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両国高校定時制
授業で学んだ国語
伊勢物語
むかし、おとこありけり。そのおとこ、身をえうなき物に思ひなして、京にはをらじ、あづまの方に住むべき国求めにとて行きけり。もとより友とする人ひとりふたりしていきけり。道知れる人もなくて、まどひいきけり。三河の国、八橋といふ所にいたりぬ。そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手なれば、橋を八つわたせるによりてなむ、八橋といひける。その沢のほとりの木のかげに下りゐて、乾飯食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字を句の上にすへて、旅の心をよめ」といひければ、よめる。
唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
とよめりければ、皆人、乾飯のうへに涙落してほとびにけり。
行き行きて駿河の国にいたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らんとする道は、いと暗う細きに、蔦楓はしげり、もの心ぼそくすずろなるめを見ることと思ふに、修行者あひたり。「かかる道はいかでかいまする。」といふを見れば、見し人なりけり。京にその人の御もとにとて、ふみ書きてつく。
駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人にあはぬなりけり
この伊勢物語はU先生から教わりました。授業では先生の情熱があふれます。先生は生徒には優しく授業にはとても厳しいかたでした。残念なことに先生は私の在学中に鬼籍に入られてしまいました。