両国高校定時制
四面楚歌
項王の軍、垓下に壁す。兵少なく食尽くす。漢の軍及び諸侯の兵之を囲むこと数重。夜、漢の軍の四面に楚歌するを聞き、項王乃ち大いに驚きて曰く、
「漢、皆すでに楚を得たるか。是れ何ぞ楚人の多きや」と。
項王則ち夜起ちて帳中に飲す。美人あり。名は虞、常に幸せられて従う。駿馬あり、名は騅(すい)、常に之に騎す。
是において、項王乃ち悲歌慷慨し、自ら詩をつくりて曰く、
「力は山を抜き 気は世を覆う 時に利あらず騅ゆかず 騅の行かざるいかにすべき 虞や虞やなんじをいかにせん」と。
歌うこと数けつ。美人之に和す。項王、涙数行下る。左右皆泣き、能く仰ぎ見るものなし。
80周年記念誌に、ある卒業生が忘れえぬ先生として、U先生の漢文の授業にかかる文を寄せています。
U先生が教室に入ってきて授業が始まります。授業は漢文の四面楚歌です。
先生は、「項王すなはち大いに驚きて曰く・・・・・・・・・・・・・項王涙数行下る。
・・・・・」と読みながらご自身も涙を流しましたと記しています。先生は項王の心中を思い、涙を流し声を詰まらせて四面楚歌を読まれました。先生の熱意が生徒の胸に届くかのように感じます。これらの文を読むと、多くの卒業生が教室を忘れがたく思っていることが感じられます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このような記述に接すると、私もU先生から教わったことを思い出します。U先生からは現代国語の授業で、藤村の潮音を教わりました。先生は潮音のほか、若菜集の他の作品を歌うように読んでくれました。授業が始まると、教室は先生の朗読で満たされてしまいます。先生の朗々と歌うような声がいつまでも心に残ります。 (2007.9.1)