アルバム
都立両国高校定時制は残念にも平成18年4月から都立浅草高校(台東商業高校)に移転しその分校になります。都立両国高校定時制の創立は大正13年と聞いています。創立80周年記念誌によると、初代校長は広瀬 雄先生、修業年限は4年、初代の入学者は124名、授業料は月額4円とあります。その歴史は長く今日まで多くの先生がたが教壇に立たれました。生徒たちの職業は商店勤務、町工場の従業員、銀行勤務等さまざまです。仕事を終え、夕刻に学校に集まります。毎日の授業が新鮮でした。学ばなければ将来は開けないとの思いが生徒の心にあったと思います。
授業の内容はかなり高いもので説明についていくのは大変でした。クラブ活動は演劇部がかなり活発でした。生徒会活動は時間が無いなかでもよく活動していました。先生がたは個性的で丁寧な教えかたが特徴でした。定時制では卒業までに4年かかります。その間に生徒には、勉強を続ける上でさまざまな苦労や喜びのドラマがあったことだと思います。これまでに多くの生徒が巣立ちました。卒業生たちはさまざまな分野で活躍されていると思われます。昨年は創立80周年の記念行事が行われました。多くの先生方や卒業生(桂友会)が参加しまことに意義深い会となりました。私が在学したのは昭和30年代の後半です。それから今日までおよそ40年が経ち、その間には予想もできないような変化がありました。大きなことあげるとなんと言っても経済の発展ではないでしょうか。当時、私が働いていた企業の1ヶ月の給料は約7千円でした。お店でラーメンを一杯食べると30円の時代でした。それから考えてみると今は夢のような発展です。
日本の経済力は驚異的に大きくなり、今では産業や科学技術の面でも世界のなかで優位を占めるようになりました。これらは人々の不断の努力によってなされたことは言うまでもありません。しかしよい面だけではありません。さまざまな負の指摘もなされています。少子化に伴う人口減少の問題もそのひとつです。学校に的を絞ると、かつて生徒急増期に増設された学校は生徒数減少に伴い定員の縮小、または募集停止を余儀なくされています。生徒の学力の低下が指摘されるようになり、中途退学者の増加も深刻な問題となっています。また、都立高校の地位の低下が問題になりその改革が大きな課題となっています。
その結果、生徒の個性を尊重し自主的に学ぶ生徒の育成が叫ばれるようになっています。そんななかで定時制高校を含む大幅な統廃合の計画が発表されました。両国高校定時制は台東商業に移転し新しく開設される浅草高校の分校になるということです。近隣の小松川高校や墨田川高校の定時制は生徒募集を停止します。浅草高校(台東商業)では午前、午後、夜間にわたる定時制の高校になるということです。東京だけでなく地方でも同様の学校や課程の再編がおこなわれています。現在学んでいる学校が移転するのはつらいことだと思います。それは在校生にとってかなりの負担や戸惑いをともなうものではないでしょうか。時代の流れに背中を押されるようにして両国高校定時制はなくなっていきます。江東橋畔から定時制の灯が消えます。しかし在校生の皆さんはしっかり勉強を続けてほしいと思います。応援します。このアルバムでは両国高校定時制の歴史と思い出を記します。 (2006.1.30)