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両国高校定時制 

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都立両国高校定時制13−2
授業で学んだ国語

昔、ゐなかわたらひしける人のこども、井のもとにいでて遊びけるを、おとなになりければ、男も女もはぢかはしてありけれど、男は、この女をこそ得めと思ふ。女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなんありける。さて、この隣の男のもとよりかくなん。伊勢物語
  筒井つの井筒にかけしまろがたけすぎにけらしな妹見ざるまに
女かへし、
  くらべこし振分髪も肩すぎぬ君ならずしてたれかあぐべき
などいひいひて、ついに本意のごとくあひにけり。

さて年ごろ経るほどに、女、親なく、たよりなくなるままに、もろともにいふかいなくてあらんやはとて、河内の国高安の郡に行き通ふ所いでにけり。さりぬれど、このもとの女、悪しと思へるけしきもなくて、いだしやりければ、男、こと心ありてかかるにやあらんと思ひ疑ひて、前栽の中にかくれゐて、河内へいぬるがほにて見れば、この女いとようけさうじて、うちながめて、
  風吹けば沖つ白波立田山夜半には君がひとり越ゆらん
とよみけるを聞きて、かぎりなくかなしと思ひて、河内にも行かずなりにけり。

伊勢物語