変わるアメリカ(2)(基調スピーチ:大いなる希望)
現在、アメリカで起こっている変化を知りたいと思います。2004年の民主党党大会ではオバマ氏が基調スピーチをおこないました。それは“大いなる希望”と題されました。彼はそのとき上院議員になっていました。彼の基調スピーチを読むと、その土台はアメリカ建国の理念から成り立っていることが分かります。
アメリカは、自明の真理、すなわち自由や平等の価値を再認識してそれを受け継ぎ、厳しい現実にひるむことなくこの理念を保持して次世代に約束することだと述べています。アメリカの偉大さは、アメリカ軍の強大さやアメリカ経済の大きさなどでは決してなく、きわめてシンプルなもの、すなわちアメリカの独立宣言に基づく自由と平等の原理だと述べています。アメリカの真髄とは互いに信頼しあうことであり、信念を曲げないで夢に向かうことであって、たとえば、子供を寝かしつけながら、彼らが衣食を得て危害からも安全に守られていることであり、思うとおりのことを言ったり書いたりしても迫害を受けないことだと述べています。もし、文字の読めない子供がいたら、私にとって重大な問題です。もちろん私の子供でなくてもです。もし、どこかに処方薬の代金を払えないお年寄りがいて、薬代を払うか家賃を払うかの選択をしなければならないとしたら、それは私の人生を貧しくするものです。たとえ、その人が私の祖父や祖母でなくてもです。それは基本的な信念、私は弟の保護者であり、妹の保護者であるという思いと同じであり、その信念こそがアメリカを機能させているのです。すなわち、皆がひとつの国民として結ばれている信念が大切なのです。われわれはひとつのアメリカの家族として団結することが重要なのです。・・・この国の基盤、それは神からの贈り物であって、目には見えないものに対する信頼です。われわれの前途にはよりよい日々が待っているとの信念です。われわれはこの国の中流階級に安心を与えて、勤労者にはチャンスを提供することができます。失業者には職業を、ホームレスには宿を、アメリカの都市の若者を暴力と絶望から救うことができるのです。われわれは正義の追い風を受けているのであって、歴史の岐路に立ち正しい選択をすることが求められているのです。
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このスピーチ(要旨)は、2004年の民主党大統領候補であるケリー候補を応援する演説です。4年後の2008年には、その内容がそのままオバマ候補自身に引き継がれることになります。このスピーチを読んでいると政治スピーチというより、むしろ文学書を読んでいるような気持ちになりました。文章の一節一節が胸に響いてくるように感じられました。また、アメリカ国民は理念を大切に考える国民であって、この強大な国も一人ひとりの小さな信頼や連帯感から成り立っていて、それが力の源泉であることが感じられました。・・・(2008.12.9)・・・
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