両国高校定時制
M先生の担当は数学です。ある日の放課後、数理準備室で明日の授業の準備をしていました。分かりやすい授業を目指しているがうまくいかないことが多かったからです。
因数分解や2次方程式を分かりやすく教えるにはどうしたらよいでしょうか。そんなことを考える毎日です。
その数理準備室に突然S先生が入って来ました。S先生はサッカー部の顧問教師です。かつて、選手だったころは県大会などに出場し大いに活躍したそうです。また、そのシュートは光速のシュートといわれ相手チームから恐れられる存在だったようです。
そのS先生が口を開きました。
「サッカーボールが飛ぶときにはどのように目に映るかを知りたい。もちろんキックによるボールの回転は無視してよい。できるだけ早く結論を聞きたい」
M先生は驚きました。想定外の質問だったからです。
「ちょっと待ってください。僕は数学の教員です。そんな難しいことは理科の先生に聞いてください」
そこで、S先生はこう言いました。
「君は特殊相対性理論が好きでこの学校に来たのだろう。君ならこれくらいのことは分かるだろう。他の先生に聞いても駄目だと思う。だから君に聞いているのだ。何とか考えてくれ。」
M先生はS先生が年長のせいか何か気おされる感じがしました。
また、「プロはどんなときでもノーといわない」という言葉が脳裏を過ぎったので
「分かりました。やってみます。少し時間をください」と言いました。・・・・続く。(2007.5.19)