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ウィキペディアによると、ラーゲリ(強制収容所)はスターリンの時代に拡大して、
そこに収容された人は数百万から数千万人ともいわれる。それは、全労働人口の1割
以上を占めたともいわれる。また、これらの強制労働によってソ連経済の25%を支え
たともいわれる。
いずれにしても、ウィキペディアでも正確な数字は分からないらしい。
それらの資料はどこに隠されてしまったのだろうか。
更に疑問が広がる。なぜ、収容所が必要なのか。なぜ、人々の自由を拘束するのだろ
う。なぜ、人々を不幸に陥れるのだろう。いったい、彼らは何をしたのだ。・・・
なぜ、人々を収容所に送りこむのか。
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その後、ソルジェニーツィンは、癌のため、タシケントの病院に入院した。
そこから、作品「癌病棟」が生まれた。
そのころ、スターリンはすでに世を去っていた。
その時代は“雪解け”と言われた。
雪解けとはなんと妙をえた言葉だろう。
それは厳しい冬が終わり春の到来を告げる。
人びとを苦しめていた圧政が“雪”のように解け始めることを表している。
しかし、まだ、人びとを覆う影は消えたとはいえない。
この病院のなかで、まだ、この小さな“雪解け”を背景にし、不安を隠せないでいる
人びとを描いた作品と思われる。
小説は、病院職員と患者の何げない会話などから構成されている。
「癌病棟」(小笠原豊樹訳)
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ゾーヤはオレークの存在が長いこと気になっていたので、
「あなたをこの土地引き止めているものは何かしら」とたずねた。
ゾーヤは、ときに警戒しながら、
また、彼の答えをいぶかりながら、問いをつづけた。
そして、彼から“永久追放”という言葉を引きだした。
そのとき、彼女は、なんて恐ろしいことがおきるのだろうと思った。
同じロシア人なのに、何が原因でこのようなことになったのか。・・・
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永久追放とはなんだろう?
オレークに将来はないのか?
ゾーヤの不安な様子が伝わっくる。
この長編小説には主人公と目すべき人はいない。
しいて言えば、不安を抱えながらも出口が見いだせないでいる人びと自身が主人公と
いいうる。それにしても、こんなことが行われていたなんて、何か夢を見ているよう
な気がする。 (2008.8.14)
無 題