(1)
ラーゲリに朝が来た。5時に起床の鐘がなった。起きなくてならない。
これまで、イワン・デニーソビィチ・シューホフは寝過ごしたことはなかった。
でも、今日は起きられなかった。寒気がして節々が痛かった。
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小説「イワン・デニーソビィチの1日」(木村浩訳)はこのように(要旨)始まる。
この書を読んで驚かない人はいないだろう。実際、このような生活があったことなど信じられないからだ。でも、これは実際の体験に基づいている。
彼は、一晩中身体が温まらなかった。
でも、起きなくてはならないと思った。新しい建設現場の仕事が待っているからだ。
その現場は風をさえぎる木もないところだ。そこで、カチカチに凍った雪を掘り起こし、杭を打って有刺鉄線を張る。それは、彼ら囚人が逃亡できないようにするためだ。
それが終わってから建設の仕事に取り掛かるのだ。・・・
このようなことがありえるだろうか。ここでは、人がもののように扱われている。
では、食事はどんなものだろう。彼らは毎日の粗末な食事に耐えかければならない。今日は真っ黒になったキャベツが入っていた。小魚は、骨ばかりで、形が崩れてしまい頭と尻尾だけが形を保っていた。だけど、彼はその小魚を歯でかみしめた。
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私たちも、戦後のある時期に飢えに苦しんだ。ご飯には大根のみじん切りが入れてあった。食べてみるとほとんど大根だけだった。道にはえている雑草も食べた。でも、食べらればよい。ご飯が食べられない日もあった。だから、この苦しさが分かる。私は子供だったがとても辛かった。他人ごととは思えない。
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急がなくては。シューホフは身なりを整えて、作業班の後ろに追いついた。だけど、そのまま、作業は入れるわけではない。朝の身体検査を受けなくてはならないからだ。朝は、晩より緩やかにしてくれるそうだ。何を探すかというと、囚人たちがパンなどを隠し持っていて逃亡するのを防ぐためという。・・・
こんな状態では逃げることなど不可能ではないか。人が人と思われていない。
班員たちは、ありったけの衣類を身にまとって歩いていく。足もとでは雪がきしむ。風が冷たい。これから、彼らの長い1日が始まる。・・・
こんな生活がつづいたら身体がもつはずがない。すぐに病気になってしまうだろう。私にはロシアの酷寒なども考えられない。これほど辛いことが他にあるだろうか。
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なお、このページは、本来、今まで作ってきたページの趣旨と異なる。作家ソルジェニーツィンが世を去ったことにともない、彼の作品をとおし、その作品やそのなかに現れる人びと及びこの作家について考えるページにしたい。 (2008.8.14)
無 題