卒業生の皆さま
人としての平等という見方から考えると、高校に全日制と定時制があるのは確かに不合理です。これは教育の多様性とは異なります。親や家庭の経済的な違いだけで教育にこのような差が生じるのは問題です。
教室の中にはじっと何かを考え込む生徒がいました。社会の中でなぜ格差が生じるのだろう。なぜ貧しいのだろう。なぜ参考書も満足に買えないのだろうと。そんなことに思いをめぐらせていたのではないでしょうか。何事につけ、深く考えることは必要なことです。私も見習うべきことだと思いました。
たしかに生活は大変でした。ぎりぎりの状態だったと思います。貧しいと気持ちまでも暗くなります。でも、幸いしたことがありました。それはクラスの中に人間的に豊かな人が多いことでした。互いに明るく接することで暗い気持ちから逃れられるような気がしました。クラスの雰囲気は暗さを明るさに変えてしまうものでした。隣のクラスでも、違った学年でも雰囲気はかなり明るかったように思いました。私たちのクラスは、静かですがどちらかというと陽気なクラスだったように思います。
定時制というと暗いイメージが浮かぶかもしれませんがけっこう明るかったのです。でも、授業が始まると教室は静まり返ってしまいました。みな学びたくて学校に来ているのですから。教室で先生方から教わった古文や漢文はなんと新鮮に映ったことでしょうか。これは卒業生なら誰しも同じ思いを抱くことではないでしょうか。
現在の学校は、生徒に何をどのようにして教えるか、生徒の関心にこたえるにはどんな教育が必要か、生徒に目的意識をもたせるにはどうしたらよいかなど、学校サイドに焦点があわされています。それは当然だと思いますが、一番必要なことは、学ぶ意識は生徒自身がもたなくてはならないということです。生徒自身の自覚や責任がもっと指摘されてよいと思います。その自覚こそがなにより必要なのですから。最近の教育論議にはこのような視点が欠けているのではないでしょうか。
・・・ (2008.11.6)
両国高校定時制