いでお祀りした事を示すものですから、国府の跡にあるのはもっとものことです。

 
京王線府中駅とけやき並木                     大国玉神社北側が正面?

 大国魂神社から甲州街道に伸びるけやき並木は平安時代の源頼義・義家が苗を植えたものとか、都から官道を使ってここに来たんでしょうね。国府に訪れるのは当然のことです。

 

 
  自撮り棒を使って                          ふるさと府中歴史館

 続いて『ふるさと府中歴史館』を見学。資料などをもらいました。国分寺のこと。東山道のことなども見て、府中本町駅に向かいました。
 ここから南武線で2駅立川側の西府駅に向かいました。途中の分倍河原は『太平記』の舞台になった場所です。鎌倉街道と古代のハイウエー、東山道が交わる地点といって良いかと思います。
 西府駅の北側に甲州街道があります。街道に出て西側に少し進むと、道を挟んで熊野神社の鳥居があります。少し先の横断歩道を渡り、入り口にある資料館へ。展示物を読んだ後、復元石室に入らせてもらいました。玄室の手前に前室・後室の施設がある構造で、羨道閉塞した箇所の天井が低いのでヘルメット着用、懐中電灯をお借りして入りました。

 
       熊野神社                       復元された横穴式石室

 
日本最大最古の上円下方墳 熊野神社古墳

 石室見学をした後、神社裏手の『上円下方墳』を見ました。葺き石で覆われた綺麗な古墳であった様子が復元されていました。
 見学の後、西府駅に戻り、府中本町駅に引き返しました。

 府中本町からは府中街道を北上します。府中街道≒鎌倉街道と考えて良さそうです。甲州街道との交差点には高札場が残されていました。

 
   甲州街道府中宿高札場                国府鶴なんか良い感じのお酒ですね

 また、府中の地酒 『国府鶴(コウヅル)』というお酒を造っている酒屋さんを見ました。小さい瓶をゲットしたかったのですが残念ながら見つけること出来ませんでした。

 北府中駅の先、右側には府中刑務所の高い壁が続きます。お世話になりたくない場所ですね・・・。

  
          府中刑務所                    東山道はこの辺を通っていたはずです・・・

 東八道路を越えた少し先あたりが府中街道と東山道がクロスするあたりです。この辺から左側に武蔵野線をくぐると国分尼寺跡です。

 
国分尼寺跡

 聖武天皇が741年(天平13)に詔した国分寺建立命令でつくられたわけです。今は基壇と礎石があるだけです。その横を武蔵野線が通り過ぎていく風景は歴史の流れを感じるものでした。

 
     基壇の断面 『版築』 の様子              鎌倉街道跡 古道を見つけるのは楽しいです

 尼寺跡の北側に続いている道は昔の鎌倉街道です。途中で祥応寺の跡と塚の跡を見て行きます。その先は住宅街に入り込みます。クランク状に何回か北上すると多喜窪通りに出ます。この道を東に武蔵野線を越えて、府中街道を渡り国分寺側に出ます。

 ここで、昼食。丁度あった日本蕎麦のお店に入りました。

 
本日の昼食

 次の信号機まで歩き、南に向かいます。老人施設の間に東山道の遺跡が保存され、現在の地面の高さに道路面・溝の位置が記されていました。幅12mの直線道路、律令時代の官道『東山道』の遺跡です。丘があれば削り取り、急な斜面も切り通しのようにして、国府間をひたすら直線に結ぶようにつくられた古代のハイウエーです。

 
国府間を結ぶ古代のハイウエー 『東山道跡』 この下に保存されています

 ひたすら直線に幅12mで作られた古代のハイウエー『官道』、この道を租・調などの税を都に届ける農民や、防人・衛士として九州や都に赴く若い男達、時には采女として都に向かう若い女達が歩いただろう事を考えると、その時代にこの道の傍らに立っている感じになります。
 駅鈴を鳴らしながら駆け抜けていく使者もいたでしょうし、任地に赴く役人も歩いたわけですね・・・。ロマンが有りますね。この想像をしている時がたまらなく楽しい一時です。

 古代のハイウエーの見学をした後は国分寺に向かいます。国分寺涯線を背に広がっている遺跡ですが、現在の国分寺から見学です。薬師堂・仁王門、国分寺本堂を見学して、武蔵国分寺資料館へ。ここは入場料が100円でした。東山道の特別展をやっていましたので嬉しかったです。また、国分寺瓦を触ることが出来るコーナーもありました。 


国分寺 薬師堂

 
薬師堂入口を守る仁王様


現在の国分寺

 
       古代国分寺の象徴 七重塔の模型        古代国分寺のジオラマ 丸の位置が現在の国分寺
                                        青丸の道が東山道

 資料館で勉強した後は国分寺跡を回って歩きました。何も考え無ければただの広場ですね・・・。広大な敷地に国分寺が建っていたわけです。資料館のジオラマを見てから実際に金堂・講堂跡に立つと、奈良時代当時の堂塔伽藍が目に浮かんできます。

 
講堂跡                               金堂跡

 
国分寺跡の碑                          七重塔の跡

 府中は現在の都庁舎からかなり西に引っ込んだ位置に有りますが、古代はここが武蔵国の中心だったわけです。現在の銀座・日比谷などは古代には湿地帯や海で、とうてい人が住める場所でも、道を作る事が出来る場所でもなかったわけです。武蔵国がはじめ東山道の国に含められたわけがそこに有るわけです。日本武尊も三浦半島から房総半島に渡って関東を制圧しています。

 多摩川を遡上して、国分寺崖線からの水をゲットできる府中の位置に国府を置く、相模と上野を結ぶ中間点に位置するわけで、古代人の地理的感覚に驚かされます。
 国衙跡の南側には多摩川からの運河が有ったようですし、船を使って物資の輸送が行われていたことも分かります。武蔵野台地の上は360年ほど前までは林に覆われていたわけです。玉川上水が作られ、そこから分水が引かれることで農地となり、現在はベッドタウンとして沢山の人が住むようになったわけで、水の確保が難しかったわけです。
 府中という場所は水が確保出来、ある程度の広がりが有り、相模・上野などを結ぶ線上に有る位置だったわけで、国府を置くのにはもってこいの場所だったことが分かります。
 熊野神社の上円下方墳の存在も奈良時代より更に以前の人の営みの栄えが有ったことが分かるわけです。実際に現地を歩き、感じることが出来る歴史散歩は本当にワクワクするものです。

 最後に七重塔跡を見て、相談会会場に戻りました。一日説明や資料の配付で疲れている同僚にお菓子を差し入れするべくスーパーに寄ってから戻りました。

 テクテク歴史散歩の道のりは13.45kmでした。一日相談会で働いていた同僚には申し訳ないですが、突然に実行できた歴史散歩。本当に楽しいものでした。
(2016.02.24.)






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